ピンクローズ
死神の鎌は突然現れる。
生きていく上で悪魔と契約をする。
契約の内容は悪魔だけしか知らなかった。
寝付けない。喉が乾いたので水を飲みに行く。扉が開かない。動かない。右、左、上、下いずれもビクともしない。窓を開けようとするが扉と同様だった。電灯が突然点灯する。部屋がまばゆいまでの明るさに支配される。それでも私の影が見えない。鏡にも私の姿は映らない。私は一体何者なのか。シルバーアクセサリーの十字架に触れる。熱さと光で触れられない。悪魔。死者。さっきまでは人間だった。何が私を変えた。思い浮かばない。ベッドに入る前はこんな事は無かった。お風呂に入ってドライヤーをかけて念入りにスキンケアをしていた。勉強机で前期末テストの勉強をしていた。「誰か」声が出ない。「助けて」空虚が辺りを支配する。壁を叩いても音が出ない。
女性の鳴き声がする。泣き女。死者を悼むために泣く女性。私はまだ生きている。両親が私に向かって泣き崩れる。「真面目で優しくていい子でした。」私には棺の中の私は見えない。どうか焼かないで。焼かれたら私は行き場所がなくなってしまう。絵に書いたような悪魔が囁く。「その肉体が欲しいかい」一瞬で答える。「欲しい」悪魔がにまりと笑う。「その願い叶えよう」意識が暗転する。私は身体を手に入れた。だが、辺りは暗闇のままだった。音も聞こえず沈黙が辺りを支配した。触感もない。食欲も湧かない。ただ時折、花の香りがした。その香りだけが楽しみだった。私は死者だろう。輪廻から外れた死者。悪魔はもう来ない。死者として長過ぎる時間を生きなければならない。身体が朽ちるその日まで。FIN.
初めてのホラー物です。
ホラーは『パラサイトイヴ』『キャリー』『リング』シリーズを読んでいました。怖がりなのでライトなホラー物になりました。
暑苦しい日が続きますがお身体に気を付けてください。
2017/7/4
長谷川真美