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第116話 狩猟大会 その2

各所に散った狩猟大会参加者。

各々の技を駆使して狩りをしていく。

ーーー三人称ですーーー


雪女チームや隠行鬼おんぎょうきAチームと同じ南門。

「さあ、私達も行くわよ

喜一郎きいちろう、湖は任せたわ」

「わかりました。

やれることをやりましょう」

弁才天達が海方面に、河童の喜一郎きいちろう達が湖方面の水路へ飛び込む。

河童達は高速で水路を進む。

天狗の飛行速度よりも速い。

弁才天はさらにその上を行く。

先に海に到着した弁才天は、海中の様子をつぶさに窺う。

(よしよし。

魚影も豊富だし、イカやカニもいる。

タコは擬態が厄介だから後回しね)

確認を中断して、水路の方へ向かう。

弁才天と同じチームの4人の河童達が同じタイミングで、海と水路の境目で合流した。


「獲物は豊富。

今日まで漁を我慢した甲斐があったわ」

弁才天は、狩猟大会の運営側から指摘を受けずに、自ら大会当日まで漁を自粛していた。

(大会当日に豊富に獲物があるのは予想してたけど、あまりズルいことをしてると、あの現人神あらひとがみの性格上、失格に成りかねない。

これも策よ)

弁才天は、公明正大な次郎の性格を鑑みて、漁の自粛を決断。

森の猟が禁止なら水辺の漁も禁止にしなければ、同じ土俵に立てたと言えないと思ったからだ。

「まずはカニやエビなどの甲殻類、イカもいきましょう。

魚やタコは後回しで良いわ。

複数で当たらないといけないシャコは一番最後よ。

さあ、漁を開始しましょう」

弁才天の号令で一斉に海へ散らばる河童達。



一方、大樹の森の都の北門を潜り抜けたお屋敷チーム。

「本当にこちら側で良かったんでしょうか?」

リントが心配そうな声で聞く。

「東側は人が多すぎて暑苦し過ぎるでありんす。

こっちの方がスッキリしていて気分が良いわ」

タマモがヒルコを胸に抱いたまま返事をする。

「その意見には賛成ですね。

いくら獲物が豊富だからと言って、あれだけの人数で押し寄せたら、一チーム当たりの獲れ高が良い訳ないのに」

「それに、ナターシャが東側に飛んでったにゃ。

ナターシャの上前をねることが出来るヤツにゃんかいるのかにゃあ」

「いるのなら、ぜひともそうして欲しいものだわ」

どうやら彼女達はナターシャのいない方面へ向かうことが一つの策であるようだ。


「でも、それなら大物狙いで南の草原に行くのもありなのではありませんか?」

リントは、東の湖には水辺を求める獲物が、西の海側には魚を求める野鳥とそれを求める獲物が、南の草原には大物がと、それぞれ狩りに向かう理由があり、それら理由が見当たらない森の北側が不安で仕方がないらしい。

