第三話『嫌がらせでは無かったようです……いややっぱり嫌がらせだ!』
「どうだった?」
「死ぬかと思いました」
放課後。
口から魂が抜けて席に座っている僕に対して、当たり前の質問を投げ掛けてくる悪魔。あっ、志水や他のクラスメイト達はそれぞれ部活動や帰宅して、今のこの教室にいるのは夢原君と僕だけです。夢原君のハーレム要員の方たちも今、校門前でスタンバイしているらしいです。
昨日までの僕ならこいつやはり僕の純血を! とかバカな考えを持っていましたが、今は違います。なぜなら彼、夢原君はーー
「分かる。俺も慣れるまでずっと現実逃避してたからな」
ーー僕と同じように、恋愛や人間関係といったものが大の苦手だと分かったからです。
それが分かったのは忌々しき昼休み。
一種の悟りを開眼する事が出来た僕は心身共に無にして、荒れ狂うピンク色の嵐を耐え忍んでいました。そんな時、なにやら嵐の中心がおかしい事に気づきました。
こう、なんというか……感覚というか匂いというかとりあえず中心から僕と同じ何かを感じ取ったのです。
そこで、悟り状態を解除し現実に戻り中心を見てみると……そこにいたのは昨日の“目”をしていた夢原君でした。
「それにしても凄いですね、夢原君。あんな地獄を毎日過ごしていたなんて……僕なら三日で切腹ものです」
「そ、そこまで俺は酷くは無いが……めちゃくちゃ辛い……」
「具体的には?」
「話を聞いてくれない。休みは遊びに連れ出される。勉強はつねに勉強会。毎日修羅場。はははっ……高校一年でこれだから、二年までには体と心がボロボロで病院生活待った無しだな……」
……聞いといてアレなんですが、不憫すぎて僕が泣きそうです。
「だが! そんな日も今日で終わる!」
「えっ?」
「永見鷹君!」
あっ、はい。名前とは裏腹に童顔で身長が低い永見です。今さら自己紹介しちゃったけどしょうがないよね。ここまでが色々と濃すぎたんだから。
「頼む! この今の現状を打破するための案を一緒に考えてくれないか!!」
「えっ、いやだ「もし断ったら毎日昼飯は俺たちと一緒、さらに休みの日も容赦なく連れ出す!」脅迫じゃないか!」
ーーこうして、僕の平穏無事な学生生活は音を立てて瓦解した。誰かタスケテ。