わがまま令嬢なかぐや姫は3つの三日月を所望する
俺には月城かぐやという幼なじみがいる。
そいつは容姿端麗、頭脳明晰、実家は金持ちという完璧超人なのだが、残念ながら天は二物を与えなかったようで性格はとってもわがままである。
そのかぐやの誕生日が迫っていた。
当然気に入らない物を贈れば怒られる。だから本人に欲しいものを直接聞いたのだが返ってきた答えが、
「私の欲しいものは3つの三日月よ。もしそれを持ってこれたらひとつだけ何でも言うこときいてあげるわ。その代わりダメなら罰ゲーム」
とのこと。空に浮かぶ三日月をどうやって持ってこいというのか。それも3つとか。
結局その意味がわからないまま当日を迎えた。
放課後に体育館裏へ呼び出された俺は必死で考えた答えを渡すことにした。
「ツキが3つでキツツキだ!」
「一個足りないわよ!」
キツツキの置物を渡したら投げ返された。
「なら半円が3つでバナナだ」
三連バナナを渡してみたら無言で殴られた。ちなみにバナナは全部奪われ食べれられてしまった。
「違うんなら食うなよ。食い意地の張ったやつめ」
投げ捨てられたバナナの皮を拾おうとした時に、ふいに地面のバナナが何かの形に見えた。
そしてこいつの欲しいものがわかると腹の底からおかしさがこみあげてきた。
「やっぱり孝太郎じゃ私の欲しいものは用意できなかったみたいね。このバカアホ鈍感」
「ぷっくくく、あははははは。ようやくわかったよ。まったくヒント出すにしてもあからさま過ぎんだろ。お前の欲しいものはこういうことだろ」
俺はかぐやに笑った顔を見せる。
バナナの皮は上に2本に下に1本。それはスマイルマーク。
「ふん、やればできるじゃない」
「こんなのでいいのか?」
「……だって孝太郎。私といるときずっとめんどくさそうな顔してるし。この私と一緒にいるんだから楽しそうな顔しなさいよ。バカ」
「お前が面倒かけなきゃいいんだろうが。それじゃ約束を果たして貰おうか」
さてこいつにどんなことをやらせるか。
これまでこいつのわがままで散々苦労させられたんだし少しくらいは仕返ししないとな。うーん、一週間おやつのプリンを禁止にしてやるか。
「どうせイヤらしいことをするつもりなんでしょ。このスケベ」
「そんなことするかっ!」
「で、でも。そうね。エッチなことは許さないけど。分不相応にも私を彼女にしたいとお願いするなら叶えてあげてもいいわよ」
顔を真っ赤にしながらそんなことを言うかぐやに不覚にも可愛いと思ってしまうのであった。