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俺達の日常生活がまた始まった。

もう少しすれば春だ。


春になれば町の澱んだ空気もましになるだろう。

それまでの辛抱だ。


俺達はダンジョンと訓練の日々を過ごしている。

ラピアの情報では治療院に人が少なくなったのは格安でセイが回復魔法を使っているのが原因だとわかったそうだ。


セイは何をやっているんだ・・・・・・。

ちょっとやりすぎな気がするな。


誰か注意しないのかな。

というか注意したら意固地になりそうだ。


うーん、大丈夫かなあ。

強いから大丈夫だろうけどそれにしても自由な奴だ。


俺もあれくらいの強さがほしい。

だがあの強さに辿り着くまでにはまだまだ足りないものが多すぎる。


技を見せてくれる人に師事したいが道場も微妙だし門前払いだし金がないし今の所無理だ。

成長期のこの時期に効率良く力を付けたい。


しかし無いなら無いなりにやるしかない。

メリはそれでも伸びてるし現状で出来る最良を目指そう。


ダンジョンの暗闇の中を走りながらそう考えた。

まだ暗闇での戦いは完全には慣れない。


だが少しずつ前進している。

この恵まれた環境を利用すればそのうち慣れるだろう。


問題はその後だ。

この時間のかかる課題を終わらせた時にまた新しい課題を考えないと俺達の成長はゆっくりになってしまうだろう。


また後でみんなに相談だ。


「と言うことで以前上げた以外に良い目標はないかな?」

「うーん。他に目標かあ。」


メリは特に思い浮かばないようだ。


「あんまり大きすぎても困るけど小さすぎてもつまらないじゃん。分かりやすく達成できる程々に大きい目標はなんかない?できればこのダンジョンの環境を利用できる物だとなお良い。」


