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俺達が筋肉痛になったのは強化魔法を長時間使いすぎて体に負担をかけすぎたからなのだろうか。

その割には俺はまだ体力がしっかり残っていた。


強化の使いすぎなのだろうかそれとも普段は使わない筋肉を使ったから筋肉痛なのか後者だと良いんだが判断できない。

強化は普通に使っていたが今までの感覚だとまだ大丈夫だと思ったんだけどな。


今は良いが魔境で活動している時に筋肉痛になっても困るからどこが引っかかったのかちゃんと理解しておきたい。

メリとラピアにも聞いてみたが二人も判断できないそうだ。


判別方法として思いつくのは一旦工夫した走り方を止めて2日目と同じ量を普通に運んでみるという事を何回か繰り返せば筋肉痛の具合で判断できるかもしれない。

すぐ直れば新しい走り方が原因となり、長引くようなら強化の影響での筋肉痛となる。


新しい走り方を早く訓練したいが原因をしっかり見つけるのが最優先だ。

一回の失敗でできるだけ多くの事を学べるようにしたい。


逆に上手く行き過ぎると失敗の経験が積めない。

成功と成功を比較するより成功と失敗を比較した方が物事に対する理解のしやすさが変わってくる。


できるだけ今の内に失敗しておきたい。

村が健在なら安全に失敗できたが今はそこまで余裕がないのが残念だ。


しかし強化は戦いの基本なのでじっくり腰を据えて鍛えたい。

制御できない力ほど危険なものはない。


そのことを二人に話した結果、二人とも了解してくれた。

何事もできるだけ考察をしたほうがいい。


何も考えてないで人に言われた通りにしていたら自分達の中に経験が積まれて行かない。

ゲニアに聞いてもいいがそれは自分達で試して自分達なりの答えを出した後の方が良い。



筋肉痛はまだ少し残っているが今日からまた材木運びだ。

とりあえず前回と同じ予定で行こうと思う。


疲れている時や体が弱っている時はいつもよりポリジが身に染みてありがたみがわかる。

朝飯を食べて体が温かくなってきた所で俺達は森を目指した。


朝早いせいもあって小動物の気配は少ない。

昼頃になれば暖かくなって動きが活発になるだろう。


ここの蛇はクセが強くなかったので俺達にとっては最高の環境だ。

食べている物や生息地によって味が変わるからそこにいる生き物や植物の味で周りの環境を測る事もできるそうだ。


俺達はまだそこまでいってない。

一流の薬師等はそれを推測するのが上手く、治療面でも周りの状況の把握でも力になるのでどこでも引っ張りだこなのである。


薬師になるにはタウロ開拓団に入らないと難しいだろうからまだまだ鍛錬が必要だ。


『おはようございます。』

「おはよう。」


俺達はフォレに挨拶をして3大銅貨の重さの丸太を持って元気良く走り出した。

雨の日は休んでもいいのか聞いておかないといけなかったなと今更気が付いた。


なんせ移動距離があるし木材も雨に濡らしてはよくないだろう。

ここの所は天気が良い日が続いているが春と夏の境目は雨が良く降る。


その時期に近付いてきている。

俺は周りの気配を探りながら走った。


今日も昼は蛇が食べられそうだ。

木材運びは他の人も今の所見たことがないので気が楽で良い。


何事もなく俺達は町に着いた。

丸太を納品してゆっくり南門から出る。


南には森、もっと進むと魔境しか無い為、人通りが全く無い。

門番も俺達くらいしか見かけないようで完全に気が抜けている。


しかし同じ仕事をずっと続けていれば俺達を待ち伏せする輩が出てくるかもしれないので注意が必要だ。

特に材木を持った帰り道は気をつけるようにしよう。


慣れてきたら魔境にも行って見たい。

魔境は森から南に1時間程歩いた場所にあるので俺達なら十分日帰りで行ける範囲だ。


余裕が出来たら一回見に行きたいな。

何かしら稼げる物はないだろうか。



今思いつくのは小動物や魔境の木だ。

しかし木は斧がないと切り倒せない。


斧を買うとしたら相当の金がかかるだろう。

それに常に斧を持ち歩くから重いし、かさ張る。


武器として使えるが使うとしたら俺が持つ事になる。

武器の長さが短いから使いにくいんだよなあ。


攻撃力があっても射程が短いとどうしても距離を縮めなくてはならない。

攻撃はメリにまかせて木刀と盾の方が絶対安定する。


