4 呼び出しを受けて
昼休み、
俺は生徒会室に呼び出された。
部屋に入ると、
生徒会長の黒川花姫はどこか重苦しい雰囲気を纏い、
長テーブルに肘を付き、手を握りしめるように組んでいた。
「来ましたか、四葉充希くん。」
部屋は電気がついていないせいか、
薄暗く花姫の表情はうかがえない。
怒っているのか、悲しんでいるのか、
はたまた単に面倒だと思っているのかすら分からない平坦な声。
俺は促されるままに花姫の対面に座る。
そして花姫は話し始める。
「先日、いえ、これは昨日ですね。
帰宅前の放課後、
多数の生徒と数人の教員が、
あなたと白沢花音さんのただならぬ交流を目撃しております。
これについての弁明は?」
「実は花音は父との再婚相手の連れ子でして、
今は俺の義妹に当たります。
彼女は兄妹に憧れを抱いているのだと判断します。
なので、その交流は少し距離感を測りかねているためかと。
もう少し様子を見れば、改善すると思います。」
「なるほど…白沢さんから不適切な発言があったとか。」
「ええ、あまり適当な発言ではなかったでしょう。
しかし、それは少しテンションが上がってしまったためかと、
実際に自宅ではそのようなことは確認されませんでした。
先日、花音としたことといえば、
一緒にテレビを見ること、そして食事をとることだけでしたから。」
「それを証明することは?」
「俺に会話、行動の記録を取る趣味はありませんから。」
「「…。」」
「いいでしょう、ではそのように報告を。」
「はい。」
空気が弛緩する。
椅子から降りると徐々に近づいてきた。
「あはは、ごめんね、みっくん、放送で呼び出したりしちゃって。
生徒会としては一応釘は刺しておきましたってことにしておかないと、後々面倒なことになりかねないからね。
みっくんだって先生に問い詰められたりしたくないでしょう?」
花姫はやはり気を遣ってくれる優しいお姉さんだ。
あと、みっくん言うな。
素がで始めているぞ。
気がつくと、
目の前に理想のお姉さんが立っていた。
普段ニコリと微笑んでいる笑顔が優しい。
顔は小顔で目や鼻、口の位置取りが理想的だ。
目元は優しげに垂れていて安心感を与え、
綺麗な黒髪は揺れるだけでシャランと鳴り響きそうなくらい幻想的で、
見ているだけで男心を鷲掴みにして離さないだろう。
白沢花音と対極に位置する美人なお姉さんがそこにはいた。
「まあ、そんな事務的なことはともかく…。」
ぷくぅ。
花姉が頬を膨らませ、
「聞いてないんだけど?」
「へ?なにを?」
「だから、妹があの白沢花音でみっくんに好き好きってしてること。」
だから私もするの、
そう聞こえたかと思うと、
頭をギュッと抱きしめられてしまった。
大きめの膨らみに包まれ、
夢心地となる。
優しくどこか甘酸っぱい匂い、
トクントクンと鳴り響く耳に心地よい心臓の音、
なにより年上の包容感に内心メロメロになるが、
心にムチを打ちなんとか逃げ出す。
「どうして、ど〜うし〜て、
お姉ちゃんもいっぱいくっついたり、
ハグしたり、チュ〜もしたいのっ!」
「いや、花音とも最後のなんかしてないし。」
「てことは、2つはしたんだ、
2つはしちゃったんだ。」
じわぁ。
目元に涙が滲んでいく。
「みっくんは私だけのみっくんなのに。」
やだ、やだ、やだとそう駄々をこねる。
優しく、厳しい完璧な生徒会長、
理想のお姉さん数ある顔を持つ彼女だが、
そう黒川花姫は実はお子様なのだ。