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俺達が近づいていくと家から村人達が出てき始めている。


「おーい。おーい。」


ウカリスが嬉しそうに手を振ると村人もみんな手を振り替えしてきた。

ミュッケ村の子供達も出てきたようで声が聞こえてきた。


木の柵が空けられて村人がぞろぞろ出てきた。

向こうからは俺達が何かを背負っているのがわかったようだ。


子供達は期待に胸を膨らませている。

やっと声が届く所まで着いた。


「こんにちは。遊びに来ました。」

『いらっしゃい。』


村人の間から村長のカタロさんとグロウが出てきた。


「みなさんエル村へようこそ。」

「こちらこそお世話になっています。」


俺達は互いにお辞儀をし合った。

カタロさんは本当に嬉しそうな顔をしているので俺達もほっと安心した。


「少しですがお土産を持ってきました。みなさんで食べてください。」


俺達は袋を開けて中身を見せる。

子供達から歓声が上がる。

そしてカタロさんには質がいまいちだが量が多い塩の入った袋を渡した。


「あんまりお金がなかったのでこれで精一杯ですが使ってください。」

「こんなにありがとうございます。さあ、まだ復興は済んでいませんが村に入ってください。」


俺達は村に入るとドブヌートをまず置く為に移動した。

子供達は俺達が持ってきたドブヌートを見る為にみんなで着いてきた。

女性陣に先導されて一番大きい建物に着いた。


「ここは村長の家です。元の設備が良かったのでみんなで使っています。」


俺達は袋からドブヌートを取り出して女性陣に渡した。

女性陣は喜んで腕を巻くってドブヌートの皮を剥ぎにかかった。


子供の数人はその様子を興味深そうに眺めていたが残りは俺達の周りに纏わりついて町の話しやダンジョンの話しをせがんだ。


「ロッシュ、こっちだ。」


俺はグロウに呼ばれて家の奥へ向かった。

家の造りは結構立派でしっかりしているようだ。


「ここは元村長の家さ。自分達だけ良い思いをしていたようで家を探したら色々出てきて驚いたぜ。」


「そうか、グロウも元気そうで良かった。」

「ロッシュもな、何も無いけど歓迎するぜ。」


俺達が話し始めると女性陣がピケットを持って出てきた。


「今はこんなものしか出せなくて悪いねえ。」

「ありがとうございます。ミュッケ村の子供がお世話になっているのにこちらこそあの程度ですみません。」


俺達はお互いに礼を言い合い出されたピケットを飲んだ。


「ロッシュ達もほとんどエル村の一員だ! 気にするな!」

「ははー。さすがグロウさん、これからもよろしくお願いします。」


俺が茶化すと回りに笑いが起こった。


「全くロッシュには敵わないな。見たところ町では上手くやっているようだな。」

「まあまあだな。周りの目は嫉妬まみれたぞ。」

「はは、違いない。」


カタロさんは来ているがグロウに話しを譲っているようだ。

俺はグロウがしっかりやっているようで嬉しかった。


「おっと俺達だけで話し込んでもあれだからみんな自由に話してくれ。」


そう言うと、我慢していた子供達が一斉に話しかけてきた。

大人達も遠巻きながら俺達の話しが聞きたいようだ。


村には娯楽が乏しい。

俺達は各自町についてや、ダンジョンについて語った。


「グロウ、村の事は後で教えてくれよな。」

「おう。毎日ポリジだったがロッシュ達のお陰で肉が食えるぜ。」


「何買ってくれば良いのかわからなかったからとりあえず肉にしておいたよ。」

「俺は嬉しいぞ。皮も使えるしこの前の分の皮もちゃんと使わせてもらってるぞ。」


「俺達だけの時は高くてドブヌートはあんま持ち帰れないからなあ。処理とかも上手くできないから活用してくれるなら嬉しいよ。」


「町での生活はなんでも金がかかって大変だったな。俺には農村の方があってるぜ。」

「お、グロウも言うようになったな。」


俺達は楽しく会話を続けた。

空も暗くなり始めた所にドブヌートの肉とポリジが運ばれてきた。


村の人みんなが村長宅に集まって宴会が始まった。

品はポリジとドブヌートの肉、飲み物はピケットだけの質素な宴だったが、みんな楽しそうで早くも次また来ようと思った。


