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30話・終わり

 翌日、目を腫らしたステラに何事かと慌てたシェリアとリースだったが、困ったような嬉しそうな表情をしたステラと、こちらは一目で上機嫌とわかるラキトがこれから指輪を買いに行くのだと言い出して、ついでに昨日婚約したのだと告げられて、一気に脱力したのはここだけの話である。






「あーあ、ラキト様ったら、先生を手に入れられて本当にもう、浮かれちゃって……」


 皇宮でドジ、しないといいんだけど。

 意外とそそっかしいのよねぇ。とため息を吐きながらぺらぺらと魔術書を捲るシェリアの横で、朝の鍛練と朝食を終え、精霊術書と格闘していたリースはでも、と言葉を繋げた。


「すっげーうれしそうだから、いいんじゃね?」

「まーね」

「……そういえばさ、完全に好奇心なんだけど……シェリアって師匠たちの出会い、とか知ってる、か?」


 恐る恐る口に出してみれば、魔術書を流し読みしていたシェリアが顔を上げた。なぜか不自然に跳ねる心臓を押さえつけてシェリアを見つめれば、リースがプレゼントしたイヤリングがころりとゆれる。シェリアがこてんと首を傾げたのだ。


「惚気なら何度も聞いてるわよ?確か、先生が泣いているときにたまたまラキト様が出くわして、そのまま一目惚れ。泣いてる顔も可愛かったとかマニアックなこといってたけど……まぁ、その後色々あったみたいでね。ほら、この国って魔術師の地位低いじゃない。名門貴族の跡取りなのに魔術師ってだけで後ろ指を指されてたラキト様をせせら笑うやつらを先生がばったばったと切り倒していってさらに惚れ直して……あとエピソードなにがあったかなぁ」


 多すぎて覚えてられないわー、と呟いて、ふと窓の外にシェリアは視線を投げる。そこにはラキトがステラに喜んでもらいたい一心で屋敷に植えたカッツペラオの大群。桃色が大半を占めるのは、これまたステラの嗜好だ。

 ステラ自身は隠したがるが、ステラは桃色や橙色など暖色系で可愛いものが好きな傾向がある。

ラキトがカッツペラオの世話だけは庭師にはさせず自ら行っている姿をシェリアはずっとみてきた。だからようやく実った恩人の片思いを喜ばしくも思うのだが、こうも浮かれきった様子だと呆れもするし心配にもなる。

 風に揺れる桃色のカッツペラオを遠目に見ながら、シェリアは独り言のように呟いた。


「ほんと、嫌になるくらいラブラブよねぇ。あーもう、私も素敵な王子様、こないかなぁ」


 その言葉に、唐突にリースが精霊術書に顔を突っ伏して「アンタなにやってるの」とシェリアに呆れられたのも、まぁ、別の話ということにしておこう。


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