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016_蛙ちゃんの七年目

 絶賛誘拐犯に拉致監禁中な蛙ちゃんこと、ナダ姫さんです。


 どうしてこうなった?


 お忍びで街中ぶらぶら観光というか買い物中、

 お供は幼なじみのうさみみ少女、と、侍女一名、

 天気はちょっと曇り気味、なのでしっとりお肌に良い天気、

 蛙姫はご機嫌な感じです。

 いえまあ、今、幼児大の蛙では無いのですが。


 ナダ姫、

 変身術を覚えたので、

 ちょっとふっくら蛙顔の可愛らしい少女になっています。


 この都、治安はそれほど悪くなく、

 衛士とかお巡りさん的な、公僕が、

 要所要所交番的なところに詰めているわけで、

 身分がちょっと高めの方々も、

 それほど危険を感じずに、

 外歩きができるという感じではあります、

 まあその分、目が届かないところは結構危険なのですが。

 馬車は広い道でしか使用が禁じられています、

 というか珍しいです。

 多いのは、牛車で、

 結構のんびりと道を進んでいたりします。


 ナダ姫さま一行は徒歩ですが、

 こう、小売のお店を冷やかしていく感じでありまして、

 小物とか甘味とか、化粧品とかを、

 眺めて楽しんでいるような感じでした。


 そして綺麗にはぐれる姫様でありまして、

 その後、流れるように路地裏で、

 人攫いに出会うわけです、

 対象は姫ではなく、まあ、目撃者として、巻き込まれ、

 ついでに攫われるような感じですが。


「というわけで、現在、牢屋に閉じ込められているのです」

 手元の蛙人形に話しかけているナダ姫様です。

「誰に説明しているの?」

 一緒に攫われた、というか、誘拐現場に出くわした少女が、

 思わず呟きます。

「まあ、思考をまとめるための技術だね、

 それにしても、手足も縛らず、

 格子はあるのに、見張りもいない、

 練度低いんじゃ無いのでしょうかね?」

 胴体の上にそのまま乗っているような顔をかしげる姫様。

「冷静ね?」

「まあ、色々あるのよ、ええ」

 曖昧に答える姫様です。


 と、

 げこ、という鳴き声がします、

 小さな声です、

 げこ、げこ、とそれが増えます、

 げこ、げーこ、げろげろ、げーこ、

 あっちでもこっちでも、

 暗い牢の影から、蛙の鳴き声が聞こえ出し、

 ぞろぞろ、ぴょこぴょこと、姿を表します、

 数十匹の蛙たち。


「なるほど」姫様頷きます。

「えー?」突然の怪異にうめき声しか上がらない攫われ少女。


「現在、対抗勢力?敵対勢力?の一団が、

 この誘拐組織の根城にかちこみを仕掛けたそうです、

 混乱に乗じて脱出すると致しましょう」

「蛙と話せるの!というかどこから来たのこの蛙たち!」

「まあ、私の眷属ですから?」ゲロっと変身術を解き、蛙顔になる姫様、

 ベロンと、攫われ少女の顔を長い舌で舐めます。


「気絶するほどですかね?珍しい反応です」淡々と感想を述べる姫様。


 その後、眷属の蛙部隊と、姫様の蛙としての身体能力を、

 適度に駆使して、牢を抜け出し、 

 攫われ少女は、一応百匹の蛙に担がせて、ぞぞぞと、一緒に運んでいきます、

 安全圏まで脱出して、屋敷に帰還して、

 しっかり叱られて、反省のために座敷牢に入れられる姫様です。


「おかしい、なんでまた牢にいるのでしょう?」


 ある意味いつものやらかしで、牢屋にいることがなれているからこその、

 この流れだったのかも知れません。

 

 かえるちゃんの七年目はこんな感じでございます。

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