006_蛙ちゃんの二年目
お庭の小池にはまってしまって、
さあ、大変というか、通常営業です、
蛙姫なナダお嬢様、
姿は大きな蛙のままですので、こう、自然に溶け込んでいます、
池の中で、スイスイと泳ぎつつ、
濡れても大丈夫な服を着込んでますので、
いろいろ、炉理的な問題も、
大丈夫なやつです、いやまあ、
蛙の姿に欲情するとなると、かなり、変態度が増すので、
それはそれで問題がありそうな気がしておりますが。
「なにかばかにされたきがする?」
げこり、と鳴きつつ、首を傾げるナダちゃんです、
どこが首なのか分かりにくいですが。
「相変わらずお水の中がお気に入りねぇ」
強めの夏の日差しを、遮るように、傘を、
侍女に掲げさせて影を作らせている、
美人の蛙母様が、呑気に述べています。
ちょっと気だるげに、椅子に座って、娘さんを見ていますね。
「かーさま、つめたくて、きもちよいですよー、
ごいっしょしませんかー?」
聞かれて、ちょっと、自分の服装を確認する母さまです、
これは濡れたらちょっと困るかしら?
と、確認をするように周囲を見てみます、
無駄に色気のある流し目をしてみると、
護衛も兼ねている男手の方が、ちょっと顔を赤らめて、
困ってしまっています。
「やめときますわー、
水に濡れたら、困る人がいそうですものー」
のほほんと応えを返す母さまです、
「おー、じゃあ、父じゃが、まいろーか」
陽気な声を響かせて、庭の向こう、立木の間から、
蛙父の、ナマズ髭親父がぬっと現れます。
「とーさま、うれしーです、
どーぞきてくださーい」
立ち泳ぎも上手に水に浮かんで、手招きをする、幼女蛙です、
そこへむかって、すぽーんと、着物を脱いで、
飛び込む、ちょっと小太り、鯰髭親父でございまして、
誰得なもっちり肢体を見せつけつつ、
身をくねらせます。
ぽん、と、気の抜けるような音と共に、水の中で変身です、
想像を裏切らぬ、大鯰へと姿を変えてた、蛙姫親父です、
ちょっとややこしいですね?
「おー、とーさまじょーずです」
ぱちぱちと、ひれつきの手のひらを打ち鳴らして、
褒める蛙姫です。
「わはは、ナダもすぐに上手に変身できるようになるぞー、
わしらの血が流れているからなぁー」
ちょっと間伸びした返答をしながら、スイスイと泳ぐ、
鯰親父です。
そーれーとばかりに、大鯰の背中に、蛙姫を乗せまして、
縦横無尽に泳ぎ回ります、
それはもう、力の限り、
たまの休みで、全力で娘の相手をしたがる、
親馬鹿親父の、調子乗りでありまして、
水がもう、大波小波で、ばっさばっさ、
「あなた、やりすぎです」
池の近くで眺めていた、蛙母親を、びしょ濡れにさせてしまい、
反省させられる、蛙親父の大鯰でございました、
ええまあ、水に濡れて色々と透けてしまって、
とてもよい感じな母さまでありまして、
男衆は、後ろを向いて前かがみになってしまいましたとさ。
蛙ちゃんの二年目はこんな感じで過ぎていきました。