034 交渉と決意
※残酷な表現、不愉快な描写が含まれていますので閲覧する際は注意をお願い致します。
昨日は、フォレストコッコの捕獲に夢中になり、教会へと帰る時間が夜遅くなってしまった。
教会付近では電灯が無い為、一八時を過ぎると外は真っ暗になり、すっかり真夜中なのだ。
それに篭の中にフォレストコッコがいた事で驚かれた。
教会の皆は、これが食べられる物だと解っておらず、「そんな物を拾ってどうするんだ?うるさいだけだろう!」や「直ぐに山に戻して来なさい!」と、メリルとメリダに酷く怒られた。
アナスターシアはどんな時でもそうだが、「ルシウスの自由で良いのよ」と、なんの疑いも無く好きにさせてくれる。
流石はお母様。
心が宇宙のように広い。
でも、メリルとメリダは、その意思を簡単に曲げない。
だが、此処で僕が引いたら教会の食事事情は変わらないままだ。
「メリル様にメリダ様。どうか聞いて下さい。このフォレストコッコは食べる事が出来るものです。それも、街で購入をしたお肉よりも美味しく召し上がる事が」
前回、街で購入したお肉は鮮度が最悪な物だった。
保存状況も状態も悪いし、お肉としての品質が最悪だった。
だが、その場で捌く事が出来れば、それら全てを解決出来てしまうのだ。
「どうか、一度で良いので召し上がって下さい。お願い致します」
僕は頭を下げて、真剣にお願いをする。
普段なら怒られた事に対して直ぐに引き下がる訳だが、今回はそう言う訳にはいかないからだ。
そして、その思いや誠意が伝わったのか、二人は「解った。一度だけなら、食べてやろう」と「解りました。ですが、私はそのフォレストコッコの調理が出来る訳ではあえいません。ルシウス、貴方が全てを用意するのですよ」と、メリルとメリダが了承をしてくれた。
良かった。
これで栄養面でも食事の改善が出来るのだから。
「では、フォレストコッコを捌く事になりますので、別室で作業をさせて貰います。どうか皆様は、アナスターシア様のお部屋でお待ち下さい」
僕はそう告げると、捕獲した内のフォレストコッコを一羽持って、皆から離れた場所で作業を開始した。
今回僕達が捕獲したフォレストコッコは、全部で五羽。
その内訳は、雄が三羽、雌が二羽。
鶏卵用に雄と雌を二羽ずつ残して、過剰な一羽を捌いて、お肉を食べる事で皆に理解して貰う。
此処からは、生きているフォレストコッコを食べる為に屠畜するのだ。
ただ、その作業を皆の前で見せる訳にはいかないので、別室で加工作業をさせて貰う。
「話した感じだと、メリル様やメリダ様は、お肉の事を理解しているんだろうな。と言う事は、勿論アナスターシア様も、これから招待するアプロディア様も理解している事だろう。だけど...さくらはそんな状況を見たら卒倒してしまうだろうな...」
僕が身を案じたのは、さくらの事だった。
さくらは、食べる為に生き物を殺す事を頭では理解していないだろう。
この先を考えれば教えて行く事、理解して貰う事ではあるが、唐突に見せ付ける行為では無い。
少しずつ丁寧に、食育をして行きたいと思っている。
命の尊さを含めて、味覚、栄養、調理と徐々に段階を踏んで。
「よし。この場所なら衛生面を含めて大丈夫そうかな?煮沸した水もたっぷりあるし、ちょうど皆からも離れているし」
これからフォレストコッコを捌いて、解体をして行く。
その手順を簡単に説明すると、血抜き→羽抜き→切り分け・内臓取り出し→洗浄となる。
「じゃあ、先ずは血抜きから始めるかな」
先ず始めに血抜き作業を行う。
この血抜きは、お肉の臭みを取り、お肉を美味しく頂く為に必要な工程。
血抜きがしっかり出来ていないと、血液に雑菌が繁殖してしまい腐り易くなる為だ。
これが生臭い原因となるのだ。
ちなみに街のお肉屋は、血抜きが甘いせいで(冷蔵保存も出来ていなかった為)食材の品質が悪くなり、お肉が腐っていたのだ。
「この生命...美味しく頂きます」
僕はプロネーシスの指示の下、フォレストコッコの首をナイフで切り裂き、逆さにして血を抜いて行く。
この時、生きたまま殺しているので、フォレストコッコの「クエー!!!」と言う鳴き声が教会中に断末魔の叫びのように響いていた。
僕は自分の欲を満たす為にフォレストコッコの生命を奪い、そのお肉を頂く事を深く感謝する。
「...ありがとうございます」
血抜きの作業が丁寧に終われば、次は羽抜きの作業だ。
鳥の場合、羽が残っている事でも菌が繁殖してしまい、更には、お肉を召し上がる時の食感が悪くなる。
