第113話 桜咲く
深森のエルフの集落へ進軍していたオーガ達も討伐し、平穏な日々を過ごす次郎達。
皆さん、こんにちは。
春です。春の訪れです。
普段じわじわと春が来たな、とは思っていたけど、桜が咲いていて気がつかされた。
今日、急にだよ!
桜の木はどこにあるって?
大樹さんがそうでした。
いつから、そうなの?
昨年、桜咲いてなかったよね?
さくらんぼとか無かったよね?
大樹さんが異世界で一番の不思議な存在だよ。
ということは、だよ。
この異世界に来て一年経ったということになる。
気になって、ステータスボードを確認する。
名前:鈴木次郎
年齢:5歳(5歳)
種族:もうヒトじゃない
HP:もう成長出来ない
MP:もう成長する必要が無い
SP:全ての次元から吸収
スキル:身体強化 気力回復 治癒 妖召還 管理者の加護
大樹の加護 超能力 ステータス確認 加護付与
ね、年齢が5歳で固定してる……orz。
ん?
年齢にカッコが付いてる。
ちょっと試しに大人の身体に変化してみると、年齢の項目が5歳(22歳)になってる。
なるほど。
年齢変化が標準装備になった訳ね。
これはこれで……良いのか?
それに、現人神もどこか行っちゃったよ、おい。
…………うん。今さら気に済まい。
成るように成るさ。
屋敷のベランダから眺める風景は見事なもんだ。
眼下に広がる都の街並み。
頭上にはピンク色に装いを変えた大樹さん。
少し甘い薫りが微風に混じる。
せっかくの春だ。
何か催そう。
そして、週間定例会議を経て企画されたのは狩猟大会。
5人までのチームごとに分かれ、狩りを行う。
競うのはポイント制。
兎一羽で1ポイント、鹿一頭で5ポイントなど獲物の種類でポイントが変化する。
時間も朝9時から15時までと、狩りをするには短い時間に区切った。
如何に効率良く狩猟出来るかがカギとなる。
合計ポイントが最も高いチームが優勝となる。
大会発表から数日で、続々参加チームが名乗りを上げて来た。
どうやら、各種族ごとにチームを編成しているようだ。
もちろん、一般人(元ダイクン王国国民)からも参加表明があった。
大変なのは裏方に回った僕達だ。
前鬼や後鬼、ドワーフ達は一緒に裏方だ。
八咫烏や八岐大蛇はわかるが、真神まで裏方になった。
「これは住民達が楽しむものでしょう。
我が参加すると興醒めに成りかねません」
と殊勝なお言葉。
そして、いつも頼りになるキキ達病院勤務者は救護班だ。
大会の熱気に充てられて、無理してケガをする人が出るかもしれない。
安全面は万全にしたい。
また、力自慢の鬼達は運搬役だ。
牛頭と馬頭が指揮を執る。
選手の狩猟チームが獲物を狩ると、その場で発煙筒を上げ、そこへ運搬役が行くという手筈になっている。
なので、選手達は狩りに集中出来るという寸法。
選手達は、獲物にチーム名の入った札を結んでおけば良い。
ちなみに、同じ力自慢の獣人達は選手として参加するので、運搬役から免除。
発煙筒はもう2種類ある。
赤い煙の出る発煙筒は、ケガ人の発生を知らせるものだ。
キキ達救護班はそこへ向かって、治療を行ってもらう。
そして、青い煙の出る発煙筒は、緊急応援の信号となる。
魔熊や魔猪と遭遇した時、狩れるのなら良いが、そうでない事態になった場合に使用することになっている。
そこへ急行するのが真神や八咫烏、八岐大蛇達だ。
そこにさらにティラノも加わる。
彼らを現場に送り届けるのが雲外鏡の役目。
真神や八咫烏は素早く現場に到着出来るだろうが、ティラノはそうはいかない。
一度に二ヶ所三ヶ所同時に発生するかもしれないので、ティラノは雲外鏡とセットで行動する。
八岐大蛇は、真神や八咫烏ほど速いわけではないが、比較対象が高速過ぎるだけで、彼も普通に速い。
空を飛んで急行出来るのだ。
アヤメ達は……なんと出場すると言うのだ。
メンバーは、アヤメ、タマモ、ヒルコ、リントにミレイユさんの5人。
お屋敷チームなんだと。
普段、狩りなんてしないのに、こういうことには参加したがりだね。
なんか、ミレイユさんの娘のミーシャちゃんが対抗意識を出して、チームを作ったらしい。
まあ、ケガしない程度に頑張ってね。
大会発表の日から一切の狩猟を禁止にしている。
練習とかで狩り過ぎ防止の為。
そうしたら、軍事演習場を解放して欲しいと詰め寄られ、仕方なく許可した。
選手達が連携の確認したり、訓練に使うそうだ。
そこまでするんだ。
普段の遊興が足りないせいか?
政を預かる身として、反省しなくちゃな。
会場設置も建設班にドワーフ達が加わって、順調な運びだ。
今回は、一際大きな壇上を造ってもらった。
獲物を運び入れる為に大きくしてある。
その壇上に巨大な量りを設置するのが大変そうだ。
普段は食肉貯蔵庫の隣に設置してあるので、会場の広場まで運搬しなければならない。
これがかなり重い。
そりゃ、でっかい魔猪を乗せて量れるのだから、想像出来ると思う。
あのティラノも量れたくらいだ。
これが造れるドワーフの技術の凄さは計り知れない。
で、そこで僕の役目がある。
そう、アポート(物体引き寄せ)でちょちょいのちょい。
細かい作業は邪魔ばかりするという汚名を返上すべく、こうした超絶重い物や単純なことなら貢献出来る。
でないと、作業現場のみんなの『あっち行って』『邪魔!』という視線に耐えられないのよ……。
全て順調だ。
あとは、大会当日まで大人しくしておこう。
……みんなのために。
大樹の森の都の狩猟大会。
大樹の森に生息する魔物は一筋縄ではいかない。
次郎達は、どこまでフォロー出来るのでしょうか?




