第117話 狩猟大会 その3
東西南北全てに散った参加者達。
培った経験や己の能力を発揮して狩っていく。
ーーー三人称ですーーー
狩猟大会の壇上。
「フライは出場しても良かったのに」
次郎は四枚羽のラプトルをフライングラプトルと名付け、愛称をフライとしていた。
「ティラノが出場しないなら自分も出ないと頑なでしてな」
八岐大蛇が苦笑しながら、次郎、ティラノ、フライを同時に見る。
「仲が良いんだね」
次郎の言葉が伝わったのか、ティラノとフライが思いっきり首を横に振る。
そして目が合うと、フンッとお互い反対方向を向く。
「ほら、やっぱり」
次郎を始め、皆が笑う。
「むっ、主殿。
青い煙が上がりましたぞ。
ここは我が」
真神が東の方面から上がった救援を求める青い煙にいち早く気がつく。
「真神、待て。
一番速い君は後だ。
雲外鏡、上空から位置を確認しろ」
「はっ、ただいま」
返事と共に、雲外鏡が上空に上がっていく。
「よし、位置はわかったぞい」
雲外鏡は青い煙の上がった箇所を確認するとすぐに次郎の下へ転移する。
「鈴木様、確認致しましたぞ」
「では、ティラノとフライと共に現場へ急行せよ」
「かしこまりました。
竜ども、準備は良いかや?」
「グオオッ」「クルルオッ」
「よし。
では、行って参ります」
言い終わると同時に、雲外鏡、ティラノ、フライの姿が消える。
「我は待機か」
「今の救援信号が魔熊なのか魔猪なのかわからないけど、どちらも春は動きが活発だ。
すぐに忙しくなるぞ」
次郎が言った途端に、同じ東の森の別の箇所から青い煙が立ち上る。
「次郎殿の言う通りだったな。
では、これは自分が向かいましょう」
「何っ、オヌシが行くのか!?」
「ほれ、次郎殿が今言ったばかりであろう?
最速のおまえの出番は後だと。
次郎殿、行って参ります」
「八岐大蛇、頼んだ」
八岐大蛇は体高を5メートルほどに抑え、二つ目の青い煙に向かって飛んで行った。
それから次々と青い煙が上がってきた。東西南北全てから。
「やっぱり、こうなったか」
通常の狩猟チームなら、大物と遭遇した際にも対応出来る編成や対策を事前に行い、万全の状態で実施している。
しかし、今回は大物対策が出来ていないチームがほとんどである。
その為、救援する側に大妖達を配置していた。
「北は牛頭、東は馬頭、西は前鬼に行ってもらう。
馬頭はその足を活かして、救援場所を巡ってくれ。
前鬼も同様だ。
みんな、そのまま少し待て」
次郎が気力を溜め、それを解放して大人に変化する。
そして、そのままジャンプして大樹の枝に掴まり、次々と上の枝に飛び跳ねて行く。
大樹の頂上まで登った次郎は、青い煙の位置を把握し、ステータスボードのマップ機能にプロットする。
それが終わると、今度は大会会場の壇上に転移した。
「位置を把握した。
現場へ送るぞ」
次郎がそう言うと、前鬼、牛頭、馬頭の三人の姿が消える。
「わ、我は……」
「心配するな。
真神には一番厄介な南を任せる。
先行しているヤタと上手く分かれて救援してくれ」
「任された!」
「転移されるのと自力で走るのと、どっちが良い?」
「それは当然……!」
すでに真神は南へと走り出していた。
誰も目に捉えることの出来ない超高速
で、真神は南門を潜り抜けて行く。
「相変わらず、使い方が上手ね」
後鬼がコロコロと笑う。
「みんな、一癖も二癖もある者ばっかりだからね」
そんな次郎も笑ってる。
大樹の森の西側。
木の枝に5人のエルフが集まっている。
「本当にやるのか?」
「せっかく見つけた大物だ。
逃す理由は無い」
「この森には魔猪が本当にいるんだな。
初めて見たぞ」
「俺だって初めてだ。
魔熊もいるらしいぞ。
熊は肉も食らうが、猪は草食だ。
幾ばくかは与しやすい」
「そうだな。
高ポイントのチャンスだな」
「それに、運搬係がいるんだ。
俺達はただ狩るだけで良い。
楽で良いじゃないか」
そう笑う彼らの言う通り、狩猟で大物を仕留めた後の処理の方が大変なのだ。
まず運ぶのが苦労する。
運搬に日数が掛かるようなら、近くの水辺に沈めて血抜きもしなければならない。
ましてや、魔猪ほどの大きさがあると、彼ら5人だけでは動かすだけでも無理だ。
「よし。
5人で一斉に射掛けるぞ。
多少穴だらけになっても構わない。
どうせ皮下脂肪も厚い。
弓矢で弱らせたら、鉈で止めを刺そう」
「「「おう」」」
そして、魔猪の身体に五本の矢が突き立った。
「プギィィー!」
「よし、命中だ。
まだまだ射掛けろ!」
続いて弓矢が魔猪に襲い掛かる。
合計十本の矢が魔猪に刺さっているが、悲鳴を上げながらも身体を揺するとほとんどの矢が地面に落ちる。
二、三本の矢を残すのみとなった。
「なんて頑丈なヤツだ!」
二度の攻撃を受けた魔猪は、さすがに敵の位置を把握した。
エルフ達は二本の木の枝に乗っていたが、その内の一本に向かって走り出す。
「まずい!
移動するぞ」
魔猪が木に衝突する寸前、エルフ達は別の木に飛び移って、なんとか難を逃れることに成功した。
エルフ達も枝から枝に飛び移っては矢を射掛ける。
弓矢だけでなく、様々な魔法攻撃も合わせて行うが、魔猪が弱まる様子を見せない。
「さすが魔猪だ。
長期戦を覚悟しなければならないか」
エルフのリーダーがそう呟いた時だった。
森の奥から地響きが起こる。
森の木々が震えるほどの地響き。
「な、なんだ!?」
「おい、森の奥を見てみろ!」
「木が……木々が薙ぎ倒されている!」
進路はエルフ達に向かっている。
「デ、魔猪の群れだ!」
「でかいぞ!
真下にいるヤツの二倍……いや三倍はある!」
猪の雄は単独行動をするが、それ以外の猪は母親とその子供の母系家族による群れで行動する習性を持つ。
エルフ達はその子供に手を出し、その子供が悲鳴で助けを求めていたのだ。
怒り狂った母親とその子供達の集団が目の前に迫ってくる。
「おいおい、さすがにこれだけの数を相手に出来ないぞ!」
「狩りは止めだ!
逃げるぞ!」
エルフの一人が青の発煙筒に点火して、手に持ちながら枝から枝に移動する。
魔物化した猪は、通常のそれとは雲泥の差。
大樹の森での経験が浅い者が手を出してしまった。
エルフ達に救援の手は届くのか。




