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「荷を改めるので係りの者に渡すように。」


何人かの係りが並んだので俺達は荷を渡す為に並んだ。

早く動いた事も合ってすぐに俺達の順番になった。


俺は係りの者に木札を渡して荷を3人分置いた。

男は荷物を確認した後、木札に何かを書き込んで俺に手渡した。


「帰りの荷を向こうで受け取れ。」


俺達は帰りの荷を積みに別の倉庫に移動した。

俺はメリに背負子を渡した。


「やった。ありがとう。」

「荷物が多いと肩が痛くなるから当て布をした方が良かったぞ。」

「うんうん。」


俺達は木札を渡して自分達の分の荷を積み込んだ。

木札を受け取った後は昼飯が出るようだ。


「あそこの広場で昼飯が支給される。自分達の荷が揃ったら休憩していいぞ。」

「はい。」


メリは俺の時よりも荷を積み込んでご満悦のようだ。

俺達は昼飯をもらいに広場へと移動した。


広場では俺達の為に広めの休憩場所があって既に準備を終えた他の荷運び達が昼飯を受け取るために列を成していた。

どうやらスープも付くようで担当の者は急いでスープを作っている。


野菜を放り込んで塩を加えただけの単純なスープのようだがスープが付くだけありがたいってもんだ。

俺達はスープができるのを大人しく並んで待った。


スープが煮えた香りがしてくると列が徐々に進み始めた。

俺達は木札を渡して黒パン1個とスープを受け取った。


木札を受け取って各々食事を始めた。

村の者達は元気なもので野菜などを売っている。


特に女、子供は町へ行くのは難しいので一生懸命だ。

俺はラピアの方を見るとラピアも頷いた。


飯を食べた後に良い物があれば買ってみよう。

メリはそんな俺達を見て飯を急いで食べ始めた。


1人だけ急いで食べても意味ないのに早く見て回りそうなので俺達も素早く飯を頂いた。

飯を食べ終わると俺はラピアに小銅貨と大銅貨を手渡した。

ラピアは嬉しそうに頷いた。


「行こうか。」

「行こう行こう。」


二人は意気揚々と歩き出した。

俺は二人に続いてゆっくりと後を追った。


時期が時期なので葉物が多いようだ。

保存の利く人参やたまねぎもあって町より少し安い。


町に運ぶ事を考えれば簡単な現金収入として安くても現金がほしいのだろう。

村のパン屋も出ていて飯が足りない男達が集まっている。


普段は黒パン1個が1大銅貨だが、黒パンは半分に切り分けられていて2小銅貨の物もある。黒パンは町で売っている物より大きくてこの時間を見定めて焼いたのであろう焼きたて具合だ。


