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第五話『地獄確定、天使降臨』

 えー、現在僕の胃は限界です。屋上の時以上です。キリキリと痛みます。その原因は僕の少し前を歩いている悪魔一派(ゆめはらくんたち)


「大丈夫? 顔色悪い」

「あ、ありがとう。えと美津奈(みつな)さんだっけ?」

「あってる。私、美津奈亜里沙(ありさ)


 そんな僕の胃と精神を保ってくれている最後の砦。後輩の無口系美少女こと美津奈亜里沙さん。どうやら夢原君のハーレムにはまだ正式に入っておらず、昼休みの食べさせあいは何かのお礼だったらしい。

 そんな彼女だからこそ、僕の異変に気づいてわざわざグループを抜けてこうやって話しかけて来てくれる。優しい子がいて本当に良かった。


「気分悪い? なら先に帰った方がいい」

「あはは、そうしたいんだけどね……」


 夢原君の背中が帰るなよ!絶対に帰るなよ!!オーラをびんびんと発している。ここで帰ると僕の先の高校生活は絶望だろう。


「理由がある?」

「うん、まぁ、戦友(とも)を最後まで見送らないとね」

「? 意味が分からない?」


 意味が分からなくていいんだよ。君はそのままの天使でいて下さい。


「あっ、東吾君クレープ食べよ」


 先頭集団の美咲先輩が斜め前方にあるクレープ屋を指差す。その瞬間、夢原君の負のオーラが急激に膨れ上がった。こ、これは俗にいう帰り道の食べさせあいっこに発展するのでは?

 そう思っていると、夢原君が集団に気づかれないようにチラリと振り向きすぐに戻した。

 うん、あの濁った泥沼のような視線。どうにかしてほしいのサインだろうか。背筋が寒くなった。どうにかしないと恐ろしい事が待っていそうだ。


「ふぅー、すぅー、ふぅー」

「どうして深呼吸? 調子悪い? ならやっぱり速く帰って寝た方がいい」

「ありがとう美津奈さん。でも大丈夫……ちょっと突撃するだけだから」

「? どう「そういえば東吾! 駅前に新しい立ち食い蕎麦屋が出来たらしいから行こうよぉお!!」


 隣の美津奈さんを置いてダッシュ。そして前方の集団に突っ込んで有無を言わさず夢原君の腕を掴んで更に加速。何が起きたのか分からない四人と戸惑いの夢原君を無視して駅へと向かう。

 さらば平和な日常。こんにちは地獄。僕はこれから起きるであろう最悪を考えながら夢原君と共に走った。

 こんな青春真っ平だぁぁぁあぁぁ!!




 ーー駅前に息絶え絶えになりながら着いた僕達は、ちょうどよく空いていたベンチに座った。後ろから着いてきている様子は……無いな。わざわざ遠回りしながら走ったから見失ったんだろう。はぁ、明日から怖いな。あははははは(遠い目)


「ぜぇぜぇ……な、なんで?」

「はぁはぁ……な、なにが?」

「お、俺を連れ出したんだ、げほげほ!」

「そ、そりゃあ、あ、あんな濁った視線、投げ掛けられたら、強行手段にでるでしょ!」

「で、でもそれじゃあお前が」

「い、いいよ。友達だろ、僕達?」


 あ、なんか柄でも無いこと言った気がする。


「……ぷ、あはははは。そうだよな。俺達もう友達だもんな!」

「不本意だけど、ね」

「そんな事言うなよ鷹!」

「いきなり下の名前で呼ぶ?」

「そっちだって東吾って下の名前で呼んだろ?」

「……それもそうだね。じゃあ東吾。取り敢えず立ち食い蕎麦食べに行く?」

「えっ? 本当にあんの?」

「あるよ、新しくは無いけどね」


 息が整って来たので立ち上がり背伸び。あーあ、明日から僕どうなるんだろ? でも……なんかさっぱりした。昨日まで深刻に考えてたのが馬鹿みたいだ。


「行く行く! 俺、お洒落なカフェとかクレープ屋とか女子が行きたそうな所しか行った事無かったんだ!」

「それはそれは普通の男子が聞いたら怒りそうな言葉だね」

「私も行く」

「あ、美津奈さんも? でも、狭いから大丈夫……って美津奈さん!」


 僕達がベンチから立ち上がり目的の立ち食い蕎麦屋に行こうとしたら後ろから美津奈さんの声が! 振り向くと平然な顔で片手をあげていた。


「ど、どうしてここが?」

「駅前行くって言った。だから先に駅前に先回り」


 今度はその片手をV字にしていかにも勝ったかのようにふんすと鼻を鳴らせた。


「え、えと……東吾は大丈夫?」

「……ま、まぁ美津奈さんは最近あったばかりだから……多分平気」

「じ、じゃあ三人で行こうか」

「初めて。楽しみ」


 それから他愛ない話をしながら、立ち食い蕎麦を食べてそのまま解散となった。美津奈さんは僕達が話題に困っていても平然と話しかけてきてくれる天使だった。


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