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女神の代理人の恋愛事情  作者: JUN
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聖女

 イミアが家に帰ると、ちょうど子供が無事に成長しますようにという5歳の祈祷に来ていた客が帰って行くところだった。

「ああ、お帰り、イミア」

「ただいま」

 言いながら、帰って行く親子を見送る。

「最近は、祈祷も減ったなあ」

 ルイスがポツンと言った。

 お守りも、以前ほど売れない。

 この国には国教はないが、古くからカミヨが取り行う神事や祈祷で女神の恩寵を得るというのが国教と同義だった。

 しかし、隣国で発生した「エリノア教」という女神エリノアを祀る宗教が広まりつつある。

 エリノア教では、「ああ、エリノア様」と唱えて教会で売っている護符を身につけていれば願いは全て叶うとされているほか、悪い事も、教会で売っている免罪符を買って身につけていれば許される、とされていた。

 貴族の一部も国民も、そのわかりやすい教えに心を引かれたのか、急速にこのランギルでも受け入れられ、教会が建てられ始めていた。

「エリノア教ね。護符を買えば何でも願いが叶う?免罪符を買えば何でも許される?胡散臭いと思わないのかしらね」

 イミアはそう言うが、ルイスは気弱な笑みを浮かべた。

「エリノア教では聖女認定された女性がいて、特別料金を払うと、聖女直々にそれを授けてくれるらしいよ。

 いやあ、効きそうだよね、何か」

「そんなわけないでしょ。どこからどう見ても、詐欺師っぽい手口じゃない」

 イミアは眉をしかめ、ルイスと並んで家に入った。


 アレクサンダーとミリスは、エリノア教の大司教と面談していた。

「これは見事だな」

 大司教が手土産に持って来た西方の貴重な鉱石を前に、アレクサンダーとミリスは相好を崩した。

「はい。殿下の立太子のお祝いですので」

 大司教はそう言い、笑顔を浮べた。

「うむ。エリノア教だな。聞いているぞ。護符を買えば願いを叶え、免罪符を買えば罪を許されるそうだな。

 しかし、どんな願いでも叶うのか?」

 アレクサンダーが訊くと、大司教は尤もらしく頷いた。

「はい。

 とは言いましても、簡単ではございませんよ。他愛もない願いであれば、護符1枚でも叶いましょう。しかし願いが大きくなればなるほど、或いは困難であればあるほど、必要な護符の枚数は上がるでしょう。

 何枚で叶うのかは、エリノア様の御心次第でございますから」

 アレクサンダーはフムフムと頷いた。

「なるほどなあ」

「それと、お願いがございまして。エリノア教では聖女と認定する方に、言わばエリノア様の身代わりを務めていただくのです。それは誰でも可能というわけではございません。それに見合うだけの品格や美しさなどが求められます。

 このランギル皇国の聖女を、ミリス様に勤めていただきたく」

 ミリスの目がギラリと光った。

「まあ、私がエリノア様の代わりを務める聖女に?」

 アレクサンダーはウウムと唸った。

「ミリスの美しさならばそれは当然だな。

 女神の代理か。いいぞ。そうなれば、カミヨはもういらないな。あんなわけのわからない決まりなど、守らなくてもいい。

 よし、わかった。ミリスを聖女にしろ。私が皇帝になったら、エリノア教を国教にしてやろう」

「ははっ!」

 大司教は頭を下げ、ミリスとアレクサンダーは上機嫌に未来を夢見始めた。








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