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翌日も写本の仕事をまじめにこなした。

今までの仕事で一番疲れない仕事だったが退屈だ。


少し体を動かしたくなる。

早く道場に行きたいと思いながら写本を続けたのであった。


そして遂に道場に行く日になった。

朝食を食べて昼飯を買い込んで軽く走る。

その後道場へと向かった。


『おはようございます。』

「おはよう。」


俺達は荷物を端に置いて軽く体操を始めた。


「今日はとりあえずお前達の型を見てあげるよ。」

『はい。』


俺達は各々武器を振った。

それをゲニアが1人1人見ながら修正点を挙げていく。


「村を出てから指導は受けられなかったからやっとまともに訓練ができる。」

「そうかい。それでも自分達でやったにしちゃ及第点をやろう。」


「あ、そういえばデロス町ですごいお爺ちゃんが居たよ。剣を振った音を聞いただけですごいってわかるくらいだった。今まで見た中で一番剣が上手かった。」

「ほう。どんな人だったんだい?」


「たしか地元でも有名な人だったみたいで今は冒険者学校の校長をしてたよ。俺達は通ってないけど隣の運動場で訓練している時にその人が剣を振るのを運よく見れたんだ。今は教えてなくてたまに剣を見せる程度だって言われてがっかりしたよ。」


「お前達から見て今まで見た中では私はどれくらいの位置にいるんだ?」

「今まで見た中で強そうなの順だとその爺さん、うちの村の村長、タロス開拓団の人って順番だな。ゲニアはタロス開拓団の中で上の方の強さだな。俺から見ての判断だから実際は違うかもしれない。」


「へえ。そんなもんかい。」


ゲニアは納得したのかそうでないのかいまいちわからない反応だ。


「ゲニアはなんでそんなに強いの?昔は何をやってたの?」

「剣は趣味だ。私の親父が道場主をやってたから私も鍛えられたのさ。それよりお前達こそ鍛えてどうするつもりだ?」


「とりあえず身を守るのが1つだね。あとタウロ開拓団に入ろうかと思ってる。それにほら。一番伸びが良い時期に訓練した方が効率良いでしょ。」

「子供が効率とか言うのか・・・・・・。まあ確かにその歳でその腕ならそのまま鍛えた方がいいよな。」


俺達が訓練をしながら話していると昼の鐘が鳴った。


「昼飯時間だな。私は黒パンを食うけどお前達は飯は持ってきたか?」

「持って来たよ!ほらほら。」


メリは荷物の所に行って背負い袋から黒パンを自慢気に何個も取り出した。

メリは黒パンと野菜を出して俺達に分けた。


俺とメリが黒パン1個半でラピアが1個だ。


「そうか。私も自分の黒パン持ってくる。」


ゲニアはそう言って奥へ行った。

俺達は日当たりの良い場所へ移動して昼飯を取り始めた。俺達が黒パンに齧りついているとゲニアが合流してきた。


「お前達やたら飯食ってるけどそれは考えあっての事なのか?素なのか?」


ゲニアは黒パン半分と水を持って俺達の横に座った。


「村の大人が子供の頃は飯は3食でたくさん食った方が成長に良いって言ってたからね。メリはまだ背が伸びているし俺もまだ成長するからお金はかかるけど飯はしっかり取ってるよ。お陰でお金は全然残らない。」