ただ、そのまま羽を毟ろうとしても、かなりの力が必要になる事と、時間が掛かってしまうだけだ。
時間を掛ける事で菌が繁殖してしまい、お肉の品質が悪くなってしまう。
それを防ぐ為に、フォレストコッコを七〇〜八〇℃前後のお湯に浸して、羽を毟り易くするのだ。
「ふーっ。ここではお湯を用意するのも一苦労だな。でも、その分、手間が掛かっているから食べる時は美味しく感じるんだろうな」
この作業が、人力でやる上では一番大変な作業かも知れない。
ガスバーナーなどがあるならば、産毛も簡単に焼き払って除去出来るのだが、生憎、僕は魔法が使えない。
全てを手作業で、しかも、丁寧に進めなければならない。
「なるべく時間は掛けずに、でも、丁寧に...と」
生命を奪うところから調理までを、自分で担当する。
だからこそ、その分食材を召し上がる事に対してのありがたさも、食べ物に対して残してはいけないと言う感謝が生まれるのだろう。
食においての廃棄量が問題になっている現代では、それらの過程や工程を知らないまま食べられてしまうのだから。
食の廃棄量を世界で見ると、年間一三億トン前後も出ている。
日本だけに限定しても、六〇〇万トン前後の廃棄が出ているのだ。
これは、一人一日あたり、お茶碗一杯分の食事を捨てている事になる計算。
そして、そういう場面を傍目から目撃した場合、勿体無いと何処か他人事。
しかも、その他人は時間が経てば直ぐに忘れてしまうものだ。
まあ、不自由無く暮らせている現代では、実感しにくい事でもあり、当事者と言う感覚が無い事だろうけど。
「生命のありがたさが希薄な現代では、難しい事だよな。自分が何もしなくても、至る場所に食が溢れているのだから」
スーパー。
コンビニ。
レストラン。
このように、内食、中食、外食と、食事を取る手段は無数にあるのだ。
物で溢れているからこそ個人で食べたいものを選択出来るのだが、それが弊害となり、人気なもの不人気なものと分かれてしまう。
これは個人の主観によるもので、今となっては季節によっての旬なもの、時代によっての流行がある為に、生産者や販売者が、限定や強制を出来るものでは無い。
それが当たり前になっているので、どうしても生産過多になってしまうのだ。
リサイクル技術が発展した現代でも、真剣にこれらの事を考えると、勿体無い事なのだ。
「出来るなら...この世界は、そういう勿体無い事が無い世界にしたいな」
僕はそんな事を考えながらも、一生懸命に羽を毟った。
一定時間ごとにお湯に浸しながら、手作業で丁寧にフォレストコッコの羽を毟り終えると、ブツブツとした鳥肌が剥き出しになった状態となった。
鳥肌が立つ。
まさに、その表現通りの状態だ。
「次は、切り分けながら、内臓の取り出しか」
『はい。マスター。次の工程は...』
ようやく羽を毟り終えたフォレストコッコ。
これは、クリスマスなどで見る事が出来る、丸焼きをする前の状態。
ただ、その違いは、まだ身体の中に内臓などが詰まっている状態だと言う事だ。
「内臓を取って、丸焼きにしても美味しそうだよな...調味料があれば、もっと良かったのに」
この領内では調味料が売られていない。
塩、胡椒、ハーブ、スパイスなどと言った調味料がだ。
これらの品があれば料理の幅は広がり、食材をもっと美味しく頂けるのに。
『マスター。それらの調味料は、全てではありませんが恵みの森で採集する事が可能です。塩は山を掘る事で岩塩を。胡椒やハーブ、スパイスなどは、それらが植生している場所で採集すれば入手する事が出来ます』
「本当に!!それは凄いね!恵みの森の万能さって、ある意味チート(不正)だけど、それなら是非、採集に行きたいね!」
やはり恵みの森の、ぶっ壊れ性能は群を抜いている。
何処かの世界線では、一つの海の中に世界中の魚が存在するオールブルーと言うものがあるらしいが、恵みの森は魚とは違うけれど、その食材で考えるならそれを遥かに凌駕している気がする。
こんな序盤でオールブルーしかり、オールグリーンとでも言えるものがあるのだから。
「これでまた料理の幅が広がるね!そうなれば、もっと美味しいものが食べられるようになるから楽しみだね!!」
僕は硬直しているフォレストコッコの両手羽、両足を上下左右に動かしては、硬直を解きながら広げて行く。
硬直が解けたら、ナイフでお尻の先端上部にある部位、脂つぼを取り除き、お尻から首までの背面部分を一直線に切れ目を入れて、骨付き腿を外し易くしておく。
次は、ひっくり返して、両方の内股の皮に切り込みを入れて両親指を中に入れる。
