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朝になった。

俺達は予定通り黒パンを多めに買って背負い袋に詰め込んだ。


いつものポリジの屋台に行ってポリジを食べながら朝の黒パンを食べた。

その後、内心ドキドキしながらダンジョンへ向かった。


それはメリも一緒らしく昼の鐘が鳴る前だが昼ご飯食べようとしきりに言い始めた。

俺は観念した振りをして昼飯を取る為に近場の行き止まりまで移動した。


「ライトはどうする?真っ暗なまま食べる?ライト付ける?」

「今日はライト有りで!」


俺はライトを付けた。

そしてラピアが俺達に黒パンを配った。


『いただきます。』


俺達は黒パンを齧り始めた。

中々ダンジョンの中で食べるというのも乙だ。


俺とメリがガツガツ黒パンを食べているとラピアが背負い袋に手を入れた。


「今日は黒パンだけだから少し塩を振ろうか。」

「やった!」

「いいね。」


俺達はラピアの元に馳せ参じた。

塩を制す者が食卓を制すのだ。


ラピアは塩入れを開けて買ってから随分と小さくなった岩塩を出した。

メリが黒パンを差し出して早く早くと期待を籠めた目で見ている。


ラピアが黒パンに岩塩をナイフで軽く削ってかける。

メリはその光景を嬉しそうに眺めている。


メリの分が終わったので次は俺の黒パンだ。

俺も塩をかけてもらって大満足だ。


塩の部分は大事に食べないとな。俺が大事に食べているとメリはもう食べ終えて残りの黒パン半分を受け取りに行っている。


黒パンを二つに切って断面の部分に塩を軽く削ってかける。

半分は俺の分だ。


ラピアは嬉しそうに受け取るとすぐ食べ始めた。

俺もついでに塩のかかった黒パンを貰いにいった。


結局俺とメリは一個半、ラピアは黒パン1個を食べた。

また岩塩を買おうと俺は心に誓ったのだった。


その後、俺達は昼飯持参でダンジョンに行くようになった。

ドブヌートの買取は半日ならいいとのことなのでギリギリ大丈夫のようだ。


よく考えたらセイ達もやってるから大丈夫だよな。



俺達はいつも通りにダンジョンで狩りをしていた。

いつものようにドブヌートを狩り、ゴブリンを狩る。


最近は暗闇の戦闘も慣れたもので1対1で倒している。

俺は慣れた動作でゴブリンの首を折った。


ゴブリンが光の粒子へと変わってダンジョンに吸収されていく。

その後にアイテムが出現する。


長めの棒のようなシルエットが見えた。

俺は外れの棍棒かと思いながら拾おうとした。


そう、落下音を聞くまでは。


それは短剣が落ちた時より派手な音を立てた。

俺が吃驚して止まっているとメリが急に後ろから顔を出した。


「わあああ。剣だよ、剣だよ、ロッシュ。」


メリは落ちた物に飛び付くと拾い上げた。

俺は急いで目の強化を強めてメリの手に握るものをしっかりと見た。


俺とラピアはメリに近付いて剣をはっきり見ようとする。

剣は普通のショートソードだ。


「ライト付けていいか?」


俺が言うとメリとラピアは神妙に頷いた。

俺はドキドキしながらライトを使う。


ショートソードがライトの目映い光に照らされる。

俺はショートソードの刀身を食い入る様に見つめた。


よし。店で売っていたショートソードより明らかに質が良い。

魔力は帯びていないようだがこれなら30銀貨以上は堅い。


「質は店売りの一番安いのより一段階はいいな。これなら30銀貨以上は確実だな。」

「もっと高いかもよ!」


「よかったね。」

「よしよし、とりあえずライトを消すよ。これは厳重に袋に入れて隠すぞ。」


俺はそういうとすぐライトを消して袋が傷つかないように気をつけてショートソードを包んだ。

メリはもっと眺めていたいようだったが今は浸っている場合ではない。


そして大きく深呼吸した。


「二人も深呼吸をしてくれ。こういう時こそ冷静にだ。人が少ないタイミングで受付に持っていくぞ。」

「わかったよ。」

「うん。」


俺達は内緒話しをするように声を潜めていった。

少し歩いて俺自身と二人が冷静になるのを待って話しを切り出した。