考え事をしていると休憩地点に到着した。

俺達は座って水を軽く口に含んだ。


「筋肉痛だけど大丈夫だな。」

「うん。早く蛇を食べたいなあ。兎だったらもっと嬉しい。」


「こうやって3人で走ってるのが気楽で良いね。」

「そうだな。」


俺は空を見上げた。

空は青くてこのまま仰向けになって寝てしまいたい衝動にかられる。


俺がぼーっと空を見ていると休憩は終わった。

町は人が多いし気が抜けない。


俺達は再び走り出した。

俺達が丸太小屋に到着すると森からフォレが出てきた。


「ドングリパンは食べるか?」

「食べる!」


メリがフォレに駆け寄った。


「持ってくるから少し待ってろ。」


メリは待ちきれなくてフォレに着いて行った。

完全に食い物に釣られている。


少し待つと二人はドングリパンとコップを持って小屋から出てきた。


『ありがとうございます。』

「どうせ1人だからな。遠慮せずに食え。」


そう言う前にメリは既にパンを食べ始めている。

俺達は外にあるテーブルの脇の椅子に腰掛けて、俺とラピアは肩を竦めた後に食べ始めた。


オークの樹皮茶は苦いがその苦さが体に良さそうに思えてくる。

良薬口に苦しってやつだ。


疲れたときにすっぱい物や温かいものを食べると体に効いているような気がする。

俺達は軽く現状の事や村の事を話した。


村の話しは俺達に取っては普通の事だったが外の人に話すと思いのほか喜ばれる。

ゲニアも興味深そうに聞いてたしこの話しは使えるな。


と言っても外に向けて教えて良い話しと悪い話しはちゃんと分けている。

態々己の重要な知識をばら撒く必要はない。


「ふう、長く話し込んでしまったな。慣れて来たようだし次から丸太は自由に持って行っていいぞ。」


「わかった。時間は3往復でも余裕があるから大丈夫。」

「ドングリパンありがとう!」


俺達はフォレにお礼を言って3大銅貨の丸太を担いで走り出した。

パン一個分浮いて俺としては嬉しい限りだ。


それでも昼飯はいつも通りに食べる。

体を動かしていると腹の減りがすごい。


はっきり言ってまだ足りないくらいだ。

報酬が上がった分が腹の中に入ると考えると妙な気になるが今は一番食べ時だと思ってしっかり食べよう。


開拓村の子供、大人は町の子供、大人と比べても一回りくらい体が大きいのはしっかり飯を食べているからなのだろう。

生まれつき恵まれた体格の者は町でも体がでかい人がいるがやはり質は開拓村の人のほうが上だ。


冒険者に体格が良い人間が好まれているのも普通の人の体格が悪いからだろう。

町の人は小さくまとまってしまっている感じがする。


一方、農村から出てきた人は小柄ながらも体を動かしてきているのでしっかりしている。

地に足が着いている感じかな。


俺から見れば体格も重要だが、運動神経や勘の良さ、才能の方が重要だと思う。

ゴブリンのような格下相手ならとにかく力が合った方が良い。


しかし格上の敵となるとまず攻撃を当てる事、敵の攻撃を受けない事が重要になる。

その上で体格の良さは才能と言っても良いので体格重視の考えは間違っていない。


体格の良さは見ただけで力があるのがわかるので簡単な判断材料としては一番だ。

だからこそ体が小さい今の時期が俺達にとって一番危ない時期だ。


早く大きくなりたい。

俺達は納品をして南門から出た。


「今日も3匹がいいなー。」

「少し様子見だ。数が減らないようだったら2匹に増やそう。」

「へーい。」


今日からは蛇は1匹にしておいた。

毎回3匹も取ってたらあっという間にここら辺の蛇が居なくなる。


道を少し外れればいるだろうが道が悪い所はあんまり行きたくない。

俺達は取った蛇を焼いて大事に食べた。


蛇が少ない代わりと言ってはあれだが黒パンを軽く炙って食べた。

思ったよりも美味しく感じられたので次からは毎回炙る事にしよう。


良く考えたらこんなに蛇が居る所には兎はほとんど居ないだろう。

居ても下手すりゃすぐ蛇の腹の中だ。


3回目は3人とも5大銅貨の丸太にした。

時間にも余裕があるのでゆっくり歩いて帰る。


これで1日11大銅貨とは中々良い仕事だ。

他の仕事ができなくなる。


そんな感じで俺達は残りの3日分の仕事を終えた。


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