そして、そのまま関節を外しながら、外側に開いて行くのだ。
お肉の筋や関節部分が剥き出しの状態。
腸骨に沿って上部から下部、ナイフの刃先で肉と筋を切り離して行く。
そうして胴体を押さえながら、骨付きももを手前に引っ張って、胴体から外すのだ。
その際、皮をナイフで切り切断する。
それを両足共に行うのだ。
「この作業は、水で血を流しながら素早くと...」
衛生面に気を配って作業を続ける。
次は、手羽、胸肉、頭、内臓の切り分けだ。
最初に首皮をつまみながら、首の付け根部分にナイフを突き刺す。
そのまま首の骨に沿って、首皮を頭部まで切り離して行く。
こうする事で、手羽付き胸肉を切り離し易くする為だ。
次に、胸肉の付け根の間接から胴骨に沿ってナイフを入れて行く。
この時、ナイフの刃先を上手く使って、手羽もとの関節にナイフを入れて、筋きりを行う。
すると、ナイフで肩甲骨を押さえて、手羽もとの付け根を引っ張ると、裂けるように手羽付の胸肉が外れるのだ。
この時、首皮が胸肉に付いたままなので、この時点で、首に食道や気管をつけたまま切り落とす。
同じように、反対側も同様の処理を施して。
「ふーっ。これで両足、両手羽(胸肉付き)に分かれたな。次は内臓と頭か」
内臓を取り出す為に、胴骨と肩甲骨の間にナイフを入れて、首の根元から胸骨を引っ張るように取り外す。
その際、頭の付け根をナイフで切り、食道と気管を首から外すのだ。
頭と胴体が切り離されて内臓が剥き出しになった状態だ。
そのまま食道と気管部分を引っ張ると、胸椎から肺、内臓が取り出せるのだ。
『マスター。内臓に異常が無いか、確認して下さい』
「了解。プロネーシス」
この時、内臓に異常がある場合は病気持ちとなる。
その状態のものを食べた場合、僕達まで病気の感染が広がってしまうからだ。
確認作業がとても大事になる。
「うん。異常は無いみたい」
此処まで来たら、後はお肉の下処理だ。
両足から骨を抜き取り、もも肉を切り離して行く。
その際、大腿骨周辺の筋を丁寧に処理して。
足と脛骨を切り離すのだが、此処の処理が甘いと、筋抜きをする際に上手くいかないからだ。
「よし。筋も綺麗に抜けて、もも肉の切り離しに成功っと」
切り離したもも肉から軟骨を抜き取り、はみ出している皮を切り取って行く。
表面部分の筋や軟骨も丁寧に取り除き、もも肉の厚みのある部分を開いて、血管を取り除く。
「もも肉の下処理は、これで完了っと」
次は、手羽先、手羽もと、胸肉の処理。
手羽もとから手羽先を切り離す。
次に、手羽もとの付け根の間接を上胸骨に沿って切り、手羽もと、胸肉を切り離す。
そして、胸肉に付いている首皮を肩口で切り取り、余分な皮と筋を切り取ると、手羽先、手羽もと、胸肉と切り分ける事が出来る。
「こっちの処理はまだ簡単だったな。手羽先、手羽もとは、ほぼそのままだし、手間が掛かった胸肉も、もも肉程の面倒じゃないな」
最後に、ささみの処理だ。
鶏肉の部位の中で、脂肪が最も少ないお肉。
ダイエットをしている人に最も好まれる部位だ。
骨と肉の間にナイフを入れて薄い膜を切る。
次に、筋を取り出して骨を引っ張り取り出す。
そうして取り出したささみの筋の片側に、筋に沿ってナイフを浅く切り込みを入れて行く。
筋をつまみながら、ナイフの刃先で削ぐように筋を取り出すのだ。
「これで、下処理は全部完了かな?...慣れれば、もう少し早く出来そうだけど、やはり手作業だと大変だな...でも、これだけ丁寧に下処理が出来れば、絶対に美味しく仕上がって皆が喜んでくれる筈だ!!」
現代では、機械によって処理が出来てしまう。
手作業の方が、無駄無く処理が出来る場合もあるが、やはり手を汚さず、楽に出来るのは魅力だ。
だが、その分手間が掛からない為、食材に対する気持ちが希薄になるのだろう。
「じゃあ、早速、調理に入ろうかな?調味料は無いけど...オリーブオイルで焼き上げるだけで、質素な味付けに慣れている僕達なら十分、美味しく感じるだろうな」
僕は、下処理が終わった鶏肉を、鍋を熱して焼き上げて行く。
フライパンと言った物は無いけど、スープを煮込む為の鍋はあるのだ。
鍋にオリーブオイルを入れて、切り分けたお肉を焼いて行く。
すると、お肉がこんがりと焼き上がる匂いが、部屋の中に充満して行く。
「鶏肉はしっかりと火を通して...うん!美味しそうな匂い!」
フォレストコッコのオリーブ焼き。
随分と簡素な品だが、お肉そのものが高級品だ。
僕は、出来上がった品を皆の下へと運んで行く。
