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「もっと食べ物いっぱい買っておけば良かったなー。」


休憩している最中にメリがお腹をさすりながら言ったが、白パンがあっただけましだ。

水はダンジョンから出た時点で結構減っていたからどちらかというと水のほうが心配になる。


俺の水筒にはあと一口分程度しか残っていない。

ラピアの体力が回復するのを待って長めに休憩を取った。


次に村か町が見つかったらどっちでも水分補給に立ち寄らなければならない。

間違っていなければ町が見えるはずだ。


町であってくれ。

知らない村に泊まるのははっきり言って怖い。


平原を走っている方が安心するくらいだ。

と思ったが知らない村でも強いのが居なければ大丈夫か。

心配して損したぜ。


「あ、光だ!」


俺がよくわからない自問自答をしているとメリが歓声を上げた。


「町であってくれ!」

「そこまではわからないね。」


俺は町に着いた時の台詞を考え始めた。

俺達は足取りも軽く光へと向かった。


「町だ、町。」


俺にはまだ見えないがメリが言うならそうなんだろう。

走っていくと俺にも町が見えてきた。


俺はライトを弱めに点けた。

ふー、今回の移動もなんとなった。


良かった良かった。

けどここから俺は一仕事残っている。


気を引き締めていくぞ。

俺達が門に近付くと門番に緊張が走った。


前もこんな感じだったな。


「止まれ!こんな夜遅くに通す事はできないぞ!」

「町で人攫いにあいそうになって町の外に出たのはいいのですがそのまま追いかけられて逃げてきました。」


「デロス町からここまでに村があったはずだがそこでもいいだろ。」

「村に立ち寄っていたらこっちに逃げてきた事がばれてしまいます。だから必死にここまで逃げてきたのです。」


「お前の言う事は信用できない!町に入れることはできない。」

「ここで朝まで待てば入れますよね?」


門番達は小声で相談し始めた。


「お前達、身分証明が出来る物はないか?」

「もちろんあります。これです。」


俺は首にかけていた鉄板を見せる。


「よし、お前だけこちらに来い。」


俺は素直に近付く。俺が木刀しか持って居ないことを確認すると門番の警戒が少し緩んだ。


「む、これは・・・・・・。」


どこまで話しが広まっているか知らないがダンジョン入場許可を見て彼らは驚いた。


「まさかお前偽造ではあるまいな?」

「違います。」


俺は軽く事情を説明した。

もちろんダンジョンが枯れた事は伝えていない。


俺が持っている唯一の切札だからな。


「今起きている方で一番偉い人と会えませんか?」

「何故そんな事を言う?朝まで待てば身分証明があれば入る事ができるぞ。」


「その、浚われそうになった理由が他にもありましてそれについて上の人に伝える事ができれば悪いようにはならないはずです。」


門番達はまた話し始めた。

俺は2人の門番に1枚ずつ1大銅貨を軽く投げた。


門番達は大銅貨を拾い上げた。


「いいだろう。もし起きている方が居る場合は呼んできてやろう。お前達は朝までそこで待っていろ。」

「はい。ありがとうございます。」


門番が1人町へ入っていく。

すぐ代わりの別の門番が来た。


俺達は門番を警戒させない為にも座って待った。

しかし門番は戻ってこない。


俺が諦めて寝ようかと思った頃、門番の男が1人の鉄鎧で身を包んでいる男と共に戻ってきた。


「話しは聞いた。それで言いたい事はなんだ?」


俺は鉄鎧の男に近付いて小声で言った。


「デロス町のダンジョンが枯れました。」


男から驚愕の気配が感じられた。

俺はデロス町の身分証明の鉄板を再度見せた。


「分かった。お前達は一旦詰め所に来い。そして朝一番で町長のダーデス様に会わせてやる。」


俺達はそのまま詰め所に付いていった。

ほぼ前回と一緒だ。


まあこれで朝まで少し寝れるか。

俺達は割り振られた部屋に入ると3人で固まって寝た。

以前と比べると余裕がある。



俺は人が動く気配を感じると目が覚めた。

ラピアも今回はしっかり休めたようだ。


俺はそのまま目を閉じて気配を探り続けた。

部屋の前で気配が立ち止まった。

扉が開かれた。


「起きろ。」


俺は起きた振りをした。

そこには昨晩の鉄鎧の男が居た。

見なくてもわかってたけどね。


「おはようございます。」

「これから町長のダーデス様の所へ行く。失礼のないように。」

「はい。」


俺達は詰め所から出て町長のダーデスの家へと向かった。

ダーデスの家に着くと例の如く控え室に通され待たされた。


しかしほとんど待たされる事なく俺達は部屋に通された。

ダーデスは腰の曲がった老人だ。


好好爺のように見えるがその佇まいは落ち着いていて深い皺が刻まれている顔からは感情を読むのは難しそうだ。


「だいたいの話しは聞いた。ダンジョンが枯れたのはほぼ間違いないのか?」

「はい。地鳴りがしてダンジョンに住民達が集まりました。その後ダンジョンは兵士達によって包囲されました。」


「ダンジョンが枯れたとなると厄介だな。スタンピートは5年後か。」


老人はそこまで言うと自らの思考の海に潜った。

俺達は老人が戻ってくるまで暫し待った。


「この情報の対価に何を望む?」

「私は11歳なのでこの町での日雇い登録を望みます。あと住む場所の紹介です。お金はもちろん払います。できれば冒険者学校に通いたいのですが無理ですよね。」


「冒険者学校については無理だな。管轄が違う。日雇い登録と住む場所の斡旋をしてやろう。」

『ありがとうございます。』


鉄鎧の男は話しがすんなり進んで、少し驚いているようだ。


「朝食がまだなので一緒にどうかね?」

「はい、喜んで。」


鉄鎧の男は余計驚いたようだが俺は気にしないでおいた。

老人がベルを鳴らすと使用人が料理を運んできた。


内容はなんと白パンとシチューだ。

俺達は喜びつつも上品に食べた。


メリがガツガツ食べ始めたので1睨みして上品に食べさせた。

鉄鎧の男も兜を脱いで朝食に参加していたがこの場で一番緊張しているようだ。


俺は老人のご機嫌取りの為に今までの事を色々と話した。

料理を食べ終わり、少し薄められたワインが配られた時に別の使用人が入ってきて老人の耳元で囁いた。


老人は眉を少し動かすと使用人は戻っていった。


「ふむ、デロス町のダンジョンは本当に枯れたみたいだね。これから忙しくなるな。」


老人は言葉と裏腹に嬉しそうだ。

俺達の情報である程度利益は得られた様だ。

俺はとりあえずほっとした。


「ロッシュ君と言ったね。デロス町のようにダンジョンに入る事はできないが何か困った事があったら言いなさい。」

『ありがとうございます。』


俺達はお礼を言って部屋を出た。

中々強かな老人のようであんまり長い時間一緒に居たくない。


色々と考えが読まれそうだ。

ぐったりとした鉄鎧の男と共に町長宅を後にした。


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