001_蛇くん生まれる
初夏の午後、男の子が生まれる、
母子ともに健康、
というか、母親は無駄に元気である、
肉体的にも精神的にもタフなやつ、
人間を超えた人間的な、サムシング、
超人とかいうカテゴリな、母親で、
大柄な、迫力のある美人であり、
疲労回復やら、傷の回復やらも規格外であるわけで、
超安産。
父もまた規格外、というか人外、
都から遠く離れた場所に住む、
一柱の神様、
多頭大蛇、広大な領域、巨山と長川を治める、土地に根ざした神様、
国神という立ち位置であり、心やさしき、いやまあ、
結構理不尽なところもあるけれど、
まあ、神様だしな、で流されるくらいには、
豪放磊落な、性格、
女好きで、酒好きで、あるけれど、
きちんと祀られていれば、悪さはしないし、
益も大きい。
で、その間に生まれた男の子、
姿は、普通の赤ん坊、
いや、ぬらりとその肌に、
蛇の鱗が光って見えたり、
目の虹彩が縦に細かったり、
鳴き声が、蛇の威嚇音だったり、
その際に見える舌が長く、先端が割れていたりする、
程度ではあるけれども、まあ、おおむね、人型であります。
「卵で出てくると思ってたね」
「この子は人寄りだなぁ」
呑気な夫婦の会話、
巨大な蛇身を、変化の術で持ってして、
ちょと大柄な人型に変えて、
産屋?とか寝室?とかの場所で、
可愛らしい我が子を愛でつつ、
観察していく二人。
荒ぶる神様を都らか討伐に来た、超級の術戦士と、
討伐対象だった、蛇神様、
なんやかんやあって、
夫婦になりました。
なんでや?
こう河原で殴り合って友情が芽生えたみたいな?
話し合いなんて野蛮なことはやめて、
健全に暴力で決着をつけようが、
うまくはまった感覚での、決着であり、
まあ、良い子は、真似はしないほうが良いような、
流れではありました。
いや、なんでや?
まあ、男女の中はかように複雑怪奇という、
いやまあ、怪奇というよりは、
大怪獣決戦であった、という意見もチラリほらり。
ともあれ、今は、とても仲の良い、夫婦でございまして、
子供の名前付に四苦八苦しております。
名前はどうしようかね?
蛇くんじゃだめかな?
奥様、相変わらず名付けの才能がないなぁ。
わかりやすくて良いじゃないか?
気質が、綺麗に分布しているなぁ、
人の血が混ざっているので、偏りがないねぇ、
ああそうだ、それならば、
「ナギ、と命名しよう、そうしよう」
蛇くん、改め、ナギくん誕生です。