すると、メリルがお皿の上の品を見て驚く。
「これが、先程のフォレストコッコとでも言うのか?」
見た目の全然違う品に口を開けて驚いている。
しかも、良い匂いを発しているのだから、堪らないと言った様子だ。
「すーっ。ん~っ。物凄く良い匂いがしますね」
目の前に出された品を、メリダは目を閉じて堪能している。
香ばしい肉の匂い。
空きっ腹には強烈な刺激だ。
「これは、僕とさくらが、植物から作ったオリーブオイルで焼き上げたものです。今はまだこれが限界ですが、十分美味しく仕上がっています」
流石に、数が決まっている手羽先、手羽もとは切り分ける事が出来なかったが、胸肉、もも肉、ささみは人数分に切り分けて、それぞれのお皿に提供をする。
「料理も出来るとは、流石はルシウスですね」
アナスターシアが褒めてくれた。
その嬉しそうな表情を見れただけでも僕としては十分だ。
「ルシウス?この量を全部、一人で食べていいの?」
さくらは、目の前の品に興味が湧いている。
一緒に捕獲したフォレストコッコが、お肉として香ばしい匂いを発して、目の前にあるのだから。
それも様々な種類の部位が揃って。
「それは、全部さくらのものだよ。食べたら後で感想を聞かせてね?」
「ルシウス...私も頂いて、宜しいのですか?」
この場に招待をしたアプロディアが戸惑っていた。
でも、このお肉は僕とさくらが捕獲したものだ。
それを僕の面倒を見てくれている、アナスターシア、メリル、メリダが食べられて、さくらの母親である、アプロディアが食べられないのは可笑しな話。
「はい。アプロディア様。このお肉は、さくらも一緒に捕獲したものです。遠慮せずに、どうか召し上がって下さい。では皆様、どうぞ召し上がって下さい!」
僕は、そう伝えて皆にお肉を食べて貰う。
だが、従者である、メリルやメリダは、手を付けようとしなかった。
「メリル様にメリダ様?いかがなさいましたか?」
「私達はアナスターシア様の従者だ。一緒に召し上がる事は、出来無い」
「お姉様の言う通りです。私達は、アナスターシア様が召し上がるのを待たさせて頂きます」
本来なら、従者が一緒のテーブルにつく事も許されない。
だが、折角作った品が冷めてしまう。
「お母様。これではお肉が冷めてしまいます。腕によりをかけた美味しいものを、早急に召し上がって頂きたいのですが...」
「ええ、ルシウス。折角のルシウスの手料理です。メリルにメリダ。今回は普段の食事ではありません。試食会です。二人とも、ルシウスの料理を温かい内に召し上がって下さい」
僕が言わずとも、アナスターシアは最初からそのつもりだったようだ。
二人に対して笑顔で促して行く。
「ですが、アナスターシア様...」
メリルが言葉を全部言う前に、アナスターシアが遮る。
「メリル。良いのです。さあ、早く召し上がって下さい」
「...かしこまりました。アナスターシア様」
主従関係の面倒なところが出てしまったが、どうやら皆で一緒に召し上がってくれるようだ。
「では、今一度、フォレストコッコのオリーブ焼きを召し上がって下さい」
普段、何の味付けもされていないポリッジや、茹でた野菜を再度お湯に加えただけの水煮のようなスープを食べ慣れている僕達。
そんな僕達にとっては、目の前にあるオリーブ焼きはとても贅沢に感じる一品だった。
皆がお肉を口に運ぶと、揃いも揃って全員が同じ事を口に出す。
「「「「「美味しい!!!」」」」」
メリルやメリダは、「何だこれは!?」と言葉を発しながらも、様々な種類のお肉を矢継ぎ早に口へと運んで行く。
オリーブで焼き上げた香ばしい香りや味わいが口に広がり、目を閉じて噛み締めている。
アナスターシアやアプロディアは、流石は洗練された女性と言った感じで、一口ずつ丁寧に味を堪能している。
漏れる声も、料理に唸るような「ん~っ」と、何処か色気を含んだものだ。
さくらは、「ルシウス!こんなに美味しい料理は初めてだよ!」と、とても美味しそうに召し上がっていた。
ただ、それ以外でも共通をしている事は、意外と皆が、テーブルマナーをしっかりと出来ているところだ。
(現代と比べたら、失礼になってしまうけど、音を立てない事や、お皿を持たずに上品に食べたりする事は、教養が無いと出来無い事だよな...)
僕自身もテーブルマナーのこの部分は、メリルやメリダに注意をされて育って来た。
現代知識のある僕は、すんなりと馴染む事が出来たけれど。
(やっぱりここにいる人達って、普通では無いよな...貴族と言ったものか?)
