表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/139

96


ドブネズミ退治も2日目となった。

いつも通りにドブネズミを狩って、あっという間に目標の50匹を超えた。


ここからあと20~30匹も取れば良いだろう。

とりあえず東と北側を一通り回ってから考えよう。


途中に一回戻って下水管理所に見せる分と見せない分を分けた。

大量に取ったねずみを見せると次からも同じ水準を求められるようになる可能性がある。


この前みたいに情報が漏れたらまた絡まれかねない。

俺達がこの方法で後何回稼げるかわからないから見せる分は昨日より少し多い位に調整した。


本当ならライトを付けないで真っ暗な中で走ったり、忍び足をしたりと移動の訓練をしたいけどドブネズミが賢くなる可能性があるので控えている。

どっか人が居なくて思いっきり訓練できる場所はないものだろうか。


目標数のドブネズミを捕まえた俺達は掃除道具部屋で昼が来るのを待った。

昼飯を食べた後は再び下水道に入りライトを付けて足跡をわざと立てながら歩いた。


少し歩いた後は体を念入りに洗って、下水管理所の人に取ったドブネズミを確認してもらった。

一連の仕事が終了となったので俺達はドズにドブネズミを売りに行った。


ドズが何時も居る場所に着くとドズは待っていたようでいつもより早く俺達の到着に気が付いた。


「今日の分はこれだ」

「数えさせてもらいやす」


ドズはドブネズミの入った袋を受け取ると素早く数え始めた。


「82小銅貨になりやす」

「80小銅貨でいいよ」


査定は普段通りだったので切れの良い値段にした。

ドズは買い取ったドブネズミを近くに控えていた子供に渡した。

ドズからお金を受け取って俺は蛙の串焼きを3つ買った。


「毎度ありがとうございやす」

「こちらこそまた今度頼む」


ドズは満面の笑みを浮かべた。

俺達が踵を返すとドズは慌しく子供を集め始めたようだ。


これからドブネズミの処理を急いでやるのだろう。

邪魔しちゃ悪いからさっさと退散するのが一番だ。


今回はドブネズミ狩りが上手く行ったがあと何回できるかは心配な所だ。

おこづかい稼ぎが無しになったらただでさえ臭くて嫌な下水掃除を受ける利点はなくなる。


罠類は他の人がやっているだろうし毒を撒いたら売り物にならない。

今の手が通じなくなった時用の新しい手立てを考えておこう。


俺はそう思いながら蛙の串焼きに齧り付いたのだった。



俺達は1週間ちょっとぶりに森へと向かった。

朝早いのでまだ誰ともすれ違う事はない。


「あっ!」


メリが突然声を上げた。

俺は驚いて気配を察知すると共に辺りを焦って見回した。


周りは特に変わった様子がないのでメリを見る。

メリは一点を見つめて悲しそうにしている。

俺達もその視線を追った。


「せっかく大きくなるのを待ってたのにまだ熟れてない水瓜が無くなってるな」

「熟れるのを待ってたのに取るの早すぎるよー」


「まだ食べ頃じゃないかった固いし青臭いし大変だと思うよ」


ラピアが解説してくれた。


「そうだな。こっちの道には水瓜が少ないから俺達は大事に食べよう。出来るだけ種を取って撒こうぜ」

「うん。けど私達は我慢しても周りが食べちゃったら意味ないよね。どうしようー」


「フォレさんが普段は人が少ないって言ってたから少ししたら人も落ちつくよ」

「今日も人が減ってるといいな」


「水瓜が心配でお仕事が手が付かないよ」

「他人の動向は操作できないからしょうがないよ。市場でも前に水瓜が安く売ってたから種が撒けそうな奴が出てきたら俺達だけが知っている場所に撒こう」


「わっ。それだよ。さすがロッシュ君、中々良い案だよ!」

「今の内に良い撒き場所を探しておこうぜ。来年は俺達だけの水瓜を収穫だ」


最初はがっかりしていたメリだったが俺の話しを聞いて俄然やる気になったようだ。

今にも走り出したそうにしている。

俺も早く人通りが減ってほしいと願うばかりだ。



俺達が森に着くと丁度フォレも外に出ていた。


『おはようございます』

「ああ、おはよう」