「今の内に決めておきたい。この剣は売るか買うか。二人はどっちがいい?」

「買う!」

「ここだと棍棒で十分だよね。今回は売ってもいいんじゃないかな。」


メリは買いたい様だがラピアは売る派のようだ。


「もう少し後に出たら買っても良かったけど、今買ったら確実に目立つよなあ。ということで今回は売りたいけどメリはそれでいい?」


「うーん。やっぱ無理かあ。けど次出たら買おうよ?」

「善処します。」


「うえー。買う気ないじゃーん。」

「俺が12歳になるギリギリ前だったら丁度良かったんだけどなあ。とりあえず今回は売るって事で。受付に俺達以外に人が居ないようなタイミングを探るぞ。」


俺達はドキドキしながらダンジョンの入り口へ向かった。

メリに先に行ってもらって入り口付近の気配を探ってもらう。


「人は少なそうな感じだったよ。」

「よし、行くか。受付には一応2銀貨位渡した方がいいよな?」


「え、なんで?」

「私はそれでいいと思うよ。」


「俺達が武器を出したってばれるのをできるだけ遅くするのと、俺達の評判を落さないようにする為だ。多少お金を渡しておけば口止めと心付けになる。結局はダンジョン攻略組合から金もらっている奴が情報を流すだろうけど、他の一般の職員は声高に言う事は無くなると思う。そうであってほしい。」


「へー。色々と大変だねえ。」


メリは人事の様に言った。

俺達はただでさえ優遇されているから腰は低くしておいたほうが可愛げが有っていいだろ?


ラコス達もダンジョンに入っているから俺達だけの評判って訳にもいかない。

俺達はダンジョンから出ると普段通りに受付に向かった。


俺達が戦利品を受付に出すと一瞬受付の空気が止まった。

しかしすぐに何事もなかったかのようにいつものような対応になった。


「こちらは査定させてもらいます。少し待っていてください。ドブヌートが1体、短剣が1本、棍棒が2本で現時点で50小銅貨になります。剣は買い取りの場合は2割の支払いになります。」


査定の為に裏にショートソードを持っていったがすぐに戻ってきた。

魔力は特にないから価格は決まっているようだ。


ショートソードのすり替えがないか遠目から調べたが俺達が出した物と一緒のようだ。



「こちらのショートソードは48銀貨となります。買取の場合は12銀貨になります。」

「売ります。金貨でお願いします。」


「合計で2金貨9銀貨2小銅貨になります。」


受付からはほっとした雰囲気が漏れる。

買った方が得だったようだ。


しかし色々と面倒なので今回は止めておこう。

この反応を見れただけ良かったとする。


受付がトレイに金額を置いて俺達に寄せてきた。

俺はその中から銀貨2枚を取って受付に手渡した。


「いつもありがとうございます。少ないですがいつもの感謝の気持ちです。それとあんまり外では話さないようにしてもらえませんか。」

「あー、はい。」


受付の反応は鈍い。

お金が足りないよういうより情報は漏れる事は確実だと思っているようだ。


「積極的に話さない程度で良いのでお願いします。」


そう言うと受付もこちらが言いたい事がわかったようだ。

軽く頷いた。


俺はとりあえずは納得すると建物から出た。

今日は夜の鐘が鳴るよりより随分早くダンジョンから出た。


飯を早めに取って早く部屋に戻ろう。

大金を持っていると普段より人に見られているような気がしてドキドキするな。


飯はいつもより奮発しようかと外に出さないように浮き浮きした。


「今日は何時もより豪華に行こうぜ。」

「わーい。やったー!」


「うん。今日くらいはいいよね。」

「メリ、今日だけだからな。」

「ちぇー。」


「それで何食べる?」

「肉肉!」


「ドブヌートを買えば良かったな。そこまで気が回らなかった。」

「たまには白パン食べたいな。」


「ラピアに賛成ー。」

「白パンを買って、後は屋台で適当に見繕うか。」

「おー!」


俺達はパン屋で久しぶりの白パンを厳選して買った。

普段は我慢していた飲み物や食べ物を品定めしながら屋台を回った。

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