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目が覚める。

ダンジョンに入る夢を見たような気がするが詳しい内容までは思い出せなかった。


あの暗闇を走る感覚は楽しかった。

下水に入ったことで関連付けされてダンジョンを思い出したのだろう。


俺は目を覚ますと水筒の水を飲んで背伸びをした。

俺達はメリを起こして朝食に向かった。


中々良いポリジ屋台が見つからない。

今日のポリジも野菜が少ないなと思いつつもありがたく食べた。


朝にしっかり食べると体から湧き上がる力が違う。

まだ食べられるが今の収入を考えるとさすがに二の足を踏んでしまうな。


昼用の野菜を買っても臭くなりそうなので今日の昼は水と黒パンになる。

臭い格好でウロウロしたくもないので夜まで我慢だ。


朝の鐘が鳴るまでしっかりと訓練をして下水管理所に向かった。


「おお、早いな。今日も頼んだぞ。」

『はい。』


俺達は始めに昨日のようにおこづかい稼ぎをすることにしてた。

中央から北に向かいつつドブネズミを集める。


もし少なくなったら軽く西でも東でも南でも行けばいいだろう。

そんな考えとは別に北を回るだけで昨日と同数程度のドブネズミが集まった。


数が少なかったら他の方角も行こうと思ったけど拍子抜けしたが楽で良かった。

こう、狩りをしている感覚はたまらないな。


メリは自分が取れなくて不安そうだが、ドブネズミの気配を探る事に集中しているようだ。

俺達は目標数に達したので掃除をしはじめた。


下水の中は相変わらず臭い。

この臭いがどうにかなれば助かるんだがなあ。


俺達は昨日よりも効率よく掃除に励んだ。

昼は昨日と同様で黒パン1個だったが他の仕事に比べるとありがたい。


俺達は予定のだいたい半分の掃除が終わった。

丁度良い時間なので終わりにしよう。


ドズからの使いもそろそろ来る時間になりそうだ。

俺達は下水管理所の敷地で体を何度も洗って臭いを落とした。


「あ、来たかもよ。」


メリが気配を捉えたようだ。

1人でそそくさと確認に行ってしまった。

メリは10歳にもなっていなさそうな子供を連れて戻ってきた。


「ドズさんからの使いでドブネズミを買い取りに来ました。」


子供は少し怖がりながら言った。


「ああ、今日の分はこれだ。確認してくれ。」


子供はおずおずと袋からドブネズミを取り出して並べて数えた。


「合計26小銅貨になります。」


子供がビクビクしながら言った。

相場から見ても普通な買取価格だ。


「それでいいぞ。」

「ありがとうございます。お金はこちらです。」


俺は26小銅貨を受け取った。


「これは手間賃だ。明日と明後日もあるから頼むぞ。」

「はい!」


子供はボロボロの両手を差し出して俺の渡した2小銅貨を受け取った。


「あ、私明日は蛙の丸焼きがいつもより余分に食べたいな。」


メリが露骨に明後日を見ながら言った。

まあそれくらいならいいか。


「ついでに明日は蛙の丸焼きを4本頼む。」

「ありがとうございます。」


子供はドブネズミを受け取ってフラフラと駈けて行った。

しかしその足取りは他人から見ても軽かった。


「メリも味なことをするなあ、感心した!」

「いやあ、照れちゃうなあ。」

「メリは優しいからね。」


褒める時は褒める、からかう時はからかう。

その緩急こそが重要なのだ。

俺は1人で納得しながら夕食に向かった。


「下水掃除が終わったら一日休みを取って町を回ろうか。」

「私はお買い物もしたいなあ。」


「私は道場を見たい!」

「今日のメリの冴えは一味違うな。」

「うふふんふん。」


俺達はわいわいしながら夕食を食べた。



次の日も変わらずにドブネズミを取って下水を掃除した。

買取に来た子供から蛙の丸焼きを受け取ったメリは勝ち誇った顔で子供に1本手渡した。


俺からも手間賃を貰った子供は昨日の怯えが抜けてきていて嬉しそうだ。

だが鼻を広げてニヤついているメリを見るとまだまだだなと思った。


4日目も3日目と同様に問題なくドブネズミを売った。

そして俺が下水掃除が終了するのでドブネズミの買取の終了を告げると子供はわかっていたようだが悲しそうだった。


あんまり甘やかしすぎても今後がつらいだけだからな。

