【チャラ男視点】思わせぶりな男
3月中に完結と言っていたのに4月になってしまいました。゜(゜´ω`゜)゜。
4月中には完結したいと思います!
どうぞよろしくお願いいたします!!
【3年前】
「泣いちゃってごめんなさい……。でも、気持ちがないなら思わせぶりな態度は取らないでほしかったな……」
目の前で泣き出した子を前に、俺はただただ呆然としていた。
……は? 思わせぶり? 俺、なんかしたっけ??
「ごめんね……。じゃあ、私……もう行くね」
涙を拭いながらドラマのワンシーンのように去っていく子を見送りながら、思わずため息をついた。
「何なんだ……、一体……」
中学の卒業式を目前に控えた昼下がり、校舎裏に呼び出されたので来てみれば、予想通りの告白で、断って泣かれ、今回は思わせぶりと恨み言まで言われた……。
思わせぶりは初めてとして、これ何回目だよ。6回? いや7、8回目だったか……?
みんなで示し合わせたように同じことをするって、隠れて俺のこと笑ってるのか?
辺りを見回してみたが、誰かいる気配はなかった。
思わずため息がもれる。
「だいたい思わせぶりってなんだよ……。何なんだ? これが文化の違い?」
確かに中2の途中から日本に来て、多少の文化の違いは感じたけど、そもそも両親は日本人だし、家の中では日本語だったし、ニュアンスを間違えて思わせぶりなこと言ったとかもないはずだ。
「もう今日午後の授業サボろうかな……」
まぁ、サボるにしても、一旦教室に戻らないと……。
幸い、今告白してきた子は違うクラスだし、顔を合わせることはないだろう。
教室に戻るため校舎に入って廊下を歩きながら、俺はもう一度ため息をついた。
これ、あと何回あるのかな……。
そのとき、勢いよく背中を叩かれ、前のめりになった。
「痛っ!」
思わず後ろを軽く睨むと、想像通りの人物が立っていた。
「何ため息ついてんだよ、幸せが逃げるぞ」
智也はまったく悪びれる様子もなく、笑顔で言った。
「どうした? また告白でもされたか?」
智也は楽しそうに俺の顔をのぞき込む。
智也は、俺が転校してきてすぐ親しくなったクラスメイトだった。
中2、中3と連続で同じクラスになり、自然と一緒にいることが多くなった。
活発で親しみやすい雰囲気から、クラスでも輪の中心にいることが多く、爽やかな笑顔に騙されるのか、智也を嫌いなやつはいないというくらいの人気ぶりだ。
俺は鼻を鳴らすと、智也を無視して歩き出した。
「当たりか。おまえもよくやるねぇ」
智也は俺と並んで歩き出す。
俺は思わずムッとした顔で智也を見た。
「俺は何もやってない」
「どうせ、またフッて泣かせたんだろ? ホント罪作りな男だねぇ」
智也がおかしそうに笑った。
俺は智也を軽く睨んだ後、思わず息をはいた。
「思わせぶりなことするなだってさ……。俺が何したっていうんだよ」
智也が俺の肩を軽く叩く。
「同情はするけどさ……。まぁ、わからなくはないなぁ。おまえ硬派っぽいキャラなくせに、話しかけてみるとよく笑うし距離が近いから」
「それが普通だろ? 話しかけられてるのに、無表情で距離をとってから話し始めるやつなんているか?」
言われている言葉の意味がわからなかった。
「まぁ、そうなんだけどさ。おまえ顔がいいから、ちょっとした反応で相手が期待しちゃうってことだよ。そんなにしゃべるイメージがないおまえが、自分には笑いながらたくさん話してくれるってなると『ああ! この人、私に気があるんだ!』って思うんじゃねぇの?」
俺は呆れた顔で智也を見る。
「そんなの俺にどうしろっていうんだよ……。誰とも話さず、笑うなってことか?」
「そうは言ってないけどさ……。う~ん、困るよなぁ」
智也はまったく困ってなさそうに言った。
こいつ、ひとごとだと思って……。
「もういい。俺はもう帰る。腹が痛くなったから帰ったとでも伝えといてくれ」
「サボりか。まぁ、いいけど。この借りは高くつくからな」
「了解。ちゃんと覚えとく。じゃあ、頼んだぞ」
俺は智也に後のことを任せ、具合が悪そうな演技をしながら荷物をまとめた。
一応、優等生で通っている俺は、バレることなく午後の授業をサボることに成功した。




