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「よし。では一路、東へ向かおうー。」

『おー。』


俺は一応目を強化しながら追手を捜したがそれ以降追手を見かける事はなかった。


「一応撒いたようだな。これからどうすっかー。確か川があるんだよね。できれば橋は使いたくないなあ。どうしよう。」


「魔力に余裕があるから土魔法で足場を作って渡っちゃおうか。念の為にそろそろ強化は切っておこうか?メリはどう?」


「私はまだまだ余裕だよ。けどこれから6時間以上走るんだよね。」

「安心しろ。町から1時間以上走ったからもっと掛かるぞ。」


「大丈夫だけど一応強化は切っておこうか。それにしても夜が全然怖くなくなったなあ。逆にワクワクするよー。」


「ライトなしで移動できるのはでかいな。ダンジョンでの修行の成果有りって所か。もし暗闇の中の訓練をしてなかったら怖くて仕方なかっただろうなあ。目の強化だけに切り替えよう。」


俺達は目の強化だけにして魔力を温存した。


「もう少し東に行ったら休憩しよう。買ってて良かった白パンさん!」

「あ、そうだね。早く食べたいなあ。」

「メリってば、ふふふ。」


メリもラピアも余裕があるようで俺はほっとした。

俺達は少し移動した後、大きな岩の陰で休憩をした。


「このままグリエ町まで行きたいな。到着が一番なら町長までは行かなくても兵士長くらいには面会できるかもよ。それで俺の日雇い登録をしてもらいたい。剣が出なかったら逃げなくても良かったかもしれないけどあの対応の早さを見るに、最初から俺達を捕まえるつもりだったんだろうな。夕方にダンジョンに攻略されたのは俺達にとって運が良かったなあ。」