何事も程ほどが一番よ。


4日目に下水管理の男に今回の清掃の成果を見せると男は満面の笑みをこぼした。

俺達は臭い以外は満足して下水掃除を終えたのだった。



俺達は朝から紹介所に向かった。

下水掃除の報酬を貰うためだ。


朝の鐘はまだ鳴っていないが紹介所には人が少しいる。

俺達はいつもの受付の男を見つけてそちらに向かった。


「おう、今回も良い評価だったぞ。向こうもお前達にまた受けて欲しいそうだ。」

「臭いから別の仕事で。」

「だよなー。でもまた今度受けてくれよ。人気ないから頼んだぞ。」


俺は露骨に嫌そうな顔をした。

あんまりホイホイ言われたままに仕事を請けるのも癪だからな。


「4日で1日9大銅貨だから36大銅貨だ。」

「銀貨で。」

「1人3銀貨になる。」


俺達は報酬を受け取った。


「次はどの仕事をするんだ?この前言った仕事は丸々あるぞ。」

「今度はメリとラピアに選んでもらおうかな。」


俺は二人の方を振り返って言った。

俺は二人を前に出して自分が後ろに回った。


「最近デロス町から日雇いが流れてきてるぞ。下級の紹介所は大変みたいだ。」

「ダンジョン攻略組合は解散された?」


「そこまではわからないがお前達の開拓村の跡地に新しく開拓村を作るそうだ。なにせ町長の娘がダンジョンコアの奪取に関わっていたらしい。と言ってもダンジョンコアが奪われた時には犯人に唆されて娘は浅瀬に居たそうだ。犯人は兵に囲まれた中から逃げ出したそうだぞ。町長は必死で開拓村を作ってどうにかしようとしているらしい。」


「あー、あいつらか。なるほど。」

「お、知ってるのか。ちょっと教えてくれよ。」


「うーん、あんまり言い触らさないでよ。」

「話しが分かって助かるな。早く教えてくれ。」


俺は男に近付いて小声でセイの強さや性格、連れている奴隷について話した。


「いやー、ありがたいね。指名手配は出ているが全然見つかっていないそうだぞ。」

「知ってたのかよ。」


「名前くらいしか知らなかったから良い情報だったぜ。一つ言える事はさっさと逃げてきて正解だったなってとこだ。町はかなり荒れているそうだ。」

「町にまだ同じ村の奴がいるから心配だ。」


「お前くらいに目端が利いてれば大丈夫だろ。」

「そうじゃないから心配してるんだよ。」


「そうだよな。お前みたいなのたくさん居たら開拓村怖すぎるよな。」

「決まったよー。次は仕事は写本だよ。」


「写本か。メリは大丈夫そう?」

「うん。ロッシュは私の事を馬鹿にしすぎじゃない?」


「いや、途中で飽きるんじゃないかなって。」

「6日分だから大丈夫だよ!」

「じゃあそれでお願い。」


「写本は6日で1日8大銅貨だ。2日働いて1日休みを3回繰り返す。明日の朝に南の本屋に行ってくれ。」

『ありがとう。』


俺達は紹介所を後にした。

確かに言われて見れば外の紹介所の人だかりが大きくなったような気がする。


デロス町で見たことがあるような顔も中にはもいる。

デロス町で信用度の高い仕事に就けてたのに炙れてこっちに来たのなら可愛そうなもんだな。


まあ、俺達もダンジョンに潜れなくなったしそんなもんか。

もっと安定してたくさん稼ぎたいよなあ。


「市場巡りと道場探しどっちにする?」

「私はどっちでもいいよ。」

「私もどっちでもいいー。」


「まだ時間が早いから道場探しにしようか。市場はもう少し後の方が店が増えるな。」

「賛成。」


俺達は広場の地図で道場の位置を覚えてから順番に見て回るつもりだ。

道場もこの時間から開いてない所もあるかもしれないが本気でやっているところならもう開いてるだろう。


デロス町には微妙な所ばかりだったがグリエ町には良い所があるかもしれない。

俺はあんまり期待せずに道場探しを始めた。


1軒目、やっぱり普通だった。

2軒目も普通だった。

この時点で俺は少し諦め始めた。


何軒か回ったがデロス町の冒険者組合の校長みたいなすごい人は見つけられなかった。

あそこまでとは行かなくてももう少しなんとかならないのだろうか。


その後も道場を回ったがどれもパッとしなかった。

道場探しは諦めて市場へと向かった。


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