「人が増えてたみたいだけどこれからも増えそう?」


「前回来てた奴らは長く続かないな。最初は威勢が良いんだがあっという間に尻すぼみさ。最近の若者は気合が足らんな。もちろん、お前達は別だぞ」


「それは安心した。少し我慢すれば何時も通りだ」

「聞いてよー。私達が目を付けていたまだ全然熟してない水瓜が取られてたんだよ。信じられないよ」


メリはフォレに愚痴り出した。

俺はメリをほおっておいていつも練習に使っている斧を取りに向かった。


俺とラピアが斧を持って来ると恒例の素振りを始めた。

フォレは森に入る為の準備を始めたようだ。


俺達はその後久しぶりに森に入った。

森の中は木漏れ日が点々として、少し涼しい。


俺は空気を深く吸い込んだ。

やはり森の空気は良い。


魔素も集まってきていて魔力が体に漲る。

きこりの仕事は俺にあっているのかもしれない。


そう考えていると、ここでまた瞑想をしたくなってきた。

後で瞑想の時間を作ろう。

そう決意して俺は森の中をフォレに着いて行った。


「明日からはまた材木運びの労働者が来る」

「わかった。仕事の合間に少し瞑想がしたいから入り口から見えない辺りでやっていい?」


「いいぞ。一応その時は声をかけてくれ」

「はい」


「今度お前達が瞑想している所を見ていいか?」

「いいよ。他人から見たらただ座ってるだけに見えると思うよ。上手くできれば今よりもっと魔素を集められるかもしれない。そこらへんも試してみたい。こんな特殊な魔境は見たことが無いから色々試してみたいんだ」


「勉強熱心だな。わしも魔素がどういう反応を示すか見てみたかったところだ」


俺達は今度時間がある時に瞑想を見せる約束をして仕事に戻っていった。

その日は他の人を見かけることもなく気が楽だった。


しかし重心を安定させて走る方法だがまだまだ最初の一歩も遠いようだった。



俺達はフォレに朝の挨拶をすると外から見えない場所で斧の素振りを始めた。

素振りが終わったら今日は瞑想をするつもりだ。


魔素が少ない魔境なんて今まで見た事が無いからこれも経験になるだろう。

瞑想した時の魔素の動きがどうなるかも気になっていた。


普段魔境では魔素がみっちり詰まっていて細かい動きは全く分からない。

けどここなら魔素の数が少ないので動きを詳しく観察できる。


言うなれば普段の魔境は色付きの水の中に居るがここは透明な水の中に偶に色が混じるので色の動きとか変化が普段の魔境よりわかりやすい。

そうやって観察する事で魔素についてもっと知ることができるだろう。


魔素は人が使っていくと普通の魔力になると言われているがその過程が見れるかもしれない。

自分で実験した答えと他人から聞いた話しじゃ自分で実験した方が実感を持った知識として使える。


世間の常識が間違っている場合だってある。

何事も自分で試して確認する事が大切だ。


そして世間の常識と違う所を見つけても他の人なんかには教えてあげない。

ひっそりと自分達だけがわかっていればいいのだ。


下手に真実を言った所で周りからは白い目で見られるだろうし、下手するとわかっている人に付け狙われる可能性もある。

話しが逸れた。


とりあえず瞑想するにしても目的を持ってするということだ。

目的も無く、人に言われて瞑想するのと目的があってそれを意識して瞑想するのとでは違う。


この説明をメリとラピアにしたがメリはすっとぼけた顔をしている。

反面、ラピアは納得してくれてやる気が見られる。


よし、魔素の謎を俺達が解いてやるぜ。

そう意気込んだが特に新しい発見はなかった。


瞑想をしていると魔素が集まってきて俺達の体の中に入っていった。

魔素はそのまま俺達を通り過ぎてそして再び俺達の方に戻ってくる。


魔素を完全に魔力に変換できているわけではなさそうなのか?

もう少しやってみないと詳しい状態は把握できないようだ。


うん、手応えは無かったが瞑想の楽しみ方ができてよかった。

木材運びも走り方を注意して走っている事で少し張り合いがあるしこのまま目標を探していこう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