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チャラい先輩の告白

「俺と付き合ってよ」

 キメ顔の男が、行く手をさえぎるように壁に手をつけてこちらを見た。


 え……? 誰……?

 っていうか、なんでこんな廊下で突然!?


 授業が終わったばかりということもあり、教室から続々とクラスの子たちが出てきていた。

 まぁまぁの声のボリュームで言ってくれたおかげで、私は今、注目の的だ。


 新手のいじめなの?

 思わず、キメ顔の男を睨む。


 男は何を勘違いしたのか、にっこりと微笑んだ。

「どう? 付き合ってくれる?」

 男が首をかしげると、窓から差し込む光で耳につけている金のピアスがキラリと光った。

 光りを浴びているせいか、金髪の髪もキラキラしている。

 切れ長の二重の目は長いまつ毛に縁取られ、色素の薄い瞳はやたらと輝いていた。

 メイクもしてないのに、なんでこんな華やかなんだ?


「ねぇ、聞こえてる?」

 男は首を傾けて、私の顔をのぞきこんだ。

 傾げた首筋が妙に色っぽい。

 その瞬間、背後でキャ―という黄色い悲鳴があがった。


 男は悲鳴をあげた女生徒たちの方に視線を向けると、にっこり笑って手を振った。

 女生徒を見てみると、顔を真っ赤にして崩れ落ちている。


 うん、わかった。間違いない。こいつはチャラ男だ。

 冗談かもしれないけど、とりあえず丁重にお断りしよう!

 私はそう心を決めて男を見つめる。


「気持ちは嬉しいんですが、お断りします」

 私は申し訳なさそうな顔をつくってそう言うと、さりげなく男の横を通り過ぎようとした。

 すると、何が起こったのかわからない素早さで、男に肩を抱かれる。

「……え?」

 思わず顔が引きつった。



「わかったよ。お友達からってやつだね」

 男はキラキラした笑顔で至近距離から私を見つめた。

「え……、私お友達からって言いましたっけ……?」

「気持ちは嬉しいって言ったでしょ?」

 男はニコニコしている。

「あ……社交辞令とかわからない人でした……? 私は……」

「これからよろしくね」

 私の言葉をさえぎるように、男は私の手を握って言った。


 反論しようとした私は、ふと周囲の様子に気づいた。

 そうか……こんなにみんなが見てる前で振ったら嫌だよね……。

 あとでちゃんと言おう。

 そう決めると、私は握られている手を振りほどき、抱かれている肩の手もそっとどかした。



「そうですね……。お友達としてよろしくお願いします。えっと……名前を聞いてもいいですか?」

 後で話しをしようにも名前すらわからない状態では、どうしようもない。


「俺は3-Cの石神巧真(いしがみたくま)だよ。紗綾(さや)ちゃんの一個上」

「さ、さやちゃん……!? あ、……やっぱり先輩だったんですね。じゃあ、放課後に教室に行きますから、そのときにゆっくり話しましょう?」

 私はなんとか笑顔をつくって言った。

「紗綾ちゃんが来てくれるの? 嬉しいなぁ。でも、俺がこっちに迎えに来るよ。どうせなら一緒に帰ろう?」

 先輩はにっこりとそう言うと、私の耳元に口を寄せた。

「二人きりでね」


 鳥肌が立った。

 だが、後ろにいた女生徒たちからはまた黄色い悲鳴があがった。


「あ、はい……。じゃあ……待ってます」

 かなり引きつっていると思われる笑顔でそれだけ言うと、逃げるように自分の教室に戻った。


「うん! また後でね~」

 後ろで先輩の声が聞こえた。


 教室という避難所には入ったが、教室の窓からこっそりとこちらを見ていたクラスの子たちの視線は一斉にこちらに向けられた。


 もう……勘弁してよ……。

 私は泣きそうになりながら、急いで自分の席に戻り、鞄からイヤフォンを取り出して耳につける。

 音楽を聴いているふりをしながら、私は机に突っ伏して静かに目を閉じた。

 


 今日は一日、授業以外はこうやってやり過ごそう……。

 ああ、ホント最悪……。 

 あのわけのわからない男のせいで……。

 私はため息をついて、放課後になんと言って断るかを考えていた。

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