第15話 オーク戦後編
「ブヒブヒ、ブヒィィ!」
オークって、どういう鳴き声なんだろう?
今回の戦闘シーンはあっさりめで行きます。
猛スピードで突進していく妖達。
その勢いのまま、オークの集団にぶち当たっていく。
そして、各々が当たった箇所でオークが跳ね上げられてるのだ。十数メートルは飛んでる。
宙に舞ったオーク達はすぐさま自由落下でドスンッドスンッと地面に突き刺さっていく。
ぐえっ、身体のあちこちがひしゃげてる。頭を肩より下の位置に持っていかれたやつもいる。
辺り一面凄惨な光景が広がっていた。
いや、今も広がり続けている。
真神はオークを頭からかじりつき、振り回してから、息のある内に離す。
そうするとしばらくオークが苦しむからだ。
後鬼は風術で腹を割いて臓物を引きずり出す。そしてそのまま放置する。
前鬼はそれを己の力のみでやっている。一番鬼らしい振る舞いと言えよう。
アヤメが可愛らしくネコパンチを振るっても、された方の顔面は悲惨だ。目玉が飛び出し、頭蓋骨が見えている。
タマモは得意の鬼火でオークの半身だけ燃やす。そう半分だけだ。
本来は一瞬で全身を燃やし尽くせるだけの火力があるが、わざとセーブしている。その苦しみを長引かせるために。
サトリは同士討ちをさせている。それも自意識を持たせたまま。
己のはっきりした意識のまま、お互いがお互いを喰らい合う。中には自分で自分を喰らう者までいる。
これは僕の指示だ。
オークが草原に出てきた時、彼らは何をしていたと思う?
あろうことか、ヒトを喰ってたんだ。
それも生きながらに。
そして愉しげに。
弱肉強食はわかる。それは自然の摂理だ。許容も出来る。
だが、下卑た笑いを顔に張り付けたまま、なぶり殺しをするのは許せない。
貴様達がしてきたことを己が身をもって思い知るがいい。
ナターシャは、大樹の弓で魔法を乗せて様々な矢を打ち出している。
ハヤテはドワーフに打ってもらった自分の背丈もある大剣を、切るというより叩き潰すように豪快に振るう。
ナターシャとハヤテは普通に戦っているが、僕も妖達のやり方で挑む。
僕も風術を使うが後鬼とはやり方が違う。
まず、オークども数匹を巻き込んで両足を切断する。
そして次に両腕も切断。
ダルマ状態で転がすだけだ。
出血多量で早期に死ねるヤツは幸せだ。
中国の皇太后に倣って切断面を塩漬けにしたかったが、そこまで不思議術を習得してないので、そのまま放置。
あ、ちなみに西太后はそんなことしてません。あれは映画的演出で、則天武后のエピソードを転用しただけ。
2,000匹以上居ると、まだまだ時間がかかりそうだが、ここはきっちり仕上げていこう。
真神の眷属狼に包囲してもらって一匹たりとも逃さない。
そんな最中、大柄なオークも数匹現れた。
オークソルジャーとかオークジェネラルとかいうヤツかな?
「大物め~っけ♪」
「あ、あなた待ちなさいな!
あちきも行くでありんす」
「早い者勝ちにゃ~」
怒涛に突き進んで行く二人。
さあ攻撃をという瞬間。
「「あっ!」」
真神が大柄なオークの横っ面からかじりつき、振り回してから頭から地面に叩きつける。
叩きつけられた大柄なオークは脳震盪を起こしたようだ。
その隙にその腹を喰い破り、臓物を10メートルほど引き出した。
「早い者勝ちなのだろう?」
ペロリと口周りをなめ上げ、ニヤリと笑う真神。
「きーっ。真神の犬っコロ野郎!」
「あなた、遠慮くらいしなさいよ!」
獲物を目の前でかっさらわれた二人が罵る。
タマモもいつものありんす口調が抜けるほど焦ったらしい。
次々と大柄なオークをすぐには殺さずに仕留めていく三人。
開戦から数時間後、もう無事に立っていられるオークは居なくなり、終了したようだ。
まだ息があるのは1,000匹以上居そうだが。
オークが全滅するまで、眷属狼達が包囲網を敷きながら見張ってくれるという。
ナターシャとハヤテは疲労困憊の様子。立ち上がることも出来ないようだ。
「ナターシャ、ハヤテもお疲れ様。
僕らの勝利だ」
「ジロー様ぁ、あ、ありがとうございました。集落で命を落とした者達もこれで少しは報われるでしょう」
「うおぉん!おおぉぉ……ついにやったぞ!親父殿、仇は取ったぞ……おおぉぉ!」
二人とも大泣きの末、疲れて果てて眠ってしまった。
そのまま放置も出来ず、前鬼と後鬼が背負ってくれた。
帰りは少し緩めの走行速度にしてくれるようお願いしたよ。
真神の背に乗ってるとはいえ、僕も相当疲れた。ついウトウトして落ちそうになること度々。
「あぶにゃいから、あたしが抱っこしようか?」
「それなら、あちきの豊かな胸においでになってくだしゃんせ」
「あんたのは単なる脂肪のカタマリじゃにゃいか」
「あら、あなたこそ、そんな絶壁では次郎様も安心出来ないでありんす」
「にゃんだ!?」
「やるか!?」
はいはい。二人は元気だね-。
そんな二人を眺めてると自然と笑顔になって、元気も出てくる気がするよ。
前鬼も後鬼も真神すら笑ってる。
サトリまで笑ってる気がする。
良い家族だ。
余談
拠点に帰って来た後。
「ブタさん退治、面白かったにゃ~」
「ほんにほんに。
あの「すぐに殺すな。苦しめてからにしろ」と仰った時の次郎様のご尊顔が……。
ああ……しばらく脳裏に焼き付いて離れないでありんす」
それはもうウットリと呟くタマモ。
「でも意外と言えば意外。
次郎様はもう少し甘い方だと思ってたにゃ」
「何を今さら。
あちき達妖の気質に沿ったご命令でありんすよ」
本来、妖は誰しもが恐れおののくモノ。陽に対しての陰。化け物なり。
「エルフや獣人、ドワーフ達への対応と大きく違うにゃ」
「それこそ、次郎様の役に立つ立たないの違いではありんせんか」
「うん、そうだね。
一度懐に入った者にはすこぶる優しいにゃ。
反面、怒らすとめっちゃ怖いにゃ」
そう言いながら、身体をブルブルと震わす二人。
「ご命令の際も全身からなにやら立ち上るモノさえ目にした気がするでありんす」
「「あれは絶対に逆らったらダメなやつ(にゃ)(でありんす)!」」
(でもそんなところも愛しいにゃ)
(ああ、次郎様。お慕い申し上げるでありんす)
今日は3話連続投稿でした。
1話1話が短いですからね。
どうやって作品の宣伝ってやるんだろう?
とりあえずは投稿続けるしかないかぁ。
まだまだ出会いは続きます。
お楽しみに♪