第108話 次郎の闘い方
戦場に、烏天狗の勝鬨が響き渡る。
そして、次郎の下へと合流する……。
烏天狗が敵将を討ち取ったらしい。さすがだね。
僕の方も、母子二人にそのご主人を加えた三人を護衛しつつ、オーガ共を討伐している。
オーガはほぼ一列に並んでいる為、護衛しやすい。
それに、八咫烏と天狗達がオーガの数を減らしてくれるので、かなり助かっている。
また、一つ気づいたことがある。
オーガの中に、ごく稀だが、飛翔術を使う者がいたことだ。
だが、それも、空の覇者である八咫烏と天狗達には敵いはしない。
「鈴木様、助太刀致しますぞ」
「烏天狗、敵の千人長を討ったんだね。助かるよ。
それじゃあ、前方のオーガを殲滅…………って、血だらけじゃないか!」
烏天狗の声が聞こえたが、護衛中なので、前を向いたまま小刀をオーガに向けていたんだけど……烏天狗が替わりにと前に出てきてビックリ!
服がボロボロで顔が血で真っ赤じゃん!
ダメダメ!前に出るの禁止!
烏天狗の首根っこをひっ捕まえて、後ろにやり、そのまま治癒スキルを発動。
「おお……鈴木様の治癒術は痛みも和らぎ、それに気持ちも良いですな」
何呑気なこと言ってるの!?
「ちょっと顔を拭け!」
急いでインベントリから、タオルと浄化水の入った水筒を引っ張り出して渡す。
「ああ、こりゃ意外と血が出たもんですなぁ」
まだそんなことを。
「何を受けたんだ、そんなになって」
油断なくオーガに刀を向けたまま聞く。
「なにやら、音波のようなものでしたな。
何、ご心配めさるな。
このようなことは過去に何度か経験して御座るよ」
さすがは烏天狗、と褒めたいところだけどね。
毒でなさそうで良かった。
「とにかく、役割を代わって。
烏天狗が護衛役。
僕が斬り込むから」
「鈴木様のご命令通りに」
烏天狗に護衛役を代わってもらい、左手で脇差しも抜く。
生前に剣道はさほど得意ではなかった為、あのように綺麗な剣筋はなぞれない。
なので、ここはやはり慣れ親しんだ格闘技で行く。
本来、二刀を使うには有効な型がある。
左の脇差しを前に出し、剣先を斜め右に中段に構える。
刀身の長めの右の刀を左脇に引いて構え、いつでも横薙ぎが出来るようにするのが良いとされる。
状況に応じて、右の刀は大上段に構えても良い。
左の脇差しが防御で右の刀が攻撃と、役割がはっきりしている。
敵からは、右の刀の先端が後ろにあるので間合いが読まれにくいというメリットもある。
そういった型は熟練者でないとならないだろうし、僕では無理だ。
だから、刀は拳の延長として振るうのが、僕には扱いやすい。
どうせ僕の闘い方は、剣道の有段者から邪道と罵られるだろうが、勝たなくては話にならないので構いやしない。
蹴りや投げも使うよ。
使えるものは何でも使う主義です。
さて、オーガ討伐を開始する。
今度はオーガの身体を使っての壁を作らなくて済むから、気が楽だ。
まず、最初に目だけ切ったオーガの喉を順番に突く。素早くだ。
オーガはそれだけだと反撃して来るので、突きを放ってから一度退く。
人間なら喉の突きで絶命するのに、オーガはしぶとい。
それでも苦しむので、チャンスがあれば首を斬り落とすか、心臓を一突き。
これでやっと倒れてくれる。
何体かのオーガの死体を飛び越え、次のオーガに斬り懸かる。
大剣を持ったオーガだ。
その大剣と斬り結ぶことは決してしない。
弾くこともしない。
そんなことをしたら、相手からの衝撃を受けるだけだ。
大剣を振るわれれば、脇差しや小刀でパリィするだけだ。
そうすれば、相手の勢いが流れて体勢が崩れてくれる。
そこへオーガの顔目掛けて小刀を横一閃。
オーガは退いて避けようとするが、僕がオーガの足の甲を踏みつけてそうはさせない。
オーガもガクンとなり、小刀の刃先がオーガの目と鼻の間を切り裂く。
これで呼吸もしづらくなり、動きも鈍くなる。
鼻腔の痛みに気を取られている隙に、脇差しで腹部を刺す。
極道映画では「ドスは刃を上に向けて刺せ」って言うけど、僕はその逆。
刃を下に向けて刺している。
刺してすぐに体重を掛けて下にめり込ませる。
10cm超えるくらい斬ったら、飛び退く。
これで満身創痍の重傷者の出来上がりだ。
このオーガが動かなくなるまで適度に相手してやれば十分。
このようなやり方で、さらなるオーガ二体三体ともやり合うことが出来る。
二体目のオーガは大振りの右パンチが来たので、脇差しを握っている左拳でパリィして、カウンター気味に右の小刀で喉を突く。
当然小刀はオーガの首の後ろまで突き抜けた。
そして、その状態から大外刈で投げる。
小刀を抜きつつ大地に投げ、頭に衝撃を受けさせたと同時に、力を込めて顔を踏み抜く。
身体強化のおかげもあって、オーガの顔面がひしゃげた。
コイツは絶命しただろう。
バックステップしたついでに後ろの一体目のオーガに強烈なサイドキックをお見舞いする。
負傷した腹部を押さえ、前のめりになっていたから、顔面にヒット。
オーガの右顔面が陥没していた。
生死の確認はせずに次に向かう。
オーガ三体目と四体目が同時に現れた。
構わず突っ込む。
両方とも片手剣持ちだ。
少し斬り合ってみたが、左のオーガの方が剣速が速く、反応も鋭い。
十人長とか百人長なのかもしれない。
両者の反応の差を利用してみる。
何合か斬り合いを続け、左のオーガが左から右への横薙ぎ、右のオーガが右から左への横薙ぎを同時に仕掛けてきた。
このタイミングを待ってた。
右のオーガの剣はやや上方向にパリィして、相手のひざ裏に右足の甲を差し入れて引く。
左のオーガの剣はしっかり脇差しを時計回りに回転させてパリィする。
これで左のオーガの剣速が、狙いが逸れたまま速まり、僕の身体の向きも左手前の剣術では逆半身となる。
狙い通り、左のオーガの剣が右のオーガの顔面にヒット。
しかし、左のオーガはそれを気にせず、今度は左の横薙ぎを繰り出してくる。
両刃の剣だから出来る技だね。
ここで僕はアポートとアスポートの同時発動で、一体目のオーガと入れ替わる。
左のオーガが驚愕に囚われながらも、そのまま横薙ぎを振るう。
一体目のオーガの首が跳んだ。
そして再度、一体目のオーガと入れ替わり、今度は僕が小刀を力いっぱい横薙ぎを振るう。
左のオーガの首を跳ばす。
念のため、右のオーガの心臓も突いて止めを刺す。
ようやくの四体の討伐だ。
最初と合わせて、ちょうど十体……いや、十一体か。
あと百体くらいは討伐しなきゃな。
格闘って、本当にあっという間に体力が奪われます。
ボクシングでは、プロは1ラウンド3分間ですが、それだけでもうヘロヘロになります。
空手で十人組み手とかあるじゃないですか。
もう尊敬しちゃいます。
次郎も異世界転生の特典で、こなせるだけです。
でも、論理的思考の戦闘ですから、頭は非常に疲れます。
よくやるわぁ。




