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第18話 スライム?

今日の1話目です。

次郎が倒れるとは思ってもみませんでした。

運良く、そうなってもおかしくない伏線が散らばっていたので、そのまま進めた結果がこれです。

何故こうなってる?

「では、次郎様が倒れられたのは拠点内なのだな?」

前鬼ぜんきが走りながら真神まがみに確認する。

「うむ。西門をくぐった後だった」

真神も並走しつつ答える。

「では、真神は西門付近を探れ。眷属狼を喚び出しつつ、それらは拠点内全域を探らせよ」

後鬼は皆の方を振り返りつつ、

「アヤメは北門、タマモは南門、私が東門に行く」

今度は真横を飛んでいる八咫烏やたがらすに、

「八咫烏は上空から拠点外をも注視して欲しい」

八咫烏は、くええっと返事が如く鳴き、上空へ舞い上がる。

八岐大蛇やまたのおろちには大樹辺りを探って欲しい。出来るか?」

「雑作も無い」

「では、散れ!」

皆一斉に各所ヘ向かう。

『皆、相手は次郎様が意識を失うほどのあやかし。決して独りでは当たらぬように。

我らでは、そのようなことが無かったことを忘れないで』

サトリが全員に伝達する。


ほどなく、拠点内全域が騒がしくなる。住民達もあやかし達の様子がおかしいことに気づき始めたのだ。

また、次郎の倒れるシーンを目撃していた者もいる。

サトリが住民に家に籠ることを指示し、また同時に戦える者には捜索に協力してもらうことにした。


「ハヤテも捜索ですか」

「ナターシャか。

ああ、とはいってもアヤカシなるものなぞよくわからんが」

「それでいいのですよ。

よくわからないモノを見つけたら知らせば良いだけのこと」

「なるほど。それで良いんだな」

「あ、あの子達!」

ナターシャが指差すその先に、子供が3人まだ外にいた。

ハヤテも向かう。

「あなた達、ダメでしょ!?

早くおうちに帰りなさい」

「コラコラ、言うことを聞かなきゃいかんぞ」

ハヤテがしゃがんでる3人の子供を掴み上げる。

「わわっ!」「きゃっ!」「だってー」とそれぞれが言う。

「スライムを見つけたんだもん」

子供の一人が言う。

「何?スライム?」

しゃがんでた子供達を退けると、確かにそこにはスライムがいた。

「待って。

スライムとは言え、拠点内にモンスターがいるのはおかしいわ」

ここはアヤメが結界を施している。

どんな魔物も入り込めないはず。

ナターシャが背負っていた魔法弓を構えて、全員離れるよう促す。

「ぬっ。確かにスライムほど弱いモンスターがいるのは逆におかしいな」

ハヤテも背中の大剣を正眼に構える。

その様子の変化に子供達も察したようだ。


「ほれ、おまえたち。家まで帰れるか?」

ハヤテが構えを解かず、横目で問う。

「う、うん」「は、走って帰る」

多少涙ぐんでいるが、男の子二人が女の子を支え、答える。

「よし。

では、少しずつ離れろ。ゆっくり十歩下がったら走って帰れ」

子供達は言われた通り、いーち、にーぃ、さーんと数えて下がっていき、十歩で走り出した。

「子供の扱いが上手で助かるわ」

「ふん。それで、どうやって知らせる?」

「わたしが音矢で知らせるわ。こうやって!」

ナターシャが空に向かって矢を放つ。

その矢は普通の矢のはずが、まるで鏑矢のような甲高い音を発しながら上空を突き進んで行く。

その矢は大樹の枝に届く直前にパァンッと派手な音を発し、キラキラとした粒子が輝きながら舞い降りて来る。


すると即座に八咫烏が現れた。

ただし、警戒するようにピーヒョロロと鳴きながら低空で円を描いている。

そして、すぐさま前鬼も到着した。

「ナターシャ、ハヤテ、でかした!」

前鬼は二人の前に立つ。

しばらくすると、アヤメ、タマモ、真神、八岐大蛇と続々と到着する。

アヤメとタマモは元の姿に戻っており、すでに臨戦態勢だ。

八岐大蛇は真神と同じサイズに留めているが、こちらも臨戦態勢。


「スライムらしいのですが、はっきりしません。

通常のスライムは単色なのですが、あのように鮮やかではありません」

ナターシャが言うように、ソレはこちらの世界のスライムの如き姿をしていながら、赤や緑、黄色などまるで虹のような色合いが絶えず変化している。

時折、プルプルと身を震わせながら、あちらに移動しようかと思えばこちらに移動を始めたり。

「まるで迷っているかのようだ」

ハヤテが言ったように、表面の模様を渦巻きに変えたり、さざ波のように波打ったりと落ち着かない様子。

『何かを探してる?』

「これは何だ?

真神、八岐大蛇よ。知っているか?」

前鬼が戦闘態勢を崩さずに問う。

「我は知らぬ」

「自分も見たことない」

『私も知り得ませんね』

「サトリも知らぬか」

『自意識はあるようですが、まるで読ませません』

己の通力が通じぬ相手が居ようとは思いもよらなかったサトリ。

何度も呼び掛け、何度も読み取りを行っても何かに阻まれる感触しか返ってこない。

「コイツが何者でも構わにゃい。

次郎様をあんにゃ目に合わせたのにゃら、八つ裂きにするまでにゃ!」

「小娘に賛成でありんす。

次郎様のあんなお痛わしい姿をもう見たくないでありんす」

「致し方無しか……」

前鬼も判断に苦しむが、ここにこれだけの戦力が集まったことは消滅させるのに事欠かぬだろうと冷静に考える。

サトリの術が効かぬ相手だ。誰とも意思を交わすことも出来ない。

次郎をダウンさせるほどだ。あやかしとしても、よほどの格に違いない。

そんなものを放置出来るはずもない。


「次郎様には私から謝っておく」

前鬼が号令を発しようとした矢先、

「み、みんな……ま、待って……」

弱々しくも、全員が跪きたくなる圧倒的な存在から声が掛かる。

いや、事実、全員が跪いている。

ナターシャやハヤテまでもが同様だ。

「後鬼、あ、ありがとう……」

誰もがそこに次郎がいることを確信しながらも、頭を上げられない。

確認したいが出来ない。

声を出したいが出せない。

おそらく、後鬼に支えられながら歩み寄っているに違いない。

顔を見たいが、畏れ多くて見上げることも出来ない。

ソレの前まで来た次郎はソレに声をかける。

「おいで………………ヒルコ」

愛情を込めた言葉が伝わったのか、ヒルコと呼ばれたソレは、嬉しそうに表面を虹色に煌めかせて、いそいそと次郎の下ヘ寄る。

次郎は、足下まで来たヒルコを抱き上げる。

「寂しかったんだね。

大丈夫。これからは僕らが一緒にいるよ。安心して」

ヒルコを抱き上げたまま、振り返る。

「みんな、楽にして」

次郎がそう言った途端、キンッと甲高い音のようなものが響いた錯覚を全員が味わった。

あれほどあった荘厳な空気も消え去り、全員が呼吸を再開し始めた。


ようやく頭を上げると、後鬼に支えられながらもそこに次郎がいた。

「みんなにも心配かけちゃったね。ごめんね」

おわっと言いながら足をふらつかせる次郎。

「まだ危のうございます」

と言うと、後鬼が次郎を抱き上げる。

ヒルコを抱き上げた次郎をさらに後鬼が背後から抱き上げる。

ちょっとしたシュールな姿と言えよう。

「じ、次郎様にゃ」

「次郎様ぁ」

アヤメとタマモが人化して、瞳に大粒の涙を溜めている。

『主様……主様……良かった。

意識が戻られたのですね』

「サトちゃん……心配かけてごめん」

『いえ、いえ……。主様がご無事なら……私はそれだけでもう……』

「ご主人様」「主殿」(…あるじ…)「次郎殿」

皆が立ち上がり、次郎の下ヘ寄ろうとする。

「なりません。

ご主人様はいまだご気分が優れません。控えなさい。

このまま屋敷に戻ります」

後鬼はそう言うと、いつもよりゆっくりとした歩調で屋敷へと歩を進める。

アヤメとタマモは黙って後ろに付いていった。

その姿が屋敷に入るまで、その場を動く者はいなかった。


それを見届けてから、

「あれは一体何だ?」

前鬼が首を傾げる。

「ぬ?オヌシ達、いつまでそうしているつもりだ?」

ナターシャとハヤテがまだ傅いている姿勢のままだった。

「ああ、そうだったな」

そう言うと、前鬼が柏手を一つ叩く。

パァンと音が響くと、ようやく二人が身じろぎをした。

ナターシャは恐る恐る立ち上がり、ハヤテは尻餅を付いて地面にひっくり返った。

「な、何だったのでしょうか、今のは?」

ナターシャは辛うじて言葉を発するが、ハヤテは「かあぁ~」と言ってから、勢いよく跳ね上がって立ち上がる。

「なんかすげえもんを味わった気がする!」

ハヤテの言葉は清々しい。

「あれがご主人様の本来のお姿だ」

前鬼が補足する。

「自分は初めての体験だ……」

そうかあれがそうか、と呟く八岐大蛇。


「まあ、おまえたちも慣れるしかない」

前鬼にそう言われ、ナターシャは、いつもにこやかな優しい次郎とさっきの神々しい次郎とのギャップに、こめかみに指を当てながら、悩ましげになにやら呟いている。

「まあ、ジロー様には変わりないんだ。

ナターシャもそう気にするな」

ハヤテがナターシャの肩に手を置いて話しかける。

「いえ、気になどなりません。なりませんが…………格に違いが……いやでも、側室になら……」

一同に「はあ!?」という空気が流れる。

「い、いや、年齢差がありすぎないか?相手は子供だぞ!?」

「我々エルフは他種族より長命です。年齢差など、さほど気にする要因になりません」

窘めにかかったハヤテに、即座に反論するナターシャ。

「それにあの可愛らしいお顔な上に、いつもわたしを気にかけてくださって褒めてくださいます」

確かに、次郎はナターシャにすごい、キレイだ、と声をかけていたが、あれは弓魔法を発動していた時じゃなかったか?とハヤテは回想していた。

確かに、褒められたナターシャがデレた姿を見て、可愛いとも言っていたが、それは誰しもが思うことであった気もするが、もう口を閉じることにした。

ここにアヤメとタマモが居なくてホッとした一同であった。


出ました!

古事記最大の謎、蛭子神ですね。

リアル解説では近親相姦の末の忌み子とされていますが、神話的にはその登場の経緯もその後も何もわからない神です。

これにはロマンが尽きません。

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