59
俺達は目を覚ましてすぐ外を確認する。
寒いが空には雲一つない。
俺達はラコス達の部屋を叩いて二人を起こした。
「天気が良さそうだし今日にしようか。」
『うん。』
「じゃあ、俺達が先に行って受付の人に話しを通しておくからドブヌートが出たらダンジョンから一旦出て家まで運ぼう。駄目だったらその時に考えよう。塩は安いときに俺達が買っておいたから気にしなくていい。ではドブヌート2体目標って事で。」
そう言って、俺達は解散した。
今日は晴れたらエル村に行く事にしていたのだ。
午前中はダンジョンで狩って、ドブヌートが目標数に到達したらエル村に向かう事にする。
各自ドブヌート2体が目標で俺達はできれば3体欲しい所だ。
朝飯を掻っ込んで俺達はダンジョンへ向かった。
若干ラピアからジト目で見られたが今日はいいでしょ、今日は。
受付にドブヌートを2、3匹買い取りたいとの説明する。
とりあえず、今回は大丈夫だそうだ。
今まで俺達は特に問題は起こしていないから特別だと言われた。
本当に特別かは知らないが毎回まじめにやってるからこれ位はいいだろう。
俺達はダンジョンに入ると素早く人が居ない場所まで移動してライトを消して闇を駆けた。
ドブヌートの死体の1体目はまあまあの早さで出た。
すぐダンジョンから出て、一旦部屋に運んだ。
その後またダンジョンへ向かった。
2匹目のドブヌートを取りにダンジョンに潜る。
次のドブヌートは中々出ずに苦労したが昼の鐘が鳴る前に2匹目が出た。
急いでるのもあるが今まで最速の集まり具合だ。
俺達の割り当て分を消化したので気が楽になりつつ家までドブヌートを運んだ。
俺達はもう少ししたら昼の鐘が鳴りそうなのでダンジョンの受付でラコス達を待っているとルネルが俺達を見つけて話しかけてきた。
「今日は村に行くんだってね。すごい勢いで狩っているそうじゃないか。」
「はい。運が良かっただけですよ。」
「またまたー。毎日これくらい狩ったら大変な事になりそうだねえ。」
ルネルはニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んだ。
メリは踏ん反り返っている。
「もう片方の組もさっき一体目を家に持ち帰ったそうだよ。目標は4体って所かな?」
「はい。そろそろ昼の鐘が鳴るのでそこで一旦合流してどうするか話す予定です。」
「彼らには私が報告してあげるよ。まだ狩りたいんでしょ?」
「いいんですか?」
俺はルネルの顔を見るが特に悪い事を考えているようではなさそうだ。
「お言葉に甘えて行って来ます。昼は2時位に一旦合流ってラコス達に話しておいてください。」
「はいはい。がんばって~。」
そう言うとルネルは手をユラユラと振った。
俺達はダンジョンに早足で入っていった。
時間的にはもう1体は難しい所だ。
昨日の夜に受け取って氷付けにしておけばよかったのだろうか。
いや、やっぱなしだ。
氷付けにするとラピアが相当魔力を使う事になる。
それに皮が痛むし、上手く扱わないと肉の質が悪くなる。
玄人なら良い具合に調整できるのだろうが俺達には手に余る。
運が良い事に俺達は時間ギリギリにもう1体のドブヌートを手に入れて意気揚々とダンジョンを出た。
そこにはラコス達が待っていた。
ラコス達は朝は1体、昼は取れなかったようで安くドブヌートを1体買ったようだ。
「わざわざ買わなくても良かったのに。」
俺達が受付を終わらせてラコスに言った。
「みんなにたくさん持って行きたいからいいの。」
ウカリスが両手を握りながら言った。
ラコスはそれを見て顔が崩れている。
「よし、一回部屋に戻って出発だ。」
俺達はルネルに礼を言ってから素早く移動を始めた。
ルネルは俺達が運もあったがドブヌート3体を持ち帰ったことがおもしろかったようで機嫌が良さそうだった。
俺は今まで持っていたのに出番が一向に訪れなかった背負子にドブヌートを3体積んだ。
俺が3体、メリが1体、ラコスが1体持ち運ぶ。
俺達5人は町を出るとエル村に向かって走り出した。
もちろん先頭はメリだ。
順番はメリ、ラピア、ウカリス、俺で最後尾はラコスだ。
「ウカリス疲れたらメリが背負ってくれるぞ。ただ敵が来たらすぐ降ろされるからな。」
「俺がウカリスを背負うよ。」
ラコスが言った。
そこらへんはもう少し走ってからだな。
俺達はずっと走りこんでいるので街道のようなしっかり踏みしめられた道ならいくらでもいけそうだ。
冬の寒い風が体の体温を下げて丁度いい感じだ。
1時間程走ったがそこで休憩になった。
俺達3人は平気だが、ウカリスは少し疲れているようだ。
ラコスは薄っすらと汗が滲み出ている。
「やっぱりメリが背負った方が良さそうだな。」
「3人ともすごいねー。」
ウカリスは座ると嬉しそうに言った。
ラコスはちょっと悔しそうだ。
「俺達はダンジョンの中を走っているからな。街道は走りやすくていい。」
「私がしっかり背負ってあげるからウカリス安心して!」
メリもまだ全然余裕のようだ。
ドブヌートの袋をラピアに手渡してウカリスを背負う準備をしている。
「冬で暗くなるのが早いからさっさと村に行こう。」
ラコスも納得したようだ。
少し休んで俺達は移動を始めた。
「よし、強化を使って速度を上げていくぞ。きつくなった人は言ってくれ。メリ頼んだ。」
「うん!」
メリはウカリスを背負って走り出した。
「ウカリスは軽いなー。」
「えへへ。そう?」
二人は楽しそうだ。
ラコスが付いてこれるか様子を見ながら走ろう。
ドブヌートは内臓だけ捨ててきたがそれでも3体となると結構な重さだ。
だが早い段階でダンジョン内を走り回ったお陰でミュッケ村から来た時に比べると体力が明らかに付いている。
自分の成長が分かり、俺も少し嬉しかった。
どうしてもメリの伸びが良すぎるせいで自分を計るのが難しい。
剣だったら振っていると少しはわかるんだがなあ。
気配を探りながらで走っているが特に危険な気配は感じない。
走る速度も中々で詳しい位置はわからないけど、休憩はあと一回あれば十分だろう。
休憩を一回挟んで俺達は走り続けた。
ラコスは結構疲れてきているようだがまだ大丈夫そうだ。
俺は汗が出てきて少し疲れてきたけどメリはウカリスを背負いながらでも余裕そうだ。
ラピアは汗をかいているが持ち物が少ないせいで余裕そうだ。
ウカリスは30kg以上ありそうだから俺より重いはずなのにメリは平気な顔をしていてちょっと悔しくなる。
単純に荷を背負っている俺と比べてウカリスは背負われ慣れているので重心を上手く置いているのでどっちが重いのかは比べられないがやはり体力でもメリにはまだ届かないようだ。
常に目標が目の前にあるのも困ったものだ。
俺がそんな事を考えている間にも俺達は進んでいてる。
そしてウカリスが言った。
「あ、もう少しだよ。」
「え、ウカリスわかるