004_蛙ちゃんの一年目
祖霊がえりのナダ嬢ちゃん、
お玉杓子に足が生え、
腕が生えつつ、尻尾消え、
緑のお肌の雨蛙、但し、一歳児平均という、
可愛らしい赤ちゃんになりました。
「可愛くはあるのかしら?ある意味?」
げこ?
無邪気に笑うような感じの鳴き声です。
「表情が読みにくいのよね、やはり類が違う、
姿種族が違うから」
喜んでいるようには思えるのだけども?
蛙ちゃんの母は、のんのんと観察しています。
相変わらず、美人で、妖艶で、艶やかで、色っぽいです、
服が水に濡れているので、身体に張り付いて、
実にけしからんですね。
赤ん坊であるのでお乳をあげています、
お玉杓子の時は、水に乳をつけて吸わせていたようです、
乳母も用意されていたのですが、
祖霊がえりの赤ん坊には、実の母による授乳が、
ある程度求められる、という記述が、
歴史書というか、産婆とか産医のあんちょこにあり、
蛙ちゃん母も、子育てに絶賛参加中です。
「まあ、自分のお乳を上げるのは、ちょっと面白いので、
良いのですけど?」
蛙には歯がないので噛まれる心配もないのも良いわね、
いやまあ、そもそも、野の蛙は母乳では育たないわけですけれども。
蛙の体型ですが、季節の花をあしらった、着物を着せてあります、
じっとりと濡れていますが、見苦しくありません、
むしろ、湿り気があることによって完成される美が、
あったりなかったり?
「濡れても良い素材で、可愛らしい服を作らせてみたが成功だなぁ」
蛙ちゃんの父です、ナマズ髭の、小太り男ですね、
どことなく鯰に似ています。
ナダちゃん、喃語ではありますが、うみゃうみゃと言葉を発しています、
そのうちに、幼児言葉を喋るのでしょう、
好奇心も旺盛なようで、手足が生えてからは、結構あちらこちらへと、
振り回し、つかみ放し、舐めまわし、跳ね回っています、
ええまあ、蛙ですし。
赤ん坊でも、跳ねます、なので、体は苦しくないように加減はしていますが、
ひもで結ばれています。
大人の顔くらいの高さまでは、実は跳んでしまうので、
目が離せないのですね。
「舌も結構伸びますねー」
「第三の手みたいじゃなぁ」
自身の身長の三倍近くを伸ばすことができるので、
近くにはケガをさせるようなものは置けないわけです。
「別に昆虫食が好きというわけではないのは、助かりますわね」
「ほんにのう、まあ、乳で育つわけじゃし、その辺りは、人寄りの嗜好なんじゃろうな」
食べて食べれないわけではなさそうですが、
生き餌を用意するのはちょっと大変ですし、
祖霊かえりとはいえ、一緒の内容でお食事はしたいですよね、
と、二人して、話す夫婦でありました。
げこり、と、ナダ嬢が、返事をするように鳴きました。
蛙ちゃんの一年目、でした。