「ええ、あちき達についてこられるなら、それもありでありんしょうね」

「空飛ばないと、あのだだっ広い草原で獲物を見つけるのは大変にゃ」

「ボ、ボクの浮遊魔法が遅いので、皆さんの足を引っ張っているんですね……申し訳ありません」

「いいえ、期待をしているでありんす。

狩猟民族のエルフであり、中でも一番伸びしろがありそうなリントに」

落ち込んだリントが顔を上げると、アヤメ、タマモ、ミレイユが揃って笑顔であった。

「ピューイ」

ヒルコも触手を伸ばして、フリフリと振っている。


「私が狩りの腕でナターシャに敵わないのは知ってるでしょ。

あなただけが届きそうなのよ。

私も期待しているわ」

ミレイユが孫弟子を励ます。

「頑張ります!」

リントの顔に力が戻る。


「アヤメ様とミレイユさんは索敵に集中してください。

出来れば、獲物が大物か小物の判別もお願いします」

「わかったにゃ」「了解よ」

「獲物を確認後、ボクが指示を出します。

大物ならタマモ様が、小物ならボク、複数いる場合はヒルコ様にお願いしたいと思います」

「わかったでありんす」「ピューイ」

纏まりが出てきたお屋敷チームが北の森を進んで行く。



大樹の東の森。

三本の矢が枝に止まっている野鳥を狙う。

「しまった!狙いが逸れた」

三本の内、二本は野鳥を射止めたが、三本目はわずかに狙いが逸れ、野鳥が警戒の鳴き声を上げながら飛び去っていく。

その鳴き声に釣られ、周りの野鳥も一斉に空に舞い上がる。

「何やってんのよ」

「周辺の鳥達まで居なくなってしまったぞ」

「す、すまん」

元深森のエルフで構成されたチームであった。

彼らが飛び去る野鳥の行く先を見極めようと空を見上げた時だった。

いきなり何十という矢が射ち上げられ、それが全て野鳥に命中していく。

「何あれ!?」

「集団で狩りをしているのか?」

「そんなことしても揉めるだけだ。

メリットが薄い」

しばらくすると回収班を呼ぶ白い煙が上がる。

彼らもそちらに向かう。

ついでに仕留めた野鳥を引き渡す為だ。


そこにはすでに回収班が到着していた。近くを巡回していたのだろう。

そして、山となった野鳥を回収していた。

「これは誰が?」

狙いを外したエルフが思わず聞いていた。

「ん?ああ、これね。

エルフAチームだな。

と言っても、ナターシャ独りの仕業だろうな」

回収班の鬼が答える。

「ええっ! 独りで!?」

「俺はナターシャと一緒に狩りに行ったことがある。

狩猟チームとして出掛けたはずが、単なる運搬係と成っちまったがな」

鬼がクククと苦笑しながら体験談を語る。

「今日はナターシャのヤツ、張り切っているみたいだな。

いつもよりペースが早い。

お宅らも頑張んねえといけねえよ。

まあ、優勝は諦めて入賞狙いにするんだな」

鬼は手を休めず、アドバイスかどうかわからない口調で伝える。



同じ大樹の東の森。

「ラッキー。

ナターシャ、鹿を2頭見つけたわ」

「よし。

私が右の鹿を狙うわ」

「見つけた私が左のを狙う。

みんなは二射目の用意をお願い」

「「「了解」」」

弓を引き絞り、狙いを定める二人のエルフ。

矢が放たれる寸前、2頭の鹿が何者かに引き倒された。


「何っ!?」

「なんだ?あれは!?」

そこには、2頭の鹿の首に噛みついて引き倒したラプトルが2頭いた。

そして、そのラプトルを守るかのように、さらに2頭のラプトルがこちらを警戒しながら前を塞ぐ。

「クルックルルッ」

ラプトルが止せ、止めておけとでも言うように、低い声で唸る。

「あれは、確かラプトルと言う地竜の一種だ」

「首飾りをしているってことは、ウチの住民じゃない!

彼らも出場選手なの!?」

エルフ達が口々に騒ぎ出す。


「ストップストップ、すみません。

攻撃しないでくださいね」

一人の男が遅れて茂みから現れて、ナターシャ達にペコペコし出す。

彼は畜産業の携わる一般人だ。

「私達の上前を()ねるなんてやるじゃない。

面白いわ」

ナターシャの目に闘志の光が灯る。

「いやいや、すみません。

この子達はものすごく賢くて、狩猟大会のルールも一発で理解したと思ったら、大会に出せー出せーって聞かなくて」

「もしかして、翼竜も参加しているのか?」

「ああ、それは八岐大蛇やまたのおろち様が危険だからとお止めになりました。

翼竜達は不満そうでしたがね」

狩猟大会では弓矢が多く飛び交うことが、翼竜には危険と八岐大蛇やまたのおろちが判断したのだ。

ラプトルのリーダー役の男はそう言いながら笑っていた。


「うかうかしていられない。

みんな、行こう!」

「「「了解」」」

(とんでもない伏兵が居たもんだわ。

彼らはついこの間まで野生で狩りをしていた天然の狩人。

気が抜けない。

ジロー様ったら、色々やって来るわ~。

まあ、そこも彼の良いところだけど)


ナターシャの上前を()ねることが出来る者達がいた!

却ってナターシャの火が燃え盛る。


こうやって、たまに三人称を執筆するのも良いもんです。

まあ、普通の小説では当たり前なんですけどね。

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