皆の素性はまだ解らないが、その行動や言動、姿勢などは明らかに教養を受けたものだ。
(まあ、今考えても仕方ないか。その内教えてくれる事だろうし、今は目の前の品(お肉)を楽しんで貰おう!)
この領内で、お肉を食べる事は、お金が無いと出来無い事。
それに街で加工されたお肉を買う事は勿論お金が掛かる事だが、そもそもが、この量のお肉を一人で食べられる事など無い。
全員が、目の前の料理に舌鼓を打って感動している。
そして、僕は全員が料理を食べ終わる頃を見計らって話し掛けた。
「これで、捕まえて来たフォレストコッコが食べられる事を解って頂けましたか?」
皆の意見を聞くように、そして僕の食事に対する改善の思いを通す為に、最終確認だ。
「うむ。街で買うお肉よりも、こんなに美味しいとは。どうやら、私は勘違いをしていたようだ。ルシウス、すまなかった」
「はい。お姉さま。こんなに美味しいお肉が食べられるとは思いませんでした。ルシウス、ごめんなさい」
メリルは態度や言葉遣いは偉そうだが、彼女にとって、これが普通なのだ。
それを抜きにしても、心からの謝罪をしてくれていた。
メリダは、姉のメリルよりは態度が柔らかい。
言葉遣いも丁寧なので、人当たりは良さそうに見える。
だが、怒った時は姉のメリルよりも尾を引くのだ。
実は、教会で一番怖いのはメリダであった。
「私は、最初からルシウスの望むままです」
「私は、招待された身です。最初から意見などはありませんわ」
アナスターシアは、僕が言う事を全て受け入れてくれる。
元の世界で言うなら「親バカ」と言われても仕方ない程に、僕に対して激甘なのだ。
アプロディアの様子から「お肉が定期的に食べられるようになるのは歓迎です」とその意思が込められている事が伝わった。
「ルシウス!また一緒に、捕獲しに行こうね!」
さくらは、お肉にとても満足している様子だ。
自分が捕獲した鳥が、こんなにも美味しいものになるのだから。
「では、フォレストコッコの養鶏をさせて貰いたいと思います。朝は鳴き声で煩くなると思われますが、どうせ私達が起きる時間です。それにお肉だけでは無く、その卵も食べられますので、その時を是非、楽しみにして下さい!」
僕は皆に宣言をした。
これから教会はフォレストコッコの鳴き声で、朝が騒がしくなるだろう。
だが、その分食事が豊かになる。
こうして食事改善の第一歩目が刻まれたのだ。
(調味料、調理法、料理の種類、やる事は一杯だな。だけど、皆が喜んでくれているんだ!それに何よりも僕自身が楽しい!!うん。頑張るぞ!!)
そう心に誓い、ようやく長い一日が終わったのだった。
そして、日が変わり、教会での日課である朝の作業が終わって自由時間となった頃。
僕とさくらは、文字を教えると言う約束を守る為に教会の広場で合流をしていた。
「じゃあ、約束通り文字の勉強を始めようか?」
「ルシウス、ありがとう!」
これから文字について教えて行くのだが、元の世界のように“紙”と“鉛筆”がある訳では無い。
さくらに文字を教える為には、地面を紙として、鉛筆を枝に置き換えて、地面に文字を書いて教えて行く。
「今から地面に文字を書いていくんだけど、最初は、どういった文字があるのかを見て貰っても良いかな?」
「うん!」
僕は地面に、この国で使用されている全二五文字を書き出して行く。
この文字は、元の世界で言えばギリシャ文字に近く、アルファベットへと進化して行くその前の行程で止まっている感じだ。
当然、文字一つ一つに決められた読み方がある訳だが、それらを組み合わせる事で違う意味を持つようになる。
「これが僕達の住む、王国マギケーニヒライヒで使われている文字だよ」
「王国で使われている文字?それは、国によって変わるって事なの?」
さくらは僕が話した、「王国マギケーニヒライヒで使われている文字」に反応を示す。
これがこの世界の共通語なら良いのだが、国や地域によって文明は変わるものだ。
他の国が、どのように発展しているのか解らない現状では、不確かな事は言えなかった。
「僕も今は、この国の文字しか知らないから確証は持てないのだけれど、国が変われば、使用する文字や言語も変わり、当然、話す言葉も違ってくるものなんだ」
「国によって変わる言葉...なんだか、想像つかないね?」
世界を知らなければ、国によって文明が違うと話したところで想像がつかない話だとは思う。
殆どの人は、自分の居る国から出る事は無く、ましてや自分の住む街から出る事も無く、そこで生涯を終えるのだから。
自分の手の届く範囲で物事を考える事が、極当たり前の行為なのだから。
「ここ以外に、どんな国があるのかも解らないからね...で、話は戻るんだけど、地面に書いたこの二五文字を組み合わせたものが言葉になるんだ」
「言葉...私達が今話しているものが、言葉で良いんだよね?」
文字は知らないが、言葉は解る。
言葉は他人との意思疎通やコミュニケーションを図る為に生み出されたもの。
そして、この国では親から子へと引き継がれて来た文化だ。
