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第104話 大樹の森の天使

ミーシャは強かった。

同じ種族でも、大樹の森の都のエルフは他と違うようだ。


そのまま放置も出来ないので、僕は気絶しているスレッガーに治癒を施しておいた。


みんなの居場所へ戻ったところでクリスチーナが話し掛けてくる。

「盟主様は回復魔法をお使いになるのですね。

スレッガーの治療をありがとうございます」

魔法ではないけどね。


「うう……」

スレッガーが気がついたようだ。

背中だけでなく、後頭部にも衝撃跡があったから、脳が揺れたんだろう。

立ち上がっても、足取りが少しフラついている。


「そうか……負けたのか」

「スレッガー……」

「クリスチーナ様……大口を叩きながら、この有り様。

恥ずかしい限りです」

「大樹の森へ行けば、その強さも学べるかもしれませんよ」

「あ、なるほど。

そういう考え方もありますね」

スレッガーははたと気づいたような表情をした後、こちらに歩み寄って来る。

そして、ミーシャちゃんの前にたどり着くとしゃがみこむ。


「小さな勇者よ。

手合わせいただき、感謝する。

ぜひ、あなたの元で修行させていただきたいのだが、如何か?」

「ミーシャね、まだ未熟なの。

だから、教えることはまだ出来ないの。

でも、一緒に練習することは出来るよ」

笑顔で迎えるミーシャちゃん。

天使の降臨だ。

ウチに連れ帰りたい。

あ、元々ウチの住民でした。てへ。


「魔法の女王ミレイユよ、私も共に学びたい。

宜しいか」

「短縮しない方を知ってるじゃない、もう。

でも、一般市民の私にはそんな権限を持ってないわ。

そういう件は、私達の神であり、大樹の森の盟主、スズキ・ジロー様に聞くことね」

ミレイユさんが僕の方を振り向いて、手で差し伸べてくる。


あれ? ミレイユさんが僕のこと、神って言ってるよ。

きょとんとしている僕に、ミレイユさんがため息をつきながら、

「ジロー様ももう少し自覚なされた方が宜しいですね。

あれだけ多くの神々に奉られて、ご自身が神でないみたいなお顔をされては、今後の諸外国との渉外にも影響が出ますよ?」

ええー?

外国との交易はしてみたいけど、そういうのはちょっと……。

「ミレイユお姉ちゃんの言うことは尤もですが、それは一時置いても、スレッガー達はどうされます?」

ナターシャが引き継いで、僕に聞いてくる。


少し考えた後、

「まあ、エルフ筆頭代表のナターシャが良いというなら、引き受けても良いけど」

「ナターシャお姉ちゃん、偉くなるの?」

「ミーシャちゃん、ナターシャは元々偉いんだよ。

エルフ最強なんだから」

「じゃあ、ナターシャお姉ちゃんを倒したらエルフで一番?」

「そうそう」

エルフ達の目が一瞬にしてギラつく。

やっぱり戦闘民族じゃん。

「ジロー様!」

「ということで、エルフ関連はナターシャが窓口ね」

「「「賛成」」」

ミレイユさん、リント、ミーシャちゃんも後押ししてくれる。


「では、ナターシャ様。

私達全員一緒に大樹の森へ連れていってくださいませんか?」

クリスチーナがナターシャに迫る。

「ちょ、ちょっと待って。

今、お伺いするから」

ナターシャはこちらに振り向き、僕の前で跪く。

ミレイユさん、リント、ミーシャちゃんも同様に跪いてくる。

それを見て、クリスチーナとスレッガーも、そして他のエルフ達も続々跪く。


(こういうの、必要なの?)

(ええ、こういうのは最初が肝心なものでありんすえ)

(そうにゃ。ビッと示してやるにゃ)

((もちろん、変化へんげして))

アヤメとタマモに言われるがまま、22歳の姿に変化へんげする。

深森のエルフ達が一瞬ザワッとする。


「ジロー様、これ等エルフ達も貴方様に忠誠を捧げ、大樹の森の安寧に力を注ぐことを誓います。

彼らが大樹の森の都に住まうことをお許し願います」

ナターシャの口上を聞き、覇気を醸し出し、宣言する。

「ナターシャの言ならば聞こう。

この者達全てを受け入れる」

「ありがたき幸せでございます」


そこでナターシャは、一度僕に深く頭を下げてから、立ち上がってエルフ達に振り向く。

「大樹の森の盟主様にお認めいただけた。

おまえ達皆、都へ誘われるだろう。

ただし!

