第244話 真神大戦 ボクも?
太古の大樹の森に押し寄せる様々な種族達。
そして、それらを撃退していく真神。
やがて、その上空から、音速を突き破った際に鳴り響く高速音が……。
ーーー 八咫烏の視点です ーーー
突然、真神が居なくなっちゃったの。
何でも、大樹の森を調査するって言って森に入ったらしいけど……。
あるじも倉庫番の人と東の門番の人からそう報告を受けただけで、どこ行ったのかはわかんないって。
「まあ、真神のことだ。
何も心配することはない」
って言ってたけど、あるじは嘘が下手だよね。
さっきから、執務イスに座ったり立ったり座ったり立ったりしてるんだもの。座ると片膝だけ揺すってるんだもの。
パチン。
「あいたっ!」
「少しは落ち着きなさい。貧乏揺すりも止めなさい。
あなたの悪いクセよ」
ほら、後鬼ママに叱られてる。
正義が出張に行った時と同じじゃん。
で、ボクは真神を探すことにしたの。
真神は大丈夫だと思うのね。なんせ、ボクと同じ旧い存在だから。
たとえ、大地震みたいな大きな災害があっても、彼はアクビしながら過ごしてそう。
でも、あるじの為に探してみよう。
うふふ。心配性なあるじの為に。
◇◆◇
真神が居なくなって一週間。
住民達には、「真神は、次の戦に備えての隠密作戦を実行中」と言うお触れを軍隊や行政庁の一部に通達。
真実を知る者は、大妖達などごく一部に限られた。
うん、それで良い思う。
下手に「真神が行方不明」なんて知ったら、住民達も落ち着かないだろうね。
特に、エルフや獣人等の初期の避難民だった者達は、全員が真神に世話になってるし、勝手に森の中に入って探しまくっちゃうからダメ。危ないもん。
代わりにボクや他の大妖が交代で捜索している。大妖が一斉に動き出すと目立っちゃうから、日替わりで2~3人ずつの交代。
それに、大妖達も通常業務があるから、捜索ばっかりもしていられないの。
ホントにどこ行っちゃったんだろ?
もう、この惑星を三周しちゃったけど見つかんない。
無駄かもしれないけど、海の上も捜索してる。
ん?
飛竜達が集ってる。お魚の群れがあるのかな?
あ、ウチの飛竜とは違う種類の竜達だね。見た目が全然違うや。
飛竜達に近づいてみる。
ああ、やっぱり。お魚の群れだ。
この飛竜達の狩りは、鳥の狩りとは全然違うね。
お魚を狙う鳥達は、結構ダイビングして狩ることがあるけど、この飛竜達は、滑空しながらお魚を獲ってる。
泳ぎが苦手なのかな?
ザバッ。
突然、水竜が飛び上がって来た!
しかも、すごくでっかい。ボクの数倍はあるんじゃないかな。
ふふん。
飛竜達と一緒にボクも飲み込むつもり?
そのつもりなら、君のお腹を食い破ってあげるよ。
(ヤッちゃん。危ない!)
え、え!? なに? 誰?
突如、ボクの前に穴が開いた。
あ、これ、転移門だよね。大樹の。
さすがに飛んでる最中だから、方向転換出来ないじゃん。
別に危なくないのにぃ。
あんな水竜くらい、ボク、突き抜けられるよ。
転移門を潜り抜けると、そこは大樹の森の南の草原だった。
もう、大樹ったら、余計なことして。
まあ、いいや。
都に行って、一度羽を休めよう。
果物でも食べてから、もう一度探しに行こうっと。
だんだんと大樹に近づくと……なんかおかしい。
だ、誰も居ない!
壁が、建物が、お屋敷も無いの。ヒトも牛さんも馬さんも居なーい!
あ! 真神発見。
すぐに大樹の根元に着陸する。
「真神、居た!
も~、どこ行ってたの?
みんな心配してるよ」
ボクはプンスカして、真神の前に立つ。
「八咫烏……。
オヌシまで来てしまったか……」
真神がやれやれって感じで首を振ってる。
「真神。
都はどうなっちゃたの?
みんなはどこに行っちゃったの?」
「…………。
あ~、今から説明するから、黙って聞け」
「あれ?
誰、そのヒト?」
真神の隣にキレイな女の人が立ってる。
「やっほー♪
あなたがヤッちゃんね」
「やっほー♪
……………誰?」
挨拶は大事ってあるじが言ってた。……けど、誰なの?
「あ~…………。
コイツは大樹だ」
真神ったら、何言ってるの?
「大樹って、あの大樹?」
大樹の幹と女の人を交互に見る。
「そうだ。その大樹だ」
「なんか、私がいっぱい居るみたいな会話ね」
女の人がコロコロ笑ってる。
「大樹って、会話出来るんだね。
しかも擬人化で顕現出来てるし」
「まーくんもヤッちゃんもあまり驚かないのね。
普通、びっくりするところじゃない?
会話能力も顕現能力もいっぱい苦労したんだけどぉ」
「ふん。その程度」「え~、そのくらいで自慢出来ないよぉ」
「き、厳しいのね」
大樹は、同格の者達と会ったことが無いのかな?
