表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
just like stop motion  作者: 立夏
7/7

4年目 2

言いたいことはあった。でも言い出せなかった。踏み込めば彼女は身をかわす気がした。今の年に一度の癒しすら、また会えるという期待すら失うことに怯えていた。


彼女はいつも改札まで見送ってくれそこで俺たちは「またね」と言って別れる。そして俺はいつも何度も彼女を振り返ってしまう。名残惜しさと言えなかった事への後悔を抱きながら、彼女が立ち去る姿を眺めてしまう。彼女はけして振り返る事はなく、いつものややせっかちなあの歩き方で迷いもなく立ち去っていく。俺になんの未練もないかのように。


当たり前だ。俺はただ途中下車してきただけの過去の存在で、彼女は十分幸せそうで、二人に何がありえると?

そう思いつつ、もし彼女が振り向いて俺を見てくれたら、視線が昔のようにカチッと合うことがあれば、言えずにいたことを言おうと決めていた。


お互いのコーヒーが空になり、店を後にし、改札へ向かう。「またね」と言って彼女はいつものようにやや素っ気なく立ち去る。俺は改札を抜け、振り返って彼女の姿を目で追う。


と、彼女が再会して4年目にして、はじめて振り返り、俺を目で探している。

彼女と視線が重なる。そしてあの頃のように、どこかでカチッと音がした気がした。

世界がストップモーションの光景に変わる。


時がとまるように雑踏の音も気配も何もかもが消え、俺にはやや戸惑った表情で立ち止まっている彼女しか見えない。


俺はくるりと向きを変えて歩き出す。

そして、彼女も同じように。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最初は言い合いから始まったと思ったら、最後は……。 続きが気になって仕方がないのです^_^ 爽やかな読書体験でした。 ありがとうございます。
2024/05/10 16:11 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