大樹の森の都では、種族関係なく全ての者達を敬い、破廉恥な行動は決してするな。

都には多種族が同居している。

良いか? エルフはその中でも底辺にいるものと知れ。

これは脅しではない。事実だ。

それでも日々努力をして精進する者は、立ち上がって精霊への祈りを盟主様へも捧げよ」

ナターシャの口上は立派過ぎて、しばらく聞き惚れていた。

(ジロー様、もう転移されても宜しいかと)

リントが耳打ちしてくれて、現実に帰ってこれた。

エルフ達は皆、胸に手をやり、立っている。

あれが精霊への祈りなんだね。

リントが時々やっていた。


「では、始める。

皆、そのままで」

そのままアスポートする。

見上げると、大樹が聳え立っている。

皆上手く転移出来たようだ。


「ナターシャ、僕は戻ってヤタ達と合流する。

後は頼んだ」

返事を待たず、また集落の前に転移する。


アヤメとタマモも一緒だ。

「にゃ?

大樹が見えたと思ったら、またエルフの集落にゃ」

「アヤメ、少し静かになさいな」

タマモが人差し指を口元に当て、アヤメを嗜める。


(ヤタ、今どの辺にいる?)

(あるじの真上だよ)

烏天狗からすてんぐは?)

(オーガを見張ってる)

(よし。

ヤタ、僕を乗せてくれ)

(今、降りるね)


八咫烏やたがらすが目の前に舞い降りて来た。

「アヤメ、タマモ。

少し掃除をしていかないか?」

「にゃ~ん」

「あら、大掃除でありんすね?」

二人共、嬉しそうだ。

「ヤタ、烏天狗からすてんぐの下へ」

八咫烏やたがらすの背に乗り、上空へ舞い上がる。

アヤメとタマモも本来の姿に戻り、宙へと駆け上がる。

烏天狗からすてんぐとの合流を目指す。



余談


大樹の森の都へ転移してきたばかりのエルフ達。

「おおっ、大樹だ!」

「大樹が目の前に!」

「いつの間に!?」

「転移魔法だ!」

「街だ! 街が広がっている!」

「これが大樹の森の都か……すごいものだな」

スレッガーも驚愕に包まれている。

「ええ、これも全て盟主様のお力なのですね。

あの大樹にも大精霊が宿っているに違いありません」

クリスチーナは精霊への祈りを続ける。

他のエルフ達もざわめきが落ち着いて来ると、皆クリスチーナに倣い、精霊への祈りを大樹に捧げる。


「この様子なら、なんとかなるかな」

ナターシャも安心したようにエルフ達を眺めている。

「あなたが大変になるのはこれからよ」

ミレイユが笑いながらナターシャに話し掛ける。

「ミレイユお姉ちゃんにも手伝ってもらうからね!」

「ええぇ~、私はお屋敷の仕事があるからね。ちょっと無理かな」

「ボクもお屋敷を優先しないといけません」

「そんな~」

打ちひしがれているナターシャに足をポンポンと叩く者が。

「ナターシャお姉ちゃん、悲しまないで。

ミーシャ、お手伝いするの。

ミーシャもお屋敷でお手伝いしてるけど、ナターシャお姉ちゃんもお手伝いするの」

「ミーシャちゃ~ん」

ナターシャはミーシャを抱き抱えて頬を押し付け、喜びを爆発させる。

ミーシャは大樹の森の天使。

癒しの天才、ミーシャちゃんは戦闘でも強し!

しかし、個人戦なら、ミレイユ>ナターシャ>リント>>>ミーシャ、となっています。

でも、これから成長期を迎えるミーシャちゃんは努力次第……というところでしょうか。


次話からは、深森のエルフの集落に近づくクリムト帝国軍との戦闘です。

あまり戦闘シーンが見られない次郎の戦う姿が見られるのでしょうか?

お楽しみに。

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