第九話『相談されても分からない。宮下すみれ編2』
「……ん?」
昨日、慣れない説教をした次の日。いつものように登校して自分の席に座ると、なにやら机の中からはみ出ている謎の茶封筒。嫌な匂いがプンプンする。
「……画ビョウが沢山とかないよね……」
取り敢えず取り出して中をフリフリ。物が大量に入っている感じではない。なら開けても大丈夫か?
恐る恐る中を開けるとそこには一通の手紙が。
「手紙?」
こんな茶封筒に手紙? ラブレターとかの線はないよね、まず人付き合い僕、悪いし。それにしても手紙って言ってもこんな無地の白い手紙なんて中々見ないな。最近のはなんかファンシーものばかりだし。
「……んー、なんか十中八九予測が出来てきたけど読んでみるか」
そう言って折り畳まれた手紙をペラリと捲る。そこに書いてあったのは簡素で少ない文章。
「“お願いします、助けて下さい。放課後校舎裏で待ってます”……なんか急にしおらしくなったな宮下さん」
昨日の説教?がよく聞いたのかこんな遠回しで僕を呼びつけるとは、もしかしたら僕が考えている以上に憔悴しているのかもしれない。
「……困ったなー」
「何が困ったんだ?」
そんな時、朝の練習が終わったのか志水がやって来た。どうしようか? 志水に話してもいい話題なんだろうか?
「そういや知ってるか隣のクラスのハーレム王。どうやらハーレムが解体したらしいぞ」
「あぁ、それなら知ってるよ。結構な噂になってるし」
「それがな、実はそれだけじゃないらしいんだよ」
「それだけじゃない?」
志水はそう言って席に座り此方に振り向く。でもそれだけじゃないってどういうことだろ?
「実は……解体したの原因はハーレム王じゃなくて別の奴が手引きしたらしいんだ」
「はい!?」
志水の言葉に過剰に反応してしまいつい大声をあげる僕。そのせいでついさっきまでわいわいと騒いでいたクラスの視線が僕に向けられる。うっ、恥ずかしい……。
「ど、どうしたんだよ。そんなに驚いて?」
「え、あ、いや、別に……それで手引きしたってどういうこと?」
羞恥の気持ちを抑えて志水に訊ねる。クラスの皆も何も無かったのを見て各々の話に戻っていった。良かった……あんまり注目されなくて……
「そのまんまの意味だよ。ハーレム王に嫉妬した奴が裏で何か悪い事して、あのハーレムを解散させたんだってよ」
「そ、その情報はだれから?」
「情報つーか、噂だな。あんだけイチャイチャしてたハーレムが急に無くなったから、他の奴らが勘繰って色んな噂を流してるんだぜ」
「い、色んな噂?」
「ハーレム王は実はホモだった説、本当は金を貰ってハーレム作ってた説、ハーレムは仮初めの姿で実は正義のヒーローグループ説。まぁ話したらキリがないな」
「凄い噂が飛び交ってるんだね……」
「まぁその中で一番有力じゃないかって言われてんのが、さっき俺が言った説だ。しかし悪い奴もいたもんだな、嫉妬で人を不幸するとか。お前もそう思わないか?」
「ソウデスネーサイテイデスネー」
「……なんで棒読みなんだ?」
「いや、ちょっとね。あははは」
ヤバい。知らない内になんか悪者扱いされている! これは早急に手を打たないと危ないかもしれない。(主に僕の立場が)
ーー時はあっという間に経過して放課後。僕は早急に最速で校舎裏へと向かった。
「あ、あんた昨日はよくも……ってなんでそんなに疲れてんの?」
「ち、ちょっと訳ありでね。ふぅー……疲れた」
「そ、そう……じゃなくて! 昨日みたいには今日はいかないわ! 絶対に私と東吾の仲を取り持って貰うんだから!」
「あっ、協力しますよ。はい」
「ふん、やっぱり協力する気はな……? あれ、あんたなんて言った」
「だから協力するって。ちょっと待ってね今から東吾呼び出すから」
携帯を取り出して東吾の電話番号を検索しすぐに通話ボタンを押す。なんか横でえ?え?とか状況を掴めない宮下さんは置いておく。
電話は数回のコールの内に繋がった。
「おぅ、どうした鷹?」
「やっほー東吾。久しぶりで悪いけど今暇?」
「おー、ちょうどいつものゲーム仲間が用事でいなくて暇してる」
「じゃあ今から美味しいラーメン屋いかない?」
「いいな。ちょうど腹空いてたんだ」
「オッケー。じゃあ駅前に集合で」
「オッケー」
そんか普通の会話して通話ボタンの終了を押す。
「ほら、行くよ宮下さん」
「え? え? 全然状況が読めないんだけど?」
「着いてきたら分かるから、ほら」
僕は宮下さんを手招きして半ば強引に駅前へと向かう。仲違いしてる時は美味しい物食べて全部の思いを吐き出す! これが一番手っ取り早い。