重課金タイムスリップ
「三年前に戻って、やり直したくないですか?」
その少女は、突然部屋の中に現れた
「……え、何、なんなのお前」
「天使です。三年前、告白できなかったこと後悔してるんでしょう?」
「それは……そうだけど」
なんでそれを知ってるんだ。天使だから?
「端的に言いますと、タイムスリップしませんか?」
「タイムスリップ……なんてできるの?」
「できますとも、天使ですから。今、新しいサービス形態の開拓しようと思ってるんですよー。あなたは、モニター第一号です!」
タイムスリップ。絵空事のようだが、さっき見た光景を思えば、そんな超常現象もあり得ない話ではないのかと思えてくる。
「じゃあ、タイムスリップしたい」
「お、ノリいいですねー。じゃあ、何秒過去に戻ります?」
「何秒って」
「ちなみに、一秒一円になります!」
「……ん?」
今、なんて言った?
「もしかして、タイムスリップにはお金が?」
「かかります。サービスって言ったじゃないですか」
そういう意味だったのか。
「ちなみに、三年分戻ると?」
「おおよそ9459万円になりますね」
無理。ほぼ一億じゃん。
「でも、今回は初回なので特別に基本料無料です!」
太っ腹だった。
「じゃあ……三年分戻りたい」
「おお、ありがとうございますー。あ、オプションはどうしますか?」
「オプションって?」
「五百万円で記憶を保持できます」
「それってデフォじゃないの!?」
当然のように、今の記憶は残るものと思っていた。
「万が一のときに、現在の時間に戻れる保障をつけることもできます。こちら一千万円です」
スマホゲームで課金する気分。
「いや、五百万も無理だし……ローンとか受け付けてない?」
「残念ながら、一括払いのみで」
そのとき、ある考えが頭に浮かんだ。
「あのさ、俺が過去に戻ったら、今生きているこの時間ってどうなんの?」
「そりゃあ、全部なかったことになりますよ。オプションつけなかったら」
「じゃあ、今ここで借金して、タイムスリップしたら?」
「全部なかったことになりますよ……あ」
その途端、俺は立ち上がって玄関を飛び出した。
「まって、それずるい、ずるい!」
消費者金融、闇金。あらゆるところでできる限りの借金をして、俺はあの子に告白しにいく。