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【チャラ男視点】出会い

 ここまで来たら学校のやつらにも会わないだろう。


 学校から距離のある公園まで歩いてきた俺は、ベンチに腰かけるとため息をついた。

「思わせぶりねぇ……。俺にどうしろっていうんだよ……」

 空を見上げると、ゆっくりと雲が流れいた。


 最近暖かくなってきていたが、風はまだまだ冷たい。

 公園にはすべり台やブランコといった遊具があったが、寒いせいか、昼過ぎという時間のせいか遊んでいる子どもはいなかった。

 公園にいたのは犬の散歩をするおばあさんと、ベンチに腰かけて休憩しているサラリーマン風の男だけだった。


 のどかだな……。

 もう一度空を見上げて、流れていく雲を見つめる。

 このまま昼寝でもしてから帰るか……。


 そんなことを考えていたとき、ふいに女の子の声が公園に響いた。


「か、可愛い~! 撫でてもいいですか!?」


 視線を動かすと、犬の散歩をしていたおばあさんの前に、髪の長い女の子が立っていた。

 遠目ではっきりとはわからないが、たぶん俺と同い年くらいの子だろう。


 あの子もサボり……? なわけないか……。

 女の子は、制服の俺とは違い、Tシャツにデニムというラフな服装だった。

 こっちの方の学校は休み……なのかな?


 女の子はおばあさんがうなずくのを見ると、しゃがみ込んで犬と戯れていた。


 犬……好きなんだな……。

 まぁ、どうでもいいか……。


 しばらく犬と遊んでいた女の子は、満足したのか立ち上がると、犬とおばあさんに手を振った。


 あ、こっちに来る……。


 ぼんやりと女の子を目で追っていた俺は、こちらに向かってきた女の子と目が合った。


 近づいてきてようやくわかったが、犬に抱きつかれていた女の子の胸元は、犬の足跡がついて泥だらけになっていた。


 ああ、昨日の雨で道がぬかるんでたもんな……。


 そんなことを考えていると、俺の視線に気づいた女の子が、自分のTシャツを見下ろした。

 女の子はそこで初めて泥だらけになっていることに気づいたようで、一瞬目を丸くすると、こちらを見た。


 女の子は俺に見られて気まずそうにしていたが、少し頬を赤くして恥ずかしそうに微笑むと、ペコリと会釈した。



 胸がドキリと音を立てた。

 顔が熱くなっていくのを感じて、慌てて下を向く。



 何あれ……! か、可愛い……!!



 顔の熱が引いて俺が顔を上げたとき、女の子はもう視界から消えていた。



 可愛かったな……あの子……。

 声くらい掛ければよかった……。


 手ぶらで歩いていたところを見ると、この近所に住んでいる子なのだろう。

 しかし、本当にそれ以外何もわからなかった。

 思わずため息がもれる。


「また……会えるかな……」


 俺は自分でも気がつかないうちにベンチから立ち上がり、そう呟いていた。

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