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「仕事が一段落するから明日魔境に行こうか。」

「やったー!」


メリが飛び上がった。

しかし途中で部屋の中という事を思い出して音を立てないように着地した。


「フォレに明日行くって話して苗木の準備をしておいてもらおう。」

「うん。今日の夜に明日食べる分のお野菜も買うよ。」


「ああ、水筒だけじゃ足りないから水袋も買ったし井戸は朝混むから夜の内に水を補給しておこうぜ。」

「よーし。今日もがんばるぞ。」



俺は森につくと明日魔境に行く事をフォレに伝えた。

魔境の様子を知りたかったがフォレは植樹以外では危険なので近付かないそうだ。


しかし森に生息する食べられる野草などを俺達に教えてくれた。

俺達はその日の内に魔境に行く準備を整えた。


水を補給して2度焼きパンを多めに買った。

本当は黒パンが美味いのだが良い香りがするので魔物や獣に位置が悟られる可能性がある。


その点、2度焼きパンは保存性が良くて作ってすぐでなければ香りも少ない。

その代わり恐ろしく硬い。


本来なら食べたくない部類に入るのだがここの魔境に入るのは初めてなので用心しすぎて損はないだろう。

浅瀬にたいした魔物が居ないようなら次から黒パンでも良い。


2度焼きパンをしっかり2重の袋に入れてその他に人参などの食べやすい野菜を準備した。

久しぶりの魔境なのでワクワクが抑えきれない。


表に出さないようにしているが明日が楽しみだ。

鼻息の荒くなったメリを早く寝るように注意して俺も早く寝る努力をした。



メリが起きた気配を感じて俺も目を覚ました。

いつもより若干早い時間だ。


メリは俺が起きたのを見るとにっこりとして早く行こうと急かした。

ラピアも起きてきたので俺達はまずフォレの所に向かった。


走る速度が早くなりがちなメリを落ち着けさせつつ俺達は走った。

途中に小動物の気配がしたが今回だけはメリもスパッと諦めて先に進む事を優先した。


なんだかんだ言って俺もラピアも早く魔境に行きたかったのでフォレの家には予想以上に早く着いた。

フォレに挨拶をして斧を借りて植樹用の木の苗を受け取った。


『いってきます。』

「気をつけてな。」


俺達は元気に挨拶をすると魔境へ向かった。

フォレが植えたと思われる木を辿りながら距離が空いている部分があればそこに苗を植えた。


しばらく行くと魔境の森が視界いっぱいに現れた。

はやる気持ちを抑えつつ俺達は植樹を続けた。


ついに俺達は魔境に到達した。

残った苗はその場に植えることにした。


「よし、着いたな。」

「うんっ。」

「昨日決めておいた通りあれを探そう。」


ラピアの言葉に頷いて俺達は移動を始めた。

今まで相談して決めておいた予定通りに動き始める。


まずは魔境に入る前に探索隊がいつも通っている道を見つける。

探索隊が通った場所には道ができているので今回はそれに沿って魔境に入ることにする。


探索隊が通っている道は定期的に使っているので魔物や獣が人間の怖さを学習している。

だから多くの魔物は寄り付かない。


まずは安全第一で行くのだ。

探索隊が通った道は植樹をしながらも意識していたのですぐに見つける事ができた。


「ラピア、あったよ。」


メリが小声で俺達を呼ぶ。

俺達が合流するとそこには野草があった。


魔物避けの草だ。

この草は魔物が嫌う匂いを発するので大抵の場所で効果がある。


中にはそれが効かない魔物や獣もいる。

賢すぎる魔物は魔物避けの草の臭いが不自然にする場合には人間が居る可能性が高いと知っているので逆に危険だ。


しかしそんな場合はほとんどない。

それに同じ探索隊が何度も行き来しているので大丈夫だろう。


そしてここに草があるという事は効果があるという事だろう。

何故なら何度も同じ場所に通う探索隊は魔境の入り口付近に魔物避けの草を植えるからだ。


嫌がられて食べられないので残っているという野性の場合もあるがここの草はよく観察すると葉の数が少なくなっている。

人が取った跡がある。


大量に取ったら探索隊にばれるが俺達が使う分には1人あたり葉が1~2枚あれば十分だ。

ラピアが草から選定して良い葉を3枚取った。


2枚を俺が受け取り、残った一枚を包み込むようにラピアは両手の内に入れた。

両手を地面と水平にしてから両手をすり込む様に小さく動かす。


それを何度か繰り返した。

ラピアが両手を開くと葉は乾燥させられて粉末状になっている。


「お見事。」

「さすがだ。」


ラピアは粉末にした魔物避けの草の粉末をメリにかけた。


「ありがとう。」


俺は粉末をかけ終ったラピアに新しい葉を1枚手渡した。

これは薬師必須の技能で道具が無くても現地で効果のある薬を作る知恵の一つだ。


両手の中に原料になる物を入れて火魔法をほんの僅かにかける。

火が強すぎると焦げてしまい弱すぎても塊が残ってしまう。


葉の種類によって火加減も力加減も変わってくるので一回で成功させるのはさすがラピアと言った所だ。

俺もできなくはないが何回か試さないと成功品までには到達しない。


メリだと完全に焦がす。

手が熱くて難しいんだよな。


ラピアが2枚目も成功させると粉末をメリに渡す。

俺は最後の葉をラピアに渡してメリに粉末をかけてもらう。


「わっ。」


俺は小さい声を上げた。

無防備にしていたらメリに脇をくすぐられた。


俺がジロリとメリを睨むとメリが隙有りと言わんばかりの笑顔をしている。

俺は時と場合を選べよと思いながら軽くメリをつねった。


俺達は魔物避けの草をかけ終えると魔境の森へ足を踏み入れた。



「ファイア。ウォータ。ウインド。アース。ダーク。ライト。」 


俺達はいつも通りに魔境の性質を探った。

ここも土属性が強いようだ。


魔素が集まってくるのを感じて深呼吸をした。

心地よい感覚だ。


俺達は互いに頷き合った後にメリを先頭にしてまずは探索隊が通った道を辿った。

いつもより気配察知に力を入れる。


探索隊が通った道は馬車が通った後があり、通行に邪魔な木や草が刈られていて通りやすい。


まだ浅い場所なので木が少なくて明るいが奥の方は鬱蒼とした森が広がっている。

今回の目的は魔境の木で木刀を作る事、余裕があれば斧代わりになる石や売ってお金になる物を見つける事だ。


魔境の中は全ての物が魔力が高いので気配察知がし難くなっている。

ダンジョンのように道が少なければわかるが全方位から魔力を感じると感覚が狂いそうだ。


久しぶりの魔境の感覚に戸惑いながらも少しずつ進んでいった。

食べられる野草がいくつかあったが採取しない。

木刀用の木が見つかったら採取に力を入れたい。


「とりあえずはこんな所かな。小動物の気配はするけどすぐ逃げられるね。」


メリが小声で言った。

魔境の中は生命力が漲っている。

無邪気に小動物を追いかけたい気持ちにかられるが我慢だ。


「魔物は居なかったな。戻って浅瀬の方を探そう。」


探索隊が使っている道だけあって魔物も獣も近付いて来ないようだ。

少し中へ入ってみたが魔物の気配はしないので一旦浅瀬の方へ戻ってじっくり木を探す事にした。


魔境の入り口に戻って探索隊が通っている道から離れた場所を探していく。

少し歩くと人が通った形跡のない自然の森が目の前に広がった。



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