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なんで皆は部活動で必殺技使わないの?

作者: ハリー・シコッター

「北海道はでっかいどう!」

俺はこの技で北海道剣道界の頂点に君臨した。

数多の強敵と戦い、それらを倒し、栄光を手に入れた。

一回戦はシード、二回戦は棄権、三回戦は普通に勝ち、決勝は

敵がうんこを漏らした。


優勝してから一年、俺は高校二年生になっていた。

今は二連覇を目指して、日々練習に励んでいる。

そんな俺を見て、周りの部員も一生懸命に取り組んでいる。雑談に。

「先輩凄いな、人一倍練習しているよ」

「そりゃあそうだろ、あの人への期待は凄いからな。この間の剣道雑誌

DOUDOU見たか?」

「あー見たよ、北海道に剣聖現るって見出しで取り上げられてたよね。」

「そういうこと。これはプレッシャー大だよ」

後輩の雑談内容は大方合っていた。俺は焦っていた。

前回優勝者という事もあり、人並み以上のスキルは持っていると

自負しているが、決定的なものがない。

そう、新必殺技が未だに完成していないのだ。

もちろん「北海道はでっかいどう」も強力な技に変わりないのだが、

敵も馬鹿ではない。必ず研究してくるだろう。その時に新必殺技がなければ、

私は敗れてしまうだろう。

なんとしてでも見つけなくては・・・

一週間後に迫る大会に不安要素を残しながらも俺は練習を切り上げた。


なにか。なにかヒントはないだろうか。

俺はいつも通る帰り道を歩きながら考えていた。

何でもいい、なにかきっかけになるものを見つけなくては。

全身系を集中させ、辺りを見渡しながら帰っていた俺に少し変わった言葉が耳に入った。

「この・・・闇・・・見える・・・」

児童公園の方から聞こえるぞ、ここからだとよく聞こえないな。

俺は公園の方に歩き出し、不思議な言葉を発していた主を見つけた。

「間違っていたのは私ではない、世界の方だ!」

少女はベンチの上に立つとそう言った。しかし少女の周りには誰もいない。

「ふふふ、私の言う事に賛同できないとは愚かな奴め・・・ならば見るがいい!私の力を!」

少女は木の枝を両手で持ち、構えた。

(な、なんというオーラだ…)

俺は少女の謎の雰囲気の虜になりつつあった。彼女なら自分の問題を解決してくれるかもしれないと。

「台地よ…海よ…大空よ…結合せよ、反発せよ、地に満ち、己の無力を知れ!暗黒覇道切り!」

震えた、少女の必殺技に俺は感動した。これだ、二連覇に必要なものは。

興奮していた俺は気づくと少女に頭を下げていた。

「俺に必殺技を教えてください!師匠!」

数秒の沈黙の後、答えは返ってきた。

「よかろう、私の修行は厳しいぞ」

顔を上げるとそこには無邪気な笑顔を見せる少女がいた。


厳しい修行を耐え抜き、大会当日を迎えた。

俺はこの日の為に新必殺技を編み出す事に成功した。

まずは一回戦、新必殺技のお披露目だ。

俺は胸を高鳴らせ、試合会場に足を入れる。

お互いに礼を済まし、審判の開始の合図を待つ。

色々な人達が自分の試合を見に来ている。部員、敵の主力選手、メディアの人達、注目の的になっていた。

前回王者の初試合ということでどれだけ力を付けたのか、気になるのであろう、会場はただならぬ空気で埋め尽くされていた。

「始め!」

審判が開始の合図を出す。

それと同時に俺は師匠から伝授して頂いた新必殺技を繰り出した。

剣先を下に向け、ゆらりゆらりと体を左右に動かす。

集中力を高める為、目を閉じ心の目で相手を捉える。

集中力が最大に高まり、俺は詠唱を始めた。

「いざ裁きの時、天に抗う術なし!神の怒り、創造と破壊を繰り返し、全ては無に還る、第九天・無限円環

Das Motiv für Handlungshimmel ー Ein unendlicher Kreis 」

その瞬間、俺は負けた。なぜ負けたのか。全く理解ができなかった。

剣先を下に向けたこと?

体を左右に揺らしたこと?

目をつぶったこと?

詠唱スピード?

なにがいけなかったのか、俺に何が足りなかったのか。

師匠に聞いてみよう。それしかない。

こうして俺は二年目の剣道大会は一回戦敗退で終わった。

しかし、来年こそは師匠と共に優勝を勝ち取ってみせる。

俺はそれから毎日師匠の元に向かった。

これが地獄の始まりとも知らずに…


ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。

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