「そう。僕達が話しているものが言葉。その言葉を話さずとも相手に伝えるもの、記憶する為のものが文字なんだ」
「言葉を伝えるもの...記憶するもの...何だか、それは凄いね!!だからルシウスは、沢山の本を読んでいるから何でも知っているんだね!!」
教会にも、本が幾つか置いてあった。
この国の本は、“羊皮紙”と、“インク”を使用した一点もので、とても高価な物だ。
それが教会には存在しているのだ。
元の世界を知っている僕からすれば、此処での暮らしの水準は現代と比べたら低いもので裕福とは言えない。
だが、この街で考えるなら良い方なのだ。
教会に住む、40名近くの人が暮らしていけている事。
野菜中心だが全員が食事を取れる環境。
病気以外での致死率の低さ。
それらを考慮し、周りと比べると教会は良い暮らしになってしまうのだ。
「じゃあ、一つ一つの文字の読み方から説明するね」
「はい!ルシウス先生!」
さくらが僕の事を先生と呼んでいるが、これは決して茶化している訳では無く、とても真剣なやりとりだ。
僕は、元の世界で誰かに何かを教える事など全くした事が無かった身。
なので、今この状況(偉そうに人に教えると言う事)が少しむず痒い。
でも、自分の事で精一杯だった僕が、誰か人の役に立てる事が、とても嬉しく思っている。
自分の姿を俯瞰して見られる訳では無いのだが、きっと口元が自然に緩んでいる事だろう。
「この文字の読み方は…」
そうして僕は、さくらに文字の読み方を一文字ずつ説明して、全二五文字の説明を終える。
すると、さくらは僕が文字を発音した音に続き、復唱をしては地面に同じように文字を書いて覚えようとしていた。
「えーっと、この文字が...で、これは...だから」
僕は、さくらの一生懸命な姿に心が惹かれる。
何か行動を起こす時に手を抜く事やサボる事は簡単に出来てしまう。
でも、さくらは、そう言った事を全くしないのだ。
道から逸れて近道をしたり、先回りをして誤魔化すのでは無く、真っ直ぐに進んで、その道のり全てを自分の力へと吸収して行く。
この行動が、志が僕と同じな為、とても共感出来るのだ。
(手を抜いたりサボる事は簡単だ。でも、それをせずに...こうして物事に、真摯に挑戦する姿が格好良いんだよね!!)
人にはそれぞれ性格がある。
それは一人一人が違い、良い部分や悪い部分も含めて個性となる。
個性とは、自分特有の性質であり、自分らしさを表すもの。
それは、自分の外側(表面)にあるものでは無く、内側(内面)にあるものだ。
隠したり、偽造が出来たとしても、人が持つ本質までは中々変えられない。
(本質ばかりは中々変えられないものだ...それに、教えたら教えた分だけ吸収するなんて凄過ぎるでしょ!)
これだけ物覚えが良いとなると、さくらには才能として成長補助の能力があるのかも知れない。
これはまだ憶測に過ぎないのだが、もし、その才能が有ると過程して、ゲーム時代と違って、この現実化した世界で何処まで成長する事が出来るのか?
これがとても楽しみである。
「じゃあ、文字については理解したみたいだから、次は、この文字を組み合わせて言葉にしてみようか?」
「うん!お願いします」
勉強を始めた初日と言う事もあるので、さくらの集中力が持つ範囲で、知識を頭に詰め込んで行く。
先ずは、自分達に関わりのある言葉や名前から教えて行くつもりだ。
「これとこの文字を繋げると...これで、さくらって読むんだよ」
「これで、さくら?...私の名前だね!」
さくらは、自身の名前を表す文字を知って、とても嬉しそうだ。
この世界では、自分の名前すら読み書き出来ずに人生を全うする人間が殆どなのだから。
文字を読み書き出来るだけでも仕事に就けてしまう。
そんな世界なのだ。
「これが僕の名前、ルシウス。これが、さくらのお母様、アプロディア様、僕のお母様、アナスターシア様、そして、メリル様、メリダ様」
「これが、ルシウスに、お母様、アナスターシア様、メリル様にメリダ様。ルシウス!文字は凄いんだね!!」
さくらが僕の方へと振り返り、その文字に感動をしている。
文字は、言わば一つの記号で、複数の意味を持つものだ。
単体でも意味を成し、組み合わさる事で、その意味は変化をして行く。
文字を理解すれば、他人との意思疎通をより詳細に出来るのだ。
「じゃあ、この文字を書き写しながら覚えて行こうか?」
「はい!ルシウス先生!」
さくらが片手を上に真っ直ぐ上げて、元気良く返事をした。
名前を表す文字を地面に書いては消してを繰り返し、目と身体で覚えて行く。
「文字♪言葉♪名前♪」
やはり、どんな時でも歌は忘れないようだ。
でも、本人が楽しく勉強をしている時の方が知識は身につくものだ。
それに、歌えると言う事は心に余裕がある状態。
これが勉強を嫌々やらされている状態では、集中が出来ていない状態になるので覚える事に苦戦をしてしまう。
(本人の希望あってのものだけど、学びながら楽しめる事が一番だよね...僕も、もっと色々な事を覚えて行かないとな...)