町だとギルドの決まりもあってパンの大きさや重さが統一されているが村ではそれが緩いようだ。

荷運びの男達も1大銅貨だと少し高く付くと思っているようで半分に切られた黒パンがよく売れている。


メリはパンの香りに釣られてそっちに進もうとしたがラピアが野菜をしっかり確かめていたので動けずにいる。

俺は珍しい物はないか周りを見回した。


茹でた豆に軽く塩を振ったものが俺の食欲を刺激した。

しかしその隣には見慣れない物があった。


俺はなんだろうと思ってジッと見つめた。

それはどうやらドングリの実を茹でた物のようだ。


ミュッケ村は魔境に近いので魔素をたっぷり吸ったドングリは栄養が強すぎて中の毒もなかなか抜けずに人が食べるのは難しかった。

逆に薬用として少量使う事はあったがだいたいは豚の餌になっていた。


しかし魔境の外のドングリは毒も弱いのでアク抜きをした後に茹でれば大量に食べなければ大丈夫だと教えられたのを思い出した。

魔境に慣れてない人が外の感覚でドングリを食べると毒で動けなくなったり下手をすると死んでしまうので俺達にとっても要注意事項だった。


俺は食べたいというより物珍しさを感じながら売り物を眺めていた。

ラピアはほうれんそうを束で買ったようだ。


俺はほうれんそうを受け取って荷物にしまった。

野菜売りを一通り回って他の野菜も買い込んだ。


メリはラピアにパンを食べたい気配を一生懸命飛ばしていたので俺達は最後にパン屋に向かった。

パン屋で町で売っているより大きい黒パンを5個買った。


一個は今3分の1に切って食べて残り4個は夜の分だ。

メリは嬉しそうに黒パンに齧り付いた。


俺も黒パンを食べた。

味はここの黒パンのほうが良いかもしれない。


しかしかなり荒くひいているようで砂利かなんかの不純物が町より少し多いようだ。

普通のパン屋でも白パン以外はそんなものなので別段気にはならないが一長一短と言った所か。


だが毎日食べるんだったら量が多いほうがいいな。

馬車への積み込みや物資の確認で思ったより昼休みは長いものとなった。


しっかり休めたのと腹に食べ物が入った事で疲れた様子だった同世代も少し元気を取り戻したようだ。

商隊は荷物の確認を終えて村を出る準備に取り掛かった。


俺達も早めにそれに合流した。

そして商隊は村を出た。


背負子をメリに譲ったので俺は開放感に満ち溢れている。

メリの方を見たが重さよりも楽しさの方が上回っているようだ。


天気も良いし荷物も軽いし、軽い散歩気分だな。

俺は行きと同じように前の方に移動して見渡す限りの草原を堪能しながら歩いた。


時折、蛇か小動物っぽい気配を感じてメリが捕まえたい空気を出したが丁度背負子を背負っている事もあって素早く動けないようだ。

俺とラピアは首を振ってメリを止めながら進むのだった。


護衛や監視をする冒険者の方をばれない様に盗み見たが特に変化はないようで気配に気が付いているのか気が付いていないのか判断できなかった。

兎だったら大銅貨に化けるのにと俺も軽く未練を感じたが今はそういう状況じゃない。


問題になる行動を起こさないように大人しくしている俺達であった。

朝に休憩をした場所で一回休憩を取って俺達は町へと向かった。


これが移動距離が増えて野宿とかになると色々と問題が出てきそうだがお手軽に1日で終わる分には楽だし安全そうだ。

その分運ぶ荷物の量は多いのだろう。


後ろの方では疲れて遅れてきている人が出てきたようだが前の方にいる俺達には関係ない。

一応上級紹介所からの紹介だからしっかりやらないと評価にも関わる。


そういう意味では中級あたりが気楽なのだろうが金が増える可能性があるほうに居た方が有利だ。

世の中は金金金だからな。


ああ、金がほしい。

俺がそんな事を考えてるうちに商隊は町へと辿り着いた。


朝と同じ集合場所へ向かい、村で行ったような荷物の受け渡しをする為に並んだ。

木札を渡して荷物の確認が終わって俺達は帰宅の途についた。


天気が良い日なら楽な仕事だな。

逆に天候が悪い日は大変だろう。


「メリ、どうだった?」

「楽しかったよ。けどもうちょっと何かが足りないよね。」


「楽すぎたかな。周りは大変そうな人が居たけど俺達は余裕だったね。」

「うん。でも同世代の人は大変そうだったしどこでもあれ位だろうね。女の人がほとんど居なかったなあ。」


ラピアは村では気にならなかったようだが、町に出てきてからは大人の男が少し怖いようだ。

俺だって怖いから良い傾向か。


何も気にしていないメリが適当すぎるだけで警戒心は必要ですよっと。


俺達は次の日も荷運びの仕事をしっかりとこなした。

しかし二日目は俺達の荷物だけしっかり増えた。


少し余裕を出しすぎたかな。

けど賃金を他の人より多く貰っているのでその分は働きたいという気持ちもある。


幸い、まだ大丈夫な量だったが日に日に増えるかもしれない可能性を否定できない。

初めてなので様子見で2日の仕事にして良かったと思った。


村の黒パンは不純物混じりだが大きくて焼き立てだったのでまた機会があれば買いたい。



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