そして、真神が今回の出来事とその現象についての予測を説明してくれた。
「ふ~ん。
時間を遡っちゃったのかぁ。
まあ、なるようになるしかないよね」
「まーくんもそうだけど、ヤッちゃんも達観してるのね。
凄い事態に巻き込まれてるのに」
「だって、未来に跳んだんじゃなくて過去でしょ。
なら、いずれはあるじと会えるもんね」
「うむ。
ここらの地形も我らが居た"時"と変わらん。
何万年も待つことにはならぬであろう。
せいぜい数千年程度のことだ」
「あなた達の感覚が凄いわ。感心する」
「オヌシももう一段階"上がれば"理解出来よう」
「でも、私も"先輩方"が居てくれて嬉しいわ」
「大樹は"後輩ちゃん"かぁ」
「よろしくお願いします。先輩方」
みんなでクスクス笑い合う。
落ち込んでも仕方ないもんね。明るく行こう。
「八咫烏にも手伝ってもらうぞ」
何かわかんないけど、良いよー。
◇◆◇
「なぜ、伝説の神獣が二体も居る!?」
エルフの集団がやって来た。みんな武装してる。
「エルフどもよ。
ここから立ち去れい」
真神が声に神威を乗せて威圧する。
ボクも神威を全身に纏わせる。
「た、たとえフェンリルとフェニックスであろうとも、我らハイエルフの敵ではない!
皆の者、かかれ!」
無駄なことを。
エルフ達の弓矢の一斉射は、ボクの羽ばたきで全て弾く。
今度は土術や風術が襲ってきた。
「ウオォーン」
それらの術は、真神が一声吠えると霧散して消滅した。
このハイエルフって集団、ウチのエルフ達より劣ってるみたい。
エルフ隊全員揃ってなくても、ミレイユとナターシャ、あとリントが居れば良い勝負になるんじゃないのかなぁ。
でも、数が居る分、鬱陶しい。
もう面倒臭いから、強風で弾き跳ばそうかな。
「真神。
眷属狼達を後ろに控えさせて。
コイツら吹っ飛ばすから」
「よかろう」
真神の指示で眷属狼達がボクらよりも後ろに陣取る。
「ピィー、カァッ!」
妖気を全身に纏い、同時に風の塊をいくつも作る。
風の塊に妖気を移し、射出していく。
その風の塊がエルフ一体一体を狙撃して、そのまま南の草原へ吹き飛ばしていく。
木の枝に乗ってるヤツラも見逃さない。
エルフ達が逃げ出したけど、妖術で産み出された風の塊は、一体一体を的確に追尾していく。
誰も逃さないよ。
全員、南の草原まで吹き飛ばした。
「八咫烏、よくやった。
木に登るヤツは眷属狼達も苦労するからな。
大地に足をつけていれば、彼らでも十分対処出来る」
真神の言う通り、草原に投げ出されたエルフ達を眷属狼達が片付けていく。
何体かのエルフが浮遊術で空中へと逃れようとしてたけど、眷属狼が咆哮を上げると落下して行った。
あれ、初めて見たけど、ティラノと同じ権能?
「フフフ。
この世界に来て、身につけたらしい。
我もそうだが、眷属狼達もいまだ成長途中なのだ」
ふ~ん、凄いね。
ボクも成長出来るかな?
「貴様がこの群れの長だな」
真神がエルフの長と思わしき者に噛みついた。
「ぐわあっ!
わ、私はロナチャイルド氏族の繁栄の為に!
こんなところで……あぐっ」
真神は容赦なく噛み千切った。
「お、長が!?」「うわあー!」「に、逃げ……」
エルフ達が一斉に逃げ出した。
「半分くらいに減らしておく?」
「そうだな。
千近く居るであろうから、200~300ほど残せば良いだろうよ」
「じゃあ、焼いちゃうね」
ボクは、逃げ出したエルフ達の上空を飛び交う。
もちろん、地上に居る者を消滅させながら。
適度なところで止めておく。
恐怖を植え付ければそれで良いんだって。
真神は頭良いなぁ。
ボクら大妖のほとんどは、「敵は滅ぼしちゃえ」って考えだから、後の事なんてあんまり考えない。
でも、この真神の策なら、数百年くらいは大樹に近寄らないよね。
恐怖は語り継がれるものらしいから。
「あのエルフ達、大したことないんだね。
弱っちかった」
「うむ。
あの程度では、ウチのミレイユ独りでも撃退出来たかも知れんな」
「あ~、ミレイユね。
あの娘、いい加減異世界の住民最強って認めたら良いのに」
「ふふん。
何か知らぬが、「乙女の事情」と言うものらしい」
真神って、意外とコミュニケーション能力高いんだよね。色んな人達と交流してる。
「二人ともお疲れ様」
女神姿の大樹が顕現したけど……なんかバタバタしてる。
「何あれ?」
「……辞めよと言うたのに。
あれは我らの応援の舞いらしい」
「どう?
扇情的な応援ダンスでしょ?」
天鈿女の舞いと比べると妖艶さが全然足りない。
「なんだか、残念?」
「くくっ」
「何よ、二人して!」
あはは。大樹って面白い娘なんだね。
退屈しなくて済みそうだ。
とうとう八咫烏も来ちゃいましたね。
そして、この異世界の伝説へと繋がっていくのでしょう。
まあ、神話なんてものは似たり寄ったりになりますからね。
作者も小学生時代に、ギリシャ神話と日本神話がそっくり過ぎて驚いたことがあります。
さて、次話は、八咫烏も真神大戦に加わり、終焉に向かいます。
お楽しみに。