僕が、さくらの行動を見守りながらそんな事を考えていると、僕達の背後から声を掛けられる。
「ルシウス?こんなところで何をしているのですか?」
声を掛けて来たのは教会の最高責任者であり、僕の母親である、アナスターシアだ。
僕は周囲に魔力を広げていた為、その人物が誰なのか解っていたが、さくらは突然の事で驚いていた。
さくらは慌てて文字を書く事を止め、姿勢を正して僕の隣に並んだ。
僕は僕でアナスターシアの方へと向き直し、先程の問いの返事をする。
「はい。お母様。ここで文字の勉強をしていました」
「文字の勉強...を?...ルシウスは、文字が読めるのですか!?」
アナスターシアが、まさかと言った様子で驚いている。
ただ、その際、驚いた表情や態度を見せていると言うのに、それでも気品を感じてしまうのだから素直に驚嘆する。
人間の本性が現れるのは、こう言った咄嗟の時なのだから。
「はい。このように地面に文字を書いて、さくらと勉強をしていたところです」
僕は地面に書いた文字を指しながら説明する。
実物を見て貰う事が手っ取り早いのだから。
「これは...私達の名前ですか?まさか、この年で文字を覚えているなんて...」
アナスターシアが口元を押さえながら深く思慮してしまう。
元の世界ならば、簡単な読み書き程度なら既に覚える年齢だが、此処ではそんな事があり得ない世界。
しかも、僕達の年齢が5歳なのだから。
「ルシウスは、文字を一体何処まで理解していますか?」
アナスターシアが言う理解が、何を指しているのかが僕には解らなかった。
ありのままの事を答えるしか出来無かった。
「...理解ですか?それでしたら、教会に置いてある本や文字については全て理解していると思います」
たぶんだが、古い文献に出てくる言葉だろうが、私生活では使用しない言葉だろうが、読み書きなら十分に出来るだろう。
それはプロネーシスがいる事が大半だが、僕自身に元の世界での教養があるおかげでもある。
まあ、教養と言っても学校で習う程度の知識しか無いのだが。
「ルシウス...それでしたら、確かめたい事があります。私に付いて来て頂いても宜しいですか?」
アナスターシアが、神妙な表情で僕に問い掛けた。
これは、急にどうしたのだろうか?
普段、見た事も無いような表情だ。
「はい、お母様。ですが、どちらへと向かわれるのですか?」
「ええ。それは聖堂へと向かいます」
いやいや、聖堂に向かって、どうするのだろうか?
あそこには女神像と、それらを祭る為の神具と呼ばれる模造された武器が置いてあるだけだ。
その神具も魔法具では無く、ただの見た目の良い飾り物でしか無い。
「お母様...それでしたら、さくらは如何なさいますか?」
「そうですね...さくらにも関係がある事です。一緒に来て貰いましょう」
そう言ってアナスターシアは、僕達を連れて聖堂へと向かった。
さくらにも関係がある事?
それは、どう言う事だ?
そんな事を考えていたのだが、もともと僕達がいた場所が教会の広場になる為、聖堂には直ぐ着いてしまった。
「では、ルシウス。こちらに来て下さい」
アナスターシアは聖堂に入ると、一目散に女神像が置いてある場所へと向かった。
どうやら、此処にも聖典が置いてあるようだ。
基本、教会には書物部屋があり、そこに本が集約されている。
それなのに、これは別に保管されているようだ。
これが聖典の原本なのか複製なのかは解らないが、教会には2冊置いてあるみたいだ。
「ルシウス、これが何か解りますか?」
アナスターシアは聖典を手に取り、僕に問い掛けた。
「はい。お母様。この世界の起源を記した書物で、教会における聖典です」
僕がそう答えると、アナスターシアの驚きは、より一層大きくなった。
「まさか、内容を理解しているだなんて...ルシウス。聖典を受け取って、読んで見て下さい」
「はい...お母様」
僕はアナスターシアの対応を見て、得体の知れない不安を感じる。
だが、言われた通りに聖典を受け取るしか無いのだ。
(何だろう?お母様がこんなに慌てているだなんて...)
一呼吸挟んで、僕は受け取った聖典を開いた。
その開いた聖典は、何も文字が書かれていない白紙の状態だ。
(あれっ?中身が無い?)
