第11話 にゃんこ式ばいやー
獣人が加入しました。
彼らは力持ち。
これからの拠点整備に力を奮ってくれることでしょう。
拠点の人員が増えた。
僕に妖が6人。
エルフ13人。獣人30人。
総計49人。ちょっとした集落だね。
ちなみに、真神の眷属狼はカウント外。
だって出し入れが激しいし、数が多くて数えきれない。
この間、30頭まで数えたけど、その奥にまだ20~30頭ほどが見え隠れし、振り返ったらまだまだ居るんだもん。もう数えるのを放棄した。
真神に聞いても「解りかねます。気にしたこともございません」って。
眷属狼はいっぱい。以上!
この調子では避難民がまだ増えるかもしれないと思い、さらに妖召還を行った。
もしかしたら、妖達や眷属狼達が狩りする度に経験値が貯まっていくのかもしれない。
今回の妖は八咫烏。
日本サッカーチームのエンブレムのアレ。
ただし、あれは中国の三足鳥と取り違えて伝承されたデザイン。
召還された八咫烏は鮮やかな金色のトビ。猛禽類。太陽神とも導きの神とも言われてる。
八咫烏なら上空から様々な偵察が行え、素早く情報伝達をしてくれるだろう。
基本的に自由にしてもらい、周辺偵察で何か変化があれば知らせてくれるようにお願いしておいた。
視力もかなり良いので、また避難民を見つけたら即座に知らせてくれるに違いない。
この八咫烏をみんな知ってると思いきや、アヤメだけ知らなかったみたい。
「ほんに常識を知らぬ小娘だこと」
「若いって言いにゃさいよ」
「あんたのは、あ・さ・は・か・というでありんすよ」
ホント仲良いな。
『主様。体調に変化はございませんか?』
「経験値がよほど貯まっていたのか、どこもおかしくないよ」
『八咫烏はかなり格が高い妖ですし、心配致しました』
そもそもサトリの言う格とは、存在感とか神格みたいなもので、戦力や術の高低を示すものでも無いらしい。
その八咫烏からの知らせが来た。
(あるじ……あるじ……ヒトブタいた)
八咫烏は明確な言葉を交わす訳では無い。こうやって意思を伝達してくるのだ。
八咫烏からの情報イメージでは、南の草原500km先に3匹のオークが胡座を組んでなにやらブヒブヒ言ってる姿が伝わってきた。
目がものすご-く良いんだね。驚きの距離だよ。
(ヤタ。あれはオークと言って敵対の可能性が高いから、あまり近寄らないでね)
(りょ……うかい。ヤタ、近寄らない)
(うん。報告ありがとう。この調子でよろしく)
嬉しそうにクルリと円を描いて飛ぶイメージが来た。
「だそうだよ、サトちゃん」
『さすがは八咫烏。脅威の索敵能力ですね』
「緊急ではないけど、みんなとも情報共有しておこうか」
屋敷の会議室に妖達全員に集合してもらった。
(八咫烏には、引き続き偵察飛行をお願いしてあるので、この場には居ない。)
『先ほど、八咫烏がオークを3体発見しました』
ついに来たか、という皆の出鼻を挫くように、
「いや、ただたむろってるオークを発見しただけなんだ。しかも500km先の」
「ごっ…」
前鬼が絶句してる。いやみんなか。
前世で言えば、東京~大阪間がだいたいそんなものかな?
「たった3体だけでありんすか?」
気を取り直したタマモがお茶を一口含んだ後に言う。
『ええ。まだ目撃証言の段階ですね』
「しかし、いずれとは思っておりましたので、良い機会ではありませんか」
前鬼が推奨してた防衛体制の構築ってやつか。
「そうだね。防衛戦かぁ。どんな風にしたら良い?」
「ジロー様は専門の学舎で学んだ方だから、任せて安心にゃ」
いやいや、防大で学ぶのは近代戦から現代戦での戦術論や戦略論だよ。そこには妖術や魔法の概念は無いからね。
「まずは防壁でしょうな。
こちらが我らだけならば各々好き勝手に暴れれば良いのでしょうが、エルフや獣人達もおります。
人員も少なく、手が回らないことのない程度のものが必要と存じます」
論理的戦闘思考の前鬼の発言。
「住居や畑は囲い込みたいですね。
かといって、弓矢や術法が届いても防壁内に被害が出る程度の距離では困ります」
生活面を重視する後鬼は、拠点と防壁の距離が気になるらしい。
「いっそ攻撃一辺倒で叩き出すのもありではありんせんか」
攻撃談義は後でね。
「我は遊撃役であろうから、皆の意見に従う」
そうね。それは真神と眷属狼達にお願いすることになりそう。
「ふふん、ここはあたしにお任せにゃ」
妙にアヤメが自信ありげに宣う。
「そういえば、あなた結界術だけは一流だったでありんすねぇ」
「にゃんこ式ばいやーなのだわさ」
ニャンコ式バリヤーと言いたいらしい。
「それはどの程度の防御力なのかな?」
「このあちきの全力攻撃を百日耐えてなお衰える様子が無いでありんした」
「あんたのチクチクした攻撃にゃんか、百日どころか二百日でも三百日でもあくびしながらでもよゆーよゆー」
あ、チクチクしたんだ。本音も見え隠れするね。
てか、二人で百日戦争してたんだね。ここじゃ禁止だから。
「これは朗報ですな。
攻撃特化のタマモの攻めを百日もしのぐとは相当な防御力でしょう」
アヤメの結界は広く展開することが出来るようで、10km四方は余裕らしい。街でもスッポリ入りそうだ。
「では、基本的な防衛として四方からエルフ達に弓矢や投石攻撃出来る程度の防壁を設け、アヤメと僕で防衛に回ろう。
真神と眷属狼達は、獣人達と遊撃。
他のみんなには各々必要と判断したポイントを攻撃に出てもらう、ということでどうかな。」
前鬼、後鬼、タマモには自由に動いてもらう方が良さげ。
敵の様子を八咫烏に中継してもらい、みんなにはサトリを通じて情報共有をしてもらうつもり。
「「「かしこまりました」」」
おや? オークとは別に、またもや人影が……。
どうやら、大樹を目指しているようですね。