第13話 ドアン
ドワーフも住民に。
これから楽しくなりそう。
森からドワーフがやって来た♪
ハイホーハイホー、とは言ってないけど、ドワーフがやって来た。
八咫烏は二足歩行していれば全てヒトになるのかな?
いやまあ、概ね間違いではないけど。
日本の妖には異世界ファンタジーの知識は無いからね。
さて、そのドワーフ。
リーダーは自らドアンと名乗り、技術を売りにしたドワーフ族として何でもやるから住まわせて欲しい、とのこと。
元々北山の麓に住んでいたが、ここ最近、山に棲むドラゴンが活動期を迎え、危険を感じて避難してきたらしい。
やっぱり、北にはドラゴンがいるんだ。
でも、技術職の集団はありがたい。
山盛りの台車もほぼ全てが作業道具とのこと。
拠点の暮らしが豊かになる。これは期待出来るね。
ドワーフは15人いるが、土木・建築作業から細かな作業が得意な小道具専門の人員までが揃っていると、ドアンは得意げに胸を張っていた。
堀の水引がこれからあるから、早速役にたってもらおう。
でも、まずは慰労からだね。
お風呂に入ってからご飯。
避難民に最初に味わってもらうのは、拠点特産のトン汁だ。
もう恒例になりつつあるね。
ドワーフ達を拠点内に案内しつつ、アヤメと真神を慰労する。
「四日も護衛してくれてありがとう」
「にゃんのにゃんの♪」
「容易きこと」
「もう今日はゆっくりしてね。好きに過ごしてくれて良いから」
「はーい」
「ありがたき幸せ」
一般人の歩行速度は概ね時速4kmと言われてる。
ドワーフ達は大荷物の台車を曳きながらの移動なので、その半分くらいと思ってたので5日と見ていたが1日早く着いたようだ。
ドワーフ達はもっと長く歩き続けただろうから、疲れているに違いない。
2、3日はゆっくり過ごしてもらおう。
その後は自分達の住居を造ってもらってから、堀の水引工事だね。
小道具職人には生活道具を整えてもらいたいところ。
それぞれの種族ごとに特長があり、それが拠点生活を助けてくれる。
またいずれ訪れるだろうオークとの遭遇までに色々やっていこう。
ドワーフ達が合流して数日、彼らは様々に役立ってくれている。
湖の引き込む水路の掘削そのものは後鬼が担当しているが、下手な氾濫を起こさないように水路の底や土手の構築などドワーフの技術が光る。
そもそも、この土木工事の計画や設計もドワーフの技だ。
ありがたいこってす。
後鬼の土遁の術?は初めて見た。
土がベコッベコッって沈むんだもんな。見ていて、ちょっと気持ち良かった。
また、小道具職人も様々に活躍してくれてる。
木材が豊富にあるので、木製の食器類を作ってくれてるし、タンスやテーブル、イス等の生活道具が充実しつつある。
さすがプロの仕事は違う。
手触りが滑らかは当たり前。タンスやテーブルの角がケガをしにくいように加工されている。
そして武器職人もおり、自分達で鍛冶窯を造り、前鬼から鉄のインゴットを渡されて様々な武器に加工されてる。
ナターシャも「矢の調達が出来て嬉しい」と言っていた。
ついでに新しい弓もお願いしたようだが、武器職人もちょっと悩んでたみたい。
そりゃ、弓矢に魔法を乗せて打ち出すなんて言われりゃ、軽々しく作れないんだろうなぁ。
ちょっと興味があって、ナターシャに弓魔法を見せてもらったけど、ズバンッ、ヒュンッ、ドドンッと派手なものから、曲芸の如く矢の軌道が曲がるものまで。鮮やか。パチパチ。
ナターシャが頬を紅くして照れてた。
エルフのデレた姿が可愛い。
だが、武器職人はそうはいかない。
なにやら材質がどうとかブツブツ言いながら工房に戻って行った。
その工房の先に子供達が遊んでいる様が見えたので、様子を見ようと一歩進んだ時だった。
『主様。頭上注意です!』
サトリが注意を促した瞬間、頭上から小枝がパラパラと降ってきた。
おっと!
小枝と言っても大樹サイズだから、ドスンドスンと響く。
もう大樹さん、危ないでしょ!
もし子供達の頭に当たったら大変なことになるよ!
………………。
あれ? これってもしかして?
そう思い、頭上を見上げると、「好きにしたまえ」とでも言うように、風も無いのに葉を揺らしてた。
あ、そうですか。ありがたく使わせてもらいます。
『何千年の樹齢があるのか解りかねますが、相当な霊力を帯びています。
武器に加工するのにも適しているでしょう』
そして僕は、その霊験あらたかな大樹の小枝を抱え、工房に向かった。
余談、一人じゃ持ちきれなかったので、工房のみんなに手伝ってもらった。
数日で堀に無事水が引き込まれ、土木工事も終了した。
この水量があればアレが出来る。
そう、水田です。
後鬼からお米が無尽蔵に出てくるけど、もしも後鬼が長期間居なくても安定して供給ある方が良いじゃない。
ということで、今度は田んぼ作りだ。
エルフと獣人達に協力してもらった。
ん? ドアンも混じってる。
何にでも顔を出すヤツだなぁ。
土木工事でも陣頭指揮を摂ってたし、武器も小道具も作ってた。
地ならしを後鬼がまたまた土遁の術でしてくれて、予想より早く水を田んぼに引き込むことが出来た。
「ほほう。これが田んぼとやらか。初めて見たわい」
そう言うドアンのように、何にでも興味を抱き、自ら率先して行動することが一流の職人の在り方かもしれない。
だが、これから一番大変な作業が待っている。
田植機なんてものは無いから、全て手作業で田植えをしなければならない。
後鬼が田植えの説明会を開催し、実地で教えてくれる。
その後、皆一斉に並んで田植え大会だ。
僕も参加。
アヤメとタマモは人化して張り合いながら競って植えて行く。
前鬼と後鬼が早いが、意外にもドアンも早い。しかもキレイにまっすぐ植えている。
僕? 聞いちゃいけないよ。あーた。
元商社マンなんだから、初めてなんだよ、こちとら。
まだ一列の半分くらいの地点で一息つき、見上げてみると、八咫烏が優雅に円を描きながら春風に気持ち良さそうに舞っている。
(お米……好き)
そうか。おまえもか。
お米は日本人の活力の源。
淡白な味わいは飽きることが無いし、噛んでるとだんだんほんのりと甘みも感じる。
じゅるり。
いかん。想像してたら、食べたくなってきた。
後鬼ママにおにぎり作ってもらおうっと。
話数をだいぶ書き貯めてから毎日投稿していますが、プロットに無い展開になったり、キャラクターが勝手に走り出したりと、自分でも驚く話になってます(笑)。
作品を書き続けていると、キャラが動き出す、なんてよく聞きますが、ホントなんですね。