書物部屋に保管してある聖典を初めて開いた時も中身は真っ白だった。
だが、瞬きをしたその短い刹那に、聖典にはビッシリと文字が浮かび上がっていたのだ。
(いや、違うか。これもやっぱり文字が刻まれているようだ...僕の気の所為だったのかな?)
前回の時も合わせて、これが二回目。
だが、これらの出来事が一瞬の為、僕は気にせず、言われた通りに聖典を読み上げる事にした。
「始まりは、“白の女神”と、“黒の神”が、お互いに別々の場所で同時に生まれた。その両方の神が惹かれ合うように、お互いに導かれて行く事で、触れ合って混じった結果、世界が創られた」
僕が内容を読み上げて行くと、教会の地面に隠蔽されていた魔法陣が光を伴って浮き上がって来た。
初めての出来事で困惑する僕。
このまま読み続けて良いのか、アナスターシアの顔色を伺った。
だが、アナスターシアは、そのまま続けるように縦に頷いた。
これから何が起きるのか予想出来無いと言うのに、僕は言われるがままに聖典を読み上げていった。
「その時一緒に生まれたのが、“時”、“空間”、“生命”の三柱の神。
三柱の神が生まれた事で、世界に時が刻まれるようになり、世界の空間が広がり、世界に生命が誕生した」
隠蔽されていた魔法陣が完全に出現し、白い光で輝き始めた。
すると、僕の身体から勝手に魔力が噴き出し、その魔法陣へと吸われて行く。
僕の持つ魔力の大半が、この魔法陣へと根こそぎ持っていかれる感覚だ。
そして、僕が聖典を読んでいる最中、アナスターシアが何かを確信したような表情で頷き始めた。
「そして、世界に生命を維持する為に、“火”、“水”、“風”、“土”の四柱が、三柱の神によって生み出された。土の神が世界の基盤となる自然を作り、火の神がそれを成長させる。風の神が実りを与えて、水の神が休みを与える」
僕が魔力を奪われながらも聖典を読み終えた時、魔法陣から光の柱が出現し、建物を通過しながら天高く立ち上がった。
(あれ?これって才能を受け取った時の演出に似ているのか?)
僕がまだゲームを始めた頃、正式サービスを開始する前に、β版をプレイした褒美に貰ったアイテム『神の贈り物』。
それを使用した時の演出に似ているが、世界を統べていた筈の主神オーディンは死んでいる。
案の定、光の柱が天高くそびえるだけで、その後は何も起きなかったのだから。
(何も起きない?あの時のように天使が降りて来る訳でも無いし、勿論、主神も降りて来ない...身体に変化は...魔力をだいぶ失っているようだけど、特に変化は無さそうだな)
僕は、自分の身体の変化を確かめながら経過を待ってみたが、どうやら、魔力を失っただけで変化は何も起こらなかった。
この魔法陣と光の柱の効果が解らず、首を傾げるだけ。
すると、アナスターシアが小声で何かボソボソと呟いている。
「神子...やはり...お告げの通りのようですね。ですが、このままでは教会...」
神子?
お告げ?
教会?
これらの言葉は何を意味するのだろうか?
「ルシウス...貴方には、今後苦しみを伴う試練が訪れます」
アナスターシアが、然も未来が解っているような感じで僕に話し掛ける。
僕の顔を優しく触れながら。
「それは...きっと、ルシウスの選択が世界の命運を賭けるような試練です...」
そう言うと、アナスターシアは僕をきつく抱き締めた。
おもむろに力一杯。
それでいて震えながらだ。
「さくらも、こちらにおいでなさい」
「はい...アナスターシア様」
アナスターシアは、先程から不安そうに棒立ちをしていたさくらを呼び込む。
さくらも言われるがまま、アナスターシアの下に飛び込んだ。
「大丈夫...貴方達は...二人なら大丈夫だから」
僕達二人を、その両手で包み込むように抱き締めた。
“二人なら大丈夫”。
アナスターシアの言葉数が極端に少ない為、色々と謎が残ったままだ。
どうすれば良いのかも解らない。
(二人なら大丈夫って、一体どう言う事だ?僕だけでは無くて...さくらも一緒なら?)
アナスターシアも、それ以降語る事が無く、ただただ黙ってしまった。
どうやら、今直ぐに解決が出来る訳では無いようだ。
それなら、僕が出来る事は何になるのか?
(これは、今の内にさくらも一緒に訓練をした方が良いのか?それとも...一体、僕はどうすれば良いのか解らないな...いや、この考え方そのものが違うんだ。僕がどうすれば良いのか何てそんな事は既に決まっている事だろ!何が起ころうとも、僕が誰よりも強ければ問題無い筈だろ!!やる事は変わらないんだ!!史上最強を目指す事!!ただ、それだけなのだから!!)




