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第四話『解決案を出してあげたのに』

 只今の時刻は夜の七時前。ちょうど宿題が終わり、僕は今日の疲れを少しでも癒すために敷いていた布団に転がる。

 ベッドや勉強机なんて高級品はない。ちゃぶ台、布団、少し大きめの本棚、小さなテレビとゲームにこの五畳の洋室。ここが僕にとっての桃源郷。故に他人には余り立ち入らせたくない。ないのだが、このままだと夢原君やその一派が入って来そうで物凄く怖い。


「そうなる前になんとかしなきゃ」


 だけど、そんなに簡単に行かないのは目に見えてる。


 一番の難関は夢原君だ。昨日、今日で分かったのは彼は断る事が出来ないイエスマンだということ。


 今日の昼休みに屋上でご飯を食べる事を提案したのは、幼なじみの宮下すみれ。そして、放課後に共に帰ろうと最初に言ったのは姉の夢腹美咲。最後にそんな二人の前で頬にキスをしようとしたという生徒会長の春﨑桜。そして、新しく加わっていた謎の小さな美少女。多分後輩かな?


 この四人の行動と発言に対して一切ノーと言わなかった夢腹君。これが続いてしまうと完全に四人が主導権を持ったまま毎日が過ぎていく。

 そうなれば僕がどんな提案をしても意味はない。何故ならその提案は彼女達からすれば只の不利益。夢腹君を通じて一蹴されてしまい、ずるずると気づけば僕も夢腹君達の輪の中に……うぉえ!。


「それでも別に案が無いわけではないけど…………はぁ、やっぱりこれはゲスいよね……」


 最後の手段として、あの人達の関係をゲスい横やりで物理的にぶっ壊すことがあるが、流石にそれは可哀想過ぎだしやり過ぎだ。高校生の時から恋愛にトラウマを植え付ける気はさらさら無い。というかそんな悪人にはなりたくないし。なにより夢原君が嫌がるだろう。そうすると選択肢は二つ。


 一つは夢原君と僕とあの子達で毎日地獄のピンク色生活を卒業まで我慢すること。うん、死ぬね確実に。

 もう一つは夢原君が変わる事。そうつまり事実を伝えて今より少しだけ距離を遠ざける。出来るのかなぁそんな事?


「まあ僕に出来る事はこれを伝えて夢原君に伝えるだけだな。よし、さっさとご飯食べて風呂入って寝よう」


 そんな緩い考えが後に悲劇を引き起こすなんてこの時の僕は思いもよらなかった。




 次の日。いつもの放課後の教室で僕は昨日思い付いた事を話してみた。勿論、ハーレム軍団達は校門前でセッティング中。

 わぁ、外からでも分かるぐらいになんか負のオーラが漂ってるよあの付近。早く生贄(ゆめはらくん)を解放させないと危なそう。


「俺が変わる?」

「そう。そうしないと君は多分高校生で胃潰瘍になって病院生活まっしぐらだよ?」

「だけど、変わるって何すればいいんだ?」

「ぶっちゃけてそのままの自分を見せればいいんだよ。ほら今校門前で待ってる女の子(修羅)に、『実は俺、今日ぐらいは一人で帰りたいんだ』って頼んでみるとかさ」


「……俺のノミのメンタルで言えると思うか?」

「……か、覚悟を決めよう! そうしないと君は胃潰瘍入院生活で高校生活が終わるかも知れないんだよ!」


 結構膨張した言い方になったけど、こうでも言わないと現実になりそうだから仕方ないね。


「…………」

「…………」


 数分の沈黙が僕と夢原君の間に流れる。さて、どうでる!

 って、なんでため息ついて僕の腕を掴むの?


「永見君。俺と君は友人だよな?」

「ま、まぁ端から見ればそ、そうかもね?」

「なら共に逝ってくれるよな?」

「えっと……なんか行くって言う漢字が違うかもしれないけど、取り敢えずそれは置いといて……何処に?」


 夢原君は指を指す。その方向は外。そして校門前で待つあの三人組を指していた。


「『今日は友人と帰るからごめん』」

「えっ?」

「『今日は友人と帰るからごめん』」

「なに復唱してんの!? というかそれをあの四人の前で言うつもり!! 止めて! 矛先が僕に向いちゃう!」

「『今日は友人と帰るからごめん』」

「目に光がない! 壊れた玩具みたい! あっ引っ張らないでそして離して!! お願い! お願いします!! 一生の頼みだから!!」

「『今日は友人と帰るからごめん』」

「わー、わー! もうダメだ! 僕は今日死ぬんだぁあぁぁぁ」


 校舎内に響く僕の声は悲しいかな、誰にも届かない。

 行き先は地獄。逃げ場もない。どうしてこうなったんだぁ!

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