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下水掃除は当分は止めておこうと思っていたが結局すぐ受けることになってしまった。

これもお金の為なのだ。

ああ、お金がほしい。


下水管理所に行くと以前の男が居た。


「お、今回はお前達か。助かるよ。」

「はい。よろしくお願いします。」


「以前、お前達を真似てドブネズミを取る奴が来たけど全然仕事しなくて困ったもんだよ。その分、お前達なら信用できるな。じゃあ、よろしく。」

『はい。』


俺達は掃除道具部屋に向かいさっそく仕度を始めた。

前回と同じように最初に大きなゴミとドブネズミを取って回ろう。


俺達が下水に入って歩き始めた。

少し歩き始めた所で前回との違いを明確に感じた。


ドブネズミが逃げ始める距離が大きくなった。

以前はライトを付けて近付いても人が近付かないと逃げなかった。


しかし今は光を見た途端に逃げ始める。

噂のネズミ狩りを失敗した奴らのお陰で無駄な警戒心をドブネズミに植えつけてしまったらしい。


警戒心を与えすぎない為に時間を置いたのに狩りを分かってない奴は狩場を荒らすから困ったものだ。

だからと言って俺達がドブネズミを取れなくなったかと言うとそういう訳ではない。


「しょうがない。ライトを消すよ。」

「いいよー。」

「うん。」


俺達はライトを消して、闇に紛れた。

足音を3人で合わせてできるだけ小さくする。


ダンジョンで鍛えた技だ。

そうするとドブネズミは前回以上に俺達に接近を許した。


ラピアの水魔法はほぼ確実にドブネズミを捉えた。

これで学習して対応するドブネズミを減らす事ができる。


しかし今まではゴミを拾いながらドブネズミを片手間で倒していたが、今回はドブネズミを倒してからゴミを拾うので少々手間が増えてしまった。

ある程度ドブネズミを取った時点で俺は再びライトを使って掃除に専念した。


ちゃんと残ったドブネズミにライトが見えた時に逃げられれば大丈夫だと学習させておこう。

獲物を自分達だけが取れるように教育するのも悪くはない。


増えすぎたら人海戦術で駆除してもいいし、俺達に頼めばしっかり間引いてあげよう。

俺は悪い笑顔をしながら下水を掃除した。


俺の悪い笑顔を見てメリはしきりにどんな悪い事を思いついたのか聞いてきたが教えてあーげない!

ラピアは想像がついたのだろう、そんな俺達二人を見て苦笑いをしている。


昼飯を貰いつつ俺達は手早く予定の4分の1を終えた。

慣れていたので前回よりも早く終わった。


俺達は挨拶をしてから下水管理所を後にした。

うーん、臭いが早く終わるし今の時期なら割の良い仕事だな。


俺達はドブネズミを持ってスラムへ向かった。

スラムに入るとドズが以前居た場所を目指した。


俺は小さい子供が居ないか見たがこの時間だと女が多い。

途中で子供が居たのでドズの場所を聞いた。


子供に1小銅貨を渡して案内してもらったが以前と同じ場所に居た。


「ドブネズミを売りたい。」

「どうもどうも。毎度ありがとうございやす。」


俺はドズにドブネズミの入った袋を渡した。

ドズは袋からドブネズミを1匹ずつ取り出して数を数えた。


「今回は26小銅貨になりやす。また小僧を手配しましょうか?」

「ああ、明日から3日間よろしく。あと毎回蛙の串焼き3本頼む。」


「へい。旦那の真似をしてドブネズミを大量に取ろうと意気込んでいた奴らが居たみたいですが見事に失敗していやした。それに比べてさすがですな。」

「運が良かっただけだ。何か変わったことはないか?」


「へい。噂ではデロス町から日雇いが流れてきていやすがダンジョン攻略組合の人間は残って新しく作った開拓村の方に行くらしいです。あくまでも噂ですがね。」

「ありがとう、またよろしく。」


俺は1大銅貨をドズに手渡した。

ドズはそれを確認して汚い顔を歪ませて喜んだ。


わかりやすくて非常に助かる。

渡した後にちょっと奮発しすぎたかと思ったがまあいいか。


俺が必要としている情報をぴったし教えてくれたからな。

確実ではないがないよりはましだ。


警戒は緩めないが少し軽くなった気分だった。

次の日もまじめに下水掃除をした。


買取に子供が着たので手間賃を払って俺達は蛙の串焼きを食べた。

臭さが無ければ早く終わるし最高の仕事なんだけどなあ。


あんまり続けると荷物と服全体が臭くなりそうで怖い。



道場に行くと久しぶりにエクレも来ていた。


『おはようございます。』

「おはよう。」


「エクレさんは仕事は何をやってるの?」

「僕は荷運びの仕事で別の町に行ってたよ。他はその日次第って所だね。小さい時に病弱だったから色々な場所に行くのが好きなんだ。」


「次は俺達も荷運びの仕事をするつもり。」

「なら僕が荷運びの事を教えてあげるよ。」


「ありがとう。」

「お前達! 私も話しに混ぜろ。」


ゲニアの登場だ。

俺達はエクレから荷運びについて説明を受けた。


時々おばさんが話しに混ざってきて少し邪魔だったがエクレは慣れたもので軽く受け流して話しを続けたのだった。


「エクレさんって育ちが良い感じだよね。誰かさんとは大違いだ。」

「そんなことないよ。小さい頃は家に篭りがちだったから両親が本を買ってくれて、その所為かもしれない。」


「村に居た時には本があるのが普通だったけど、町に出てきて本の値段見て吃驚したよ。高すぎてとても買える物じゃない。」

「本があるだけましだよ。私なんて親父から渡されたのは木刀だけだったよ。」


「木刀だけ渡すとこんなふうになるのか。納得のいく回答ありがとうございます。」

「よし、訓練だ。ロッシュ来い!」


俺はゲニアに引っ張られ模擬戦を始めた。

もっとエクレの話しが聞きたかったのになんておばさんだ。


エクレの様な落ち着いた賢そうな人間ってあんまり見かけないよな。

金持ちとか役所の人位かもしれない。


ゲニアに容赦なく打たれてながらそう思った。


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