「私はまず気配察知が二人くらいになるのが目標かなあ。」

「まだ思い浮かばないかあ。そうだよねー。ダンジョンの中で瞑想はどう?なんか話しでは教会では魔境に1人で住んで修行する人がいるらしいじゃん。」


「教会でお手伝いをしていた時にそういう話しは聞いたけど成功して帰ってくる人は少ないらしいよ。」


成功例は少ないのか、怖すぎる。


「魔境の中で瞑想する修行もあるみたいだから少し試してみようよ。」


珍しくラピアは乗り気のようだ。

メリはどちらかと言うと体を動かしたい派なので瞑想は苦手だ。


すぐ寝てしまう。

俺は少し不安に駆られながらも何回かやってみようと思った。


「やってみよう。」


俺は行き止まりで人があまり来ない場所を思い出しながらどこがいいかと考えるのだった。



俺達は一日の目標金額に達すると人通りの少ない行き止まりの場所へと移動した。


「一日の目標金額に達したのでこれから訓練を始めるぞ。瞑想だけじゃメリがすぐ飽きるから最初に軽く暗闇の中で模擬戦だ。」


「わーい。やったー!」

「本気出したら2度とやらないから注意な。」


暗闇での模擬戦は中々にひどい物だった。

ゴブリン程度ならまだしも強化を使った人相手となると何もかもが早すぎて目が付いていかない。


目が付いていかないので目に集中すると足場が悪くて転んだりする。

できるだけ寸止めしようとするが失敗して叩いてしまったりと先が思いやられる結果になった。


逆に気配頼りで剣をぶつけ合う方がましなくらいだ。

ゴブリンとの戦いで少しは慣れたと思っていたがまだまだだという事がわかった。


当分はこれで訓練できるな。

いつも地上でやっている訓練を一通りやって今度は瞑想だ。


「メリ、寝るなよ?」

「へーい。」


俺達は各々距離を取って座禅を組んだ。

へその下の方に魔力をゆっくり集める。


魔境なだけあって普段より魔力が多く練れているのを感じる。

普段は体内の魔力をかき集めるイメージだがここなら魔素が豊富なので集めやすい。


しかし魔素は一端集めた上で魔力に変換する作業が必要だ。

ダンジョン内では魔力消費が激しい分、魔力回復に努めると回復が早くなるようだ。


メリは魔力を練るというより気配察知の方が中心で周りに敵が居ないか探っているようだ。

しかしこれは思った以上に有意義かもしれない。


今までダンジョンでは魔力を消費するだけの場所だった。

だから魔境に行ったとしても魔力が続く限りしか活動できなかっただろう。


しかし普段から吸収を心掛ければ目の強化分位の魔力は集められるかもしれない。

今のままだと全然足りないけどね。


それに俺達は魔境の近くで生まれたからこっちの方が馴染みが深い。

懐かしい気分になりつつも瞑想をした。


メリが眠りそうな気配を出していたのでこっそり近付いてピリャリと肩を叩いた。

ラピアも瞑想の訓練の良さがわかったようなので俺達二人は充実した気持ちでダンジョンを出た。


夕食を食べながら今回の訓練について話し合った。

今後はダンジョン内での訓練を増やしていく事にした。


一回ダンジョンから出て運動場まで行くのが結構面倒だ。

それに人が少ないから注目を浴びてしまっているのもある。


だが冒険者学校の訓練も見なくてはならないので訓練日はずっと運動場でやるつもりだ。


ダンジョンに潜る2日はそのままダンジョンで訓練する事が決まってその日の話し合いは終わった。



冬が少しずつ終わりに近付いてきた。

温かい日が増えてきて町の住民も重たい空気が少しずつ良くなっていくのを感じているのだろう。

みんな嬉しそうだ。


俺達はいつも通りダンジョンに通っている。

そしてラピアはついに気配察知をできるようになったのだった。


と言うのは嘘で気配察知はもう一息って所だ。

その代わりと言ってはあれだがダンジョン内での魔力回復が上がったそうだ。


今までは何もしなくても少しずつ魔力が減っていたが今は逆に増えるそうだ。

目を強化しても魔力はトントンになった。


元々ラピアは水魔法などを使っていて常に魔力回復に気をつけていたからなのだろう。

俺とメリは未だそこまで到達はしていない。


ラピアは得意分野で俺達より一歩先に出て嬉しいようだ。

急に魔法回復力が増えたがそれはダンジョンの中、つまり魔境の中だけなのだがこれなら別の魔境に行っても長時間活動することができるだろう。


俺もメリもラピアまでいかなくても魔力回復を増やさないと魔境で十分には活動できない。

ただ魔境でも魔力が減らない方法があるという事は俺達にとっては大きな1歩になった。


そして良い事は重なるようだ。

しばらくするとラピアは気配察知もできるようになった。


メリに比べるとまだまだだが敵の気配が分かるようになった。

いつかは覚えるとは思っていたがラピアの急速な伸びが少し羨ましかった。


これで3人が気配察知ができるようになったので次の段階に進めることができる。

俺は夕食後に二人に相談した。


「3人が気配察知できるようになったから次の段階に進みたいと思う。」


二人を見回すと2人ともやる気のようだ。


「気配をわざと消したり出したりすることで話さなくても簡単な合図を送れるようになりたい。声を出したり身振り手振りをしなくていいからもっと素早く行動に移れるはずだ。最初は止まれ、行け、戦う、逃げる、など単純な物で十分だ。そこでどの合図がどういう意味を持たせるかみんなで決めたいと思う。これは先頭を行くメリが一番使う事が多いからメリに合わせて決めたい。」


「え、私?」

「そうだよ。メリがいつも先頭でしょ?みんなで交代でできるようになったけどまずメリがしっかり覚えないと。」


「そっかー。でもロッシュが考えているだろうからまずそれを聞こうじゃないか!」


何故かすごく偉そうに踏ん反り返るメリだった。

そりゃ、考えてはいるけど自分で考えるのも重要じゃないの?


「考えているといっても単純な物だぞ。まず進めは2回進行方向に気配をゆっくり飛ばす。もちろん敵とかに悟られないように気配自体は短距離ですぐ消すよ。逃げる時も基本的に一緒で真後ろに2回飛ばす。緊急事態の時は強く飛ばし続ける。止まれは背中に注意を集める。戦う時は優先順位の高い敵に気配を飛ばす。敵を見つけたら頭の上に気配を出して敵が居る方向に飛ばす。今の所はこんなもん。」


「それでいいよ!」

「っていう風になるから嫌だったんだ!自分で考えなさい。」


「私もそれでいいと思うよ。後は自分達でやってみて少しずつ直していこう。」

「とりあえず、やってみるか。ミュッケ村の大人達は特に指示出さないでも連携が取れてたけどどうやってたんだろうなあ。」

「私にまかせなさい!」


メリは胸を張って答えた。。


「メリの指示に俺達の命がかかってるからよろしくな。」

「え、そんなに?」


「そりゃそうだよ。もし勢い良く強い敵にでも戦いを挑もうものなら俺達みんな人生終了よ。」

「うわあああ。」


メリは今まで自覚していなかった重い責任を感じて頭を抱えた。


「あの時メリがこうしていれば・・・・・・ ああっあんなことには・・・・・・。ぎゃー、うわー。」

「ロッシュ、めっ!」


俺はメリが悶えるのを楽しんで見ていたがラピアからストップがかかってしまった。

ちぇー、もっといじりたかったのにな。


「ラピア。ロッシュがいじめるよー。」

「今まで通りに気をつけてやればいいから大丈夫。」

「う、うん。けどここには強い敵は出ないよね?」


メリが自分で言って気が付いたようだ。俺はにこやかにメリを見ていた。


「もー。私怒っちゃったからね。明日の訓練でギッタンギッタンにしてあげるよ。」

「その時にはもう忘れてそう。」

「むきー。」


俺達はじゃれ合った後、明日の練習をしてから眠りについた。

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