003_蛇くんの一年目
もうすでに赤ん坊ではなくなっている蛇くんこと、ナギ少年です。
見た目は三歳児くらいでしょうか、
先日1歳の誕生日を迎えました、
白に近い銀の髪を、長めのまままとめて、
馬の尻尾のようにうなじあたりで。
肌色は白、
目の色は翠、
母親似で少し女顔っぽいですが、
いやまあ、母親は結構漢らしい感じですので、
凛々しい美少女のような、美少年でしょうか?
「神の血が入っているから、成長が早いなぁ」
呑気に言う母親です。
「成長速度は蛇に引かれているのかな?
あと、多分、人種を超えている母親の影響でもあるぞ?」
人形に変身している父親の、蛇神様ものほほんと、応じます。
一歳児のナギ少年、その言葉を耳にしながら、
風音も大きく、長柄ものを振り回しています。
「戟かな?」
「大陸からの流れものでな、小太鼓がわりに渡したら、
嬉々として振り回しおる」
呵呵大笑、かんらかんらと、笑っています、
大人の身の丈、それもまあ大きい方の長さの、戟を、
形も何もなく無邪気に振り回している幼児を、肴に、
一献やってる夫婦です。
「どれ、ちょっとみとけや、坊よ、
長柄ものはこう振るんだぞ」
どこらかともなく取り出した、朱色の槍を、
見事に操り演舞にも似ていますが、
結構実践的な動きを、手本に見せる、
母親です。
いや、ちょっと酔っている割には、
なかなか見事の技まえ、
お見事でございます。
ナギ坊や、母の手本を、見よう見まねで、
戟を振い始めます、
徐々に様になっていくあたり、
常識はずれというか、
神の眷属としては妥当というか、
いやはや、先が楽しみな、一歳児でございます。
「どれ、相手が追った方が面白かろう」
父神、止めもせず、遊びに拍車をかけていきます、
座した地面に軽く手をつき、
指先で軽く、土を叩くと、
埴輪にも似た、土人形が生えてきて、動き出します、
ゾロゾロです、複数です、
結構機敏に動きながら、襲い掛かっていきます、
一歳児に対して、容赦がありません。
で、とうのナギ少年、嬉々として対戦していきます、
ないでこかせてついて、跳んで、
払って吹き飛ばして、正面から割って、
くるりと回して、こづいて、崩して、
蹴り飛ばして、投げ飛ばして、
前へ後ろへと、間合いをはずして、
いやそれはもう、踊るように、舞うように。
手本を見せる母親通りに、動いてみせるという。
「おお、これは良い戦士になるぞ!」
親バカな母親でございますが、
まあ、血筋と申しますか、
遺伝と申しますか、
環境もよろしいので、
少なくとも、達人に近いところまでは、
いくのではなかろうかなという。
「いかん少々埃っぽいな」
崩れていく土人形からの土埃に辟易し、
軽く手を叩いて、水をまく、蛇神様でありました。
「もうちょい大きめなのが欲しいなー」
ほざく母者に対して、
お庭で遊ぶのも程々にしていただけませんか、と、
お世話がかりの爺に叱られる、お二人でございました。
蛇くんの一年目、でした。