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【チャラ男視点】高校デビュー

 あれから、あの公園に何度も足を運んだが、女の子を見かけることはなかった。

 そうこうしているうちに桜が咲き、春になった。

 まぁ、いいさ。高校はあの公園から近いし、ちょこちょこ学校帰りに寄ってみよう。


 俺がそんなことを考えながら歩いていると、俺の顔をのぞき込むように並んで歩く人間と目が合った。


「うわ! やっぱり巧真かぁ! え、何その髪の色!?」

 智也が目を丸くして、こっちを見ていた。


 俺は自分の金色の髪を摘まみながら笑った。

「いい色だろ! 俺、今日からチャラくなることにしたんだよ」


「……は?」

 智也が意味がわからないという顔で俺を見た。


「話しかけてくる相手とだけ話すから、思わせぶりなんて言われるんだろう? それなら、最初からみんなに話しかけて思わせぶりな態度をとっておけばいいんだよ。そうしたら、自分だけ特別なんて思い込まないだろう?」

 俺はふふんと鼻を鳴らす。


 智也は唖然とした顔をしていたが、俺は無視することにした。


「おまえ……、まだそんなこと気にしてたのか……? 巧真ってときどき……びっくりするほど……アホなことするよな……」

 呆れ顔の智也を見て、俺は思わずムッとする。

「アホは言い過ぎだろ」


「いやいや、アホだろ! 今日は入学式だぞ! そんな髪で式に出席させてもらえるのか!? 一応進学校だぞ!?」

「地毛ってことにするから大丈夫だ」

「地毛じゃねぇだろ!」

「大丈夫だよ、帰国子女だし」

「いやいや、外国に住んでただけで、おまえの両親バリバリの日本人じゃねぇか!」

「まぁ、隔世遺伝ってことにしておくさ」

「だから、じいちゃんもばあちゃんも、みんな日本人だろって!」

「大丈夫だ。この高校の中で、中学からの俺を知ってるのはおまえだけだ。おまえさえ黙っていればバレないから」

「マジでどうかしてる……。だいたい入試のときは黒髪だっただろ……」

「あのときは、黒染めしてたってことにするさ」

「それなら、入学式も染めてこいよって話しになると思うけど、もういい……。考えるのも面倒くさい……。おまえの好きにしろ……」

 智也は諦めたようにため息をついた。


「だいたいチャラくなるだけなら金髪にする必要ないだろ……」

 智也はチラッと俺の髪を見た。

「いやぁ、日本でチャラい男といえば金髪だろ」

 俺は得意げに言った。

「とんだ偏見だな……。おまえ、日本について勉強してから帰ってきた方がよかったんじゃないか……?」

「勉強したさ! 漫画で! 恋愛の当て馬キャラはだいたい優しげな雰囲気の金髪男だろ?」

 俺の言葉に、なぜか智也は引いていた。

「……もういい。好きにしてくれ……」


「ああ、好きにするさ。こういうの高校デビューっていうんだろ?」

「ああ……、うん……。そうだな……」


 智也の諦めたような口調は少し気になったが、俺は桜が舞い散る中、意気揚々と高校の門をくぐった。

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