「そうなんだー。けどもし敵が来たら私が倒すよ!」

「1人でも倒しちゃったらダンジョン攻略組合の面子が敵になる可能性もあるし難しい所だよな。早く大人になって強くなりたいな。」


「ロッシュは今でも十分頑張ってるよ。」


ラピアは泣かせる事を言ってくれるぜ。

なんて素晴らしい嫁っこなんだ。


「結局誰がダンジョンを攻略したんだろう。可能性が一番高いのはセイ達だけど町長の娘が態々自分の町を潰すようなことはしないよなあ。」

「あいつならやりかねない・・・・・・。」


メリがしたり顔で賛同してきた。

俺達は1人2個ずつ買っておいた白パンを一個ずつ食べると休憩を終えた。


そして東南東に向かって走り始めた。

しばらく進むと川があったがラピアの土魔法で足場を作って難なく渡った。

そのまま走り続けた。


「一回村と町を繋ぐ街道に合流した方がいいけど、この前みたいにこのままでいいかな?」

「夜でもよく見えるしどっちでもいいよ。」


「街道に合流するならもう少し進んでからにしたいな。」

「わかった。あと2時間位はこの方角で進もう。」


俺はミュッケ村からデロス町に向かって走った事を思い出したが、今はあの時ほどの恐怖はない。

俺達はこの夜の闇に包まれているがそれに適応している。


ライトを使わなくて済むので他人に見つかる事はほとんどないだろう。

見つかるとしたら獣だな。


ここらへんで獣と言っても強くて草原狼だ。

群れがでかかったら怖いがなんとかなるだろう。


そしてこんなに余裕があるのもダンジョンで金稼ぎより修行を優先したからなのだ。

以前、夜に部屋に侵入者が入ろうとした時も気配察知のお陰で大事にならなかった。


やはり力は大事だ。

いつも俺達を助けてくれるのは自分の力だ。


我ながら修行の目標設定が上手く言って鼻が高いぜ。

慢心せずに力を付けていこう。


と言いたい所だが日雇い仕事になったら難しそうだな。

特に俺が日雇いに行けなかったら食事が減ってしまうだろう。


困った、本当に困った。

俺達は隠れられる場所を見つけると再び休憩を取った。


金儲けはできなくなったがそれほど悲壮感は無くて俺は安心している。

メリが白パンを食べたがったが次の村が見えてからということにした。


メリは次の村を必死に探すだろう。

メリはお得意の採取の為にウロウロしたが特に何も見つけられなかったようだ。


俺達は道標代わりの村を探すべく走り出した。

そのまま走り続けると遥か遠くに光が見え始めた。


「村かな?」

「村だといいなあ。」


俺達は光に向かって南に進んだ。

しばらく進むと光は大きくなってきた。


「今度は南東に進もう。村人にばれると面倒だ。このまま進んでグリエ町へ続く街道を探す。」


光が徐々に近付いてきているがまだ目視で何の光なのかはわからない。

旅人の光の可能性も否定できないが態々平原の真ん中で野宿する人は少ないだろう。


そんな人には正直言って関わり合いになりたくない。


「あれは村だね。」


メリが言ったので俺は目を凝らしたが全然見えない。


「本当に?」

「本当本当。」


「じゃあこれ以上近付かないように東に進んで、その後は南に行って街道を探すのを重視しようぜ。」

「私も賛成。」

「はいよ。」


俺達は光から少しずつ離れて行き、その後南へ進んだ。

少し進んだ所で目の強化をしてしっかりあたりを観察した。

特に何も見当たらないな。


「あ、水瓜が枯れたのがあるぞ。」

「本当だ。ここらへんが街道だといいね。」


俺達は走る速さを緩めて進むとすぐに街道らしき道を発見した。


「おっしゃ、これで一安心だ。」

「後は道なりだね!」


「道から少し離れて休憩しようか。」

「賛成ー。」


俺達は身を隠す場所を見つけてから休憩をした。


「早馬が出ていたら困るから光には注意しよう。出てたらもうグリエ町に着いてるだろうな。」


メリは白パンに夢中で話しを聞いているのか聞いていないのかわかったものじゃない。

これからのデロス町の混乱を思うと大変だなと思う。


ラコス達は大人しく隠れていられるといいが・・・・・・。

狙いは俺達だろうがウカリスは可愛いから狙われてもおかしくない。


一ヶ月は身を隠して町が落ち着いたらエル村に行ってくれると俺達は安心だ。

今頃はダンジョンの奥にいたダンジョン攻略組合の人も出てきて詰問されているだろうな。


最低でも後十年以上は枯れないと言われていたダンジョンが枯れたのでダンジョンを攻略した奴がいる。

ダンジョン攻略組合は絶対そんなことしないだろうからする可能性があるのはセイ達くらいなんだよな。


もしそうだとしたら町長の立場が危うい。

セイ達と距離を取ったのは正解だったのかもしれない。


これからダンジョン攻略組合は解散してバラバラになるだろうがそいつらの行方が心配だ。

下手に武力を持った集団が解き放たれたら周りの人間にとっては害にしかならない。


でかい盗賊団が一個出来ましたじゃあ、しゃれにならない。

俺達が行く町に来るなよ。


だからと言って悪い事ばかりじゃない。

デロス町のダンジョンが無くなったことで町長のネポスは開拓村を作らざる得ない状況に陥った。


ダンジョン関係のみならず屋台などでも失業者が大量に出るはずだ。

人も減って他の店も大打撃を受けるだろう。


それを食い止めるには新しい開拓村を作ってスタンピートを発生させたダンジョンを探し当てるほか無い。


ダンジョン攻略に町長の娘が関係なければ先細りにはなるが町をそのまま存続させるという手が無いわけではないが次のスタンピートは耐えられないだろう。


そうなるとエル村は位置的にも最高の位置にあるとっても過言ではない。

今年の小麦さえ上手く行けば一気に盛り返す事ができる可能性がある。


グロウの腕の見せ所だ。

ふ、不安すぎる。


俺の方は当分デロス町に居た奴らを注意しなければならない。

俺達は休憩を終えて再び走り出した。


少し疲れが出てきたがラピアを見ると疲れていてもまだ大丈夫そうだ。

野宿をするよりこのまま町へ走った方が安全だろう。


俺は暗闇に紛れながら思った。

小さい頃は恐怖でしかなかった暗闇も今は俺達を隠すベールとなって俺達の味方をしてくれる。


ダンジョンが攻略されたのが朝か昼だったら追いかけっこも大変だっただろう。

いや、体力勝負まで持ち込めれば今と同じか。


けど時間が早いと他の町に知らせに行ってしまう。

グリエ町にまだ連絡が行っていなければ今の状況が一番だ。


せっかくの状況を上手く利用させてもらうぜ。

休憩を挟みつつも走り続けたがさすがに疲れてきたな。


合計7時間以上は走っていると思う。

そろそろ町の明かりが見えてきてもいいはずだ。


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