034_蛙ちゃんのまあよくある愛憎劇。
婚約者がいるのに求婚してくる輩ってやはり問題があるのでは?
「もてますね姫様」
顔に傷がある色眼鏡の侍女が誉めてます、
誉めてます?
「火鼠の衣とか蓬莱の珠とか要求しようかしら?」
竹取の翁の姫様じゃあないのですから、
ちなみに、その物語はこの界隈では結構有名ではありまして、
最終決戦が、月面で、巨大な絡繰巨人像が、
長大な戦刀を振り翳して、
侵略者の巨人を切り裂いていくという、
終盤の筋立てが、人気を博し、
有名監督による、劇場版が作られ、
そこそこの興行成績を誇ったそうであります、
外国では涙が止まらないかったとか、なんとか?
「現在は月なんてとても行けるものじゃないですからね」
「一応神術と真言術との合わせ技で、
比較的安価に第一宇宙速度くらいは突破できるそうですよ?
大体、月は内の実家があるところですし、
まあ、一回くらいは里帰りもしたいですね」
兎娘がちょっと楽しそうに言います。
「だからよ、誰が、道を歩いているだけで、
首が落ちることを気にしなければならないような、
戦闘民族のお里に気軽に行きたいと思うのよ?」
冷静に突っ込む蛙姫です。
「観光用の街もありますよ?
そこでは首の落ちる速さが軽減されています、
大体、六分の一くらいですかね〜」
けろりんと言い募る兎娘、
いや、落とす速さとかを減らすのではなく、
落とす頻度を減らしてほしいというか、
落とすなと言いたいわけでありますが。
「そもそも重力が低いだけでしょうが?」
呆れた声を上げる姫様でございます。
「冗談はともかく、
いや冗談だよわね?
気軽に首が落ちるとか落ちないとか、
おちおち喧嘩もできないのだけども」
ちょっと心配になる姫様です。
「昔は首がなかったので、欲求が抑えられていましたけど、
姫様、変化がうまくなりましたので、
こう、うなじあたりに隙が伺えると、こう、
好きってなります」
綺麗で透明な笑顔です、目も笑っているので、これは本気だなという、
気持ちが伝わってきます、伝わりたくないです。
「落として良い首はまた知らせるので、
それまでは我慢してくださいね、
ああ、そうね、
求婚してきた、無頼漢なら、落としても良いかも?」
さらりとした怖い台詞な姫様です。
「だめです、少なくとも、他人に知られる前じゃないと、
もみ消すのは結構費用がかかるのですよ?」
倫理観的な問題じゃないところが、ちょっと現実的ではあります、
そのように指摘する侍女さんです。
あー、残念そうな顔ですね、
もう少しで切り離せたのになぁとか、
首元に伸びた、鋭い刃物は引っ込めましょうね、
ちょっと切れてるかな?
ガマの油つけます?
お安くしておきますよ?
あー、すごい勢いで、ころびまろびつ逃げていきましたね、
正しく脱兎のごとく。
「うさぎはこっちですよ?」
「まあ、おバカではあるのですよね、
ういやつ、よしよし、お前はかわいいねぇ」
誉められたとにこやかになるのは、
なんだかちょっと人格が違っているのではなかろうかなとか、
冷静に突っ込みを入れる、侍女さんでございました。
つまりこれが、かえるちゃんの愛憎劇かっこ笑でした。




