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第11話『Another猫の鳴く丘にて』

Another View 美結



「にゃんにゃん、りんネコだにゃん」


 凛音はどこからか猫耳を取り出し、両手を丸めてポーズをとり始めた。


「……は?」


 拓也は完全に困惑してる。僕だって、あまりにも唐突すぎる凛音の行動についていけない。


「見ての通り、りんネコだにゃん」


「えっと……かざみ達に影響されたのかな?」


 僕たちはほんのついさっきまで、風見たちの猫耳騒動を見ていた。凛音は変な影響を受けたに違いない。


「違うにゃん、りんネコは、りんネコがしたいようにしてるだけにゃん」


 そう言って凛音…じゃなくてりんネコは拓也の元へ行き、「みゃぁ~ん」と甘い甘い声で鳴きながら甘え始めた。


「んなっ!」


 拓也は顔を真赤にし、硬直している。そんな拓也に対し、りんネコはゴロゴロと喉を鳴らしながら甘え、無言の上目遣いで撫で撫でを要求。

 ……か、可愛い。同じ女の子であるはずの僕から見ても、りんネコはあまりにも可愛い。そんなりんネコに直接甘えられている拓也は、あまりの可愛らしさにノックアウトされているんだ。

 今にもりんネコを抱きしめたいであろう拓也はなんとか衝動を抑えて、猫耳がついた頭を優しく優しく撫でる。撫でられる度に、りんネコは気持ちよさそうに喉を鳴らす。


「おいおい、なんて甘えん坊な子猫なんだ」


「にゃぁ~ん、不満かにゃ?」


「いや……違う。可愛すぎるんだ」


「もっともっと可愛がってほしいにゃん」


 ……羨ましくなってきた。僕もあんな風に拓也に甘えたいし、拓也に撫で撫でしてもらいたい。


「何してるにゃ。みーちゃんも、これを着けるにゃ」


「えっ!?」


 突然、りんネコは僕に何かを投げてきた。

 とっさのことで驚いたがなんとかキャッチして確認すると、それは、猫耳。


「みーちゃんも猫さんになって、一緒ににゃんにゃんするんだにゃん」


 まるで心を読まれたみたいで気味が悪い。

 でも、このままりんネコに拓也を独り占めされるのは嫌だ。こんなものを着けるに抵抗がないわけじゃないけれど、着けるしか無い。


「にゃーにゃー。……なんちゃって」


 僕も猫耳を付けてポーズをとってみた。


「……美結まで何してるんだ」


 拓也はりんネコを撫でる手を止めず、僕をじっと見つめてくる。

 

「あれ? りんネコを見た時に比べて反応薄くないかにゃん?」


「ま、まあ。美結は普段から猫耳フードつけてるしな」


 ムカッ。

 拓也は嘘が下手では無いけれど、僕たちを相手に通用するほどではない。分かってるよ、本当は僕の猫耳姿も気に入ってくれてるんだよね。でも、素直に言えないだけだよね。

 そう分かってはいてもね、その言い方はちょっと見過ごせないな。いいよ、後悔させてあげる。


「にゃぁ~ん」


 僕は可能な限り甘ったるい声を出して拓也に抱きつき、その首筋にかぷっと噛み付いて、はむはむと甘噛みを始めた。


「んあぁっ、な、何を……」


 僕の不意打ちで、拓也はいい反応を見せてくれた。

 でも、やめてあげない。とことん甘えてあげるんだから。


「みーちゃん、大胆だにゃん。りんネコも負けてられないにゃ!」


 りんネコも、自分の頭を撫でてた拓也の手にかぷっと噛みつき、ペロペロと舐め始める。


「お、おい、お前ら……やめてくれぇ」


「にゃぁ~ん」


「みゃぁ~」


 甘えるのも甘噛みもやめない。僕とりんネコは更に四肢を密着させる。

 そんな僕とりんネコを、拓也はしっかりと抱きしめてくれた。ああ、拓也にこんな風に抱きしめてもらえるの、すごく嬉しい。こんな風に可愛がってもらえるなら、このまま子猫として拓也に可愛がられる人生を歩んでもいいかも。


「もう、お前たち可愛すぎるんだよっ……。って、あ、まさかっ! 凛音、お前はこれがしたくて、俺たちにこの夢を見させたのかっ!?」


「さぁ~? 知らないにゃん」


 凛音の返事が肯定なのか否定なのか、僕にも分からない。でも、今こうしている時間は楽しい。

 拓也は、僕たち二匹が甘えれば甘えるほど、二匹同時に抱きしめ、撫でてくれる。そして、僕たち二匹が甘噛みをし、小さな舌を這わせる度に、どんどん身体が熱くなっていくのを感じる。

 うんうん、いいんだよ拓也。このままどんどん高まっちゃって。どうせ凛音だってそのつもりなんだろうし。


「大好きだにゃん……もっともっと、可愛がってほしいにゃ。にゃんにゃん」


 僕は拓也の耳にふっと息を吹きかけ、しっかりと唾液で口を湿らせ、その柔らかい耳たぶにはむっと噛み付いた。

 このまま一気に進めて、発展させてあげる。僕はそのつもりで、拓也を責める。


「猫みみーちゃんも、可愛いにゃぁん」


「にゃぁっ!?」


 突然凛ネコが僕の首筋にはむっと甘く噛みつき、唾液を塗りたくるようにペロペロと舌でくすぐってきた。


「拓也のことも好きだけど、猫みみーちゃんのことも大好きにゃんっ」


「んんっ、やめっ、だめだってばぁっ」


「時間はいっぱいいっぱいあるにゃん。前戯はたっぷりとね? それに、たっくんに可愛がって貰う前に、まずは私とたっくんで猫みみーちゃんをいただいてからっていうのもいいにゃん」


「ひゃぁっ、だめっ、んんっ」


 僕と凜音で一気に拓也を。という流れのはずが、いつの間にか僕が獲物にされているっ!?

 どうしよう、絶対に逃れられないよ。でも、僕の身体は抵抗すること無くそれを受け入れてしまう。だって、僕たちは三人で一つの関係なのだから。

 

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