俺はグロウとカタロさんから村に戻ってきてからの話しを聞いた。

村に着いた時に数匹のゴブリンが村に住み着いていたが棍棒が多めにあったので軽い怪我をする程度で全部倒したとグロウが自慢気に言った。


元村長達が金目の物や食べ物を一箇所に集めていたお陰で思ったより建物の被害は少なかった。

それでも半数以上の建物は使い物にならなかったそうだ。


村に着いてからはまず柵と村長の家を直してどうにかみんなが寝られる場所を確保したそうだ。

家の復旧は半数に届かなかったが雪が降る前にある程度直したようで一息付いているとの事だ。


畑は収穫がほとんど終わっていたので畑が踏み荒らされた程度で済んだらしいとりあえず春に収穫できる豆を植えるだけ植えたそうなのでなんとかなるだろう。


デロス町からも援助物資がそこそこ届くそうなので来年は厳しいが上手くいけば再来年からは税も払えるかもしれないらしい。

グロウが急に成長してて驚いたが大変だったみたいだな。


俺はダンジョン内での追跡劇などを波乱万丈に話した。

だが俺達が常にライトを消して走り回っている事は言わないようにラコス達にも話しておいた。


そういった情報目当てにエル村の人に悪人が近付いても困る。

話しもそうだが塩が地味に喜ばれた。


塩はいくらあっても困らない。

俺達はその日はそのまま村長宅にみんなで泊まった。


気の良い村人ばかりでまた来ようと思った。

グロウとは夜遅くまでボソボソと話していたが途中で寝てしまった。



朝の冷たい空気で目が覚めた。

それでも人が多いので仄かに温かい。


俺はみんなを起こさないように村長宅から出た。

軽い準備運動をして冷たい空気を吸った。


ミュッケ村までとは行かないが空気が美味い。

あの魔素を少し含んだ空気が懐かしい。


ミュッケ村を思い出すと感傷に囚われそうになるので頭を切り替える。

俺が村の周りを軽く走ろうかと思って走り出すとメリが珍しく起きてきた。


「ロッシュ、何するの?私もやるから待ってー。」

「軽く村の周りを走ろうかなって。行くなら木刀持って来いよ。」


「行く行くー。ロッシュは一人でおもしろそうな事して悪い子だなあ。」


気配を読めるようになってメリは無駄に鋭くなったな。

俺はもう一回準備体操をすると起き出した女性達に朝の挨拶をして村の周りを走ってくると告げた。


メリは焦って飛び出してきたがとりあえず準備運動をさせる。

メリの体が解れるのを待って、俺達は村から出て村の周りを走った。


いつもはダンジョンの中を走っているので開放感と冷たい風が当たって気持ち良い。

もう少し風が温かければ言う事なしなんだが。


気配を探りながら走っているが辺りには何も感じない。

まあ居てもゴブリン数匹なら村人でも対処できるだろう。


蛇か兎が居ればありがたいが見つける事はできなかった。

趣味と実益と訓練を兼ねた1石3鳥な行いだ。


一周走った後は今度は村から離れて気配を探りながらもう一周した。

残念ながら特に何も見つからなかったので俺達は村に戻った。


ここで何か捕まえられたらグロウをからかう材料に出来たのだが思い通りにはいかない。

戻ると村人の多くが起きたようで村長の家に向かっている。


俺達は挨拶をしながらその流れに沿って村長宅へ向かった。

そして村長宅で朝のポリジを食べた。


「午前は仕事を手伝って、午後に町に帰ろうと思っています。」

「今は農作業は無いので採取ですが、いいんですか?」

「はい。」


「ロッシュ達も行こうぜ。俺が何か良い物を見つけてやるよ!と言ってもこの季節だから大した物は取れないけどな。」


天気も良いので採取ならおもしろそうだな。

特に何も見つからなくても散歩でもいいか。


いや、村の為に何か見つけないとな。


「よーし。私も頑張るぞ!」


メリは張り切って立ち上がった。

それを合図に村人達も採取の為の準備を始めた。


俺は軽くなった背負子を背負って木刀を持てば準備は終了だ。

背負い袋はラピアが持っているので随分身軽だ。

村人の準備が終わるのを待って、俺達は採取に出発した。

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