「はー。お前達の村には関心させられるね。さすがに魔境を切り開いてる村の出身なだけあるね。お前達の村の話しをもっとしてくれよ。」


その後ラピアがポリジの良さや村の生活について語った。


「うちの親父にもポリジは体に良いからたくさん食えと言われたもんだ。懐かしいな。」

「今日はエクレさんは来ないの?」


「ああ、あいつは今日は日雇いだ。あいつが来ない日は暇だったからお前達が来て丁度良かったな。」

「月謝は安かったけど大丈夫なの?」


「はー。子供がそんな心配しなくていも大丈夫だ。旦那が役所に勤めてるから暇な位だよ。」

『え!』


俺とメリとラピアはみんな驚いた。


「お前達良い度胸してるじゃん。昼はもっとしごいてやるぞ! 私は旦那も子供も居るぞ。子供はもちろん独り立ちしている。」

「そうは見えなかったな。心配する必要はないな。」


「全く小憎たらしい坊主だね。お陰で今は自由の身さ。飯も食い終わったみたいだしお楽しみの午後の訓練のお時間だよ! 準備しな。」


午後の訓練は俺が久しぶりに自分にヒールをかけるほどの物になった。

これだからおばさんは面倒くさい。


「いくらでもヒールが使えるからいくらでも痛めつけられるな。」

「そんな事言ってるから道場に人が増えないんじゃないの?」


「いいんだよ。生っちょろいの居ても迷惑なだけさ!他の道場みたいにお上品にやってちゃ強くなるものも強くならないよ。」

「あー、確かに。他の道場回ったけど教える人も微妙だったな。」


「へえ。わかってるじゃん。その点お前達は運が良いし、道場選びも正解だな。なんてったって私が教えるんだから大船に乗った気持ちで打ち込まれるがいいさ。ありながく思って感謝しな!」


「わからなくもないけどさ。すごく嬉しそうな顔で打ち込んでくるの気持ち悪いから止めてよ。」

「かー。教えられる身分のくせにお口が達者だねえ。お前みたいな小生意気なのをボコボコにするのが私大好きだよ。」


はー、俺は大きく溜息をついた。

けど訓練自体はまじめだからあんまり文句言えないんだよな。


「そうそう。物事は諦めが肝心だよ。」

「そのうち痛い目に合わせてやるさ。」


「ひょえー。さすがロッシュ君だねえ。期待して待ってるよ。」


全く困ったおばさんだ。

それでも俺達は運が良い。


月謝も少ないし他に人が居ないからしっかりと教えてもらえる。

それがわかってるからのあのおばさんの態度だが、今の所は見逃してやろう。


そのうち、そのうち一矢報いてやる。

そう心に誓いながら俺達は訓練に励むのであった。


夜の鐘が鳴って訓練が終わった。

体中が痛いし疲れ切っているがそこはかとなく満足感がある。


『ありがとうございました。』

「おう。またおいで。」

「次も3日後になります。」


俺達は道場を出た。

1日訓練していたので空腹も大変なものだ。

夕飯を多めに買って部屋へと向かうのであった。



写本の仕事が2日あった。

3回目以降ともなると慣れたもので周りを気にしながらでも作業が出来た。


一緒に働くおばさんは前回と同じ人達だったのである程度固定されているのかもしれない。

俺は簡単な本を終えて普通の本へと作業が移っていった。


俺とラピアはおばさん達より少し早い感じでメリが少し遅いかなってところだ。

店長の様子を見るに良い評価は貰えそうだ。


失敗をしないように気をつけて地道にやろう。

冬場の日雇いが減った時にはお世話になるかもしれないからたまに受けて顔を出しておくといいかもしれない。


手応えを感じつつも仕事は順調だった。

問題があるとすれば終わった後に体を動かしたくなる事だ。


2日仕事、1日休みの働き方だと金が稼げない。

2日で1人16大銅貨となると働いた日の昼は仕事先で出るとして2食で黒パン3個は食べてる。


それにポリジとか野菜とか水を買うと、4~5大銅貨になる。

働いた分のお金を3日でほとんど使う事になる。


ラピアは毎食1個だからいいけど俺達はそろそろ食事制限をしたほうがいいかもしれない。

もしくは1日9大銅貨の仕事にするか、仕事の日を増やすかだ。


部屋代が必要だし、道場に通うのにもお金がかかる。

道場に金を出して通うんだから3日に1日は行きたい。


冬に仕事が減る事を考えたら春夏秋で稼いでおきたい。

うーん、あとで3人で話し合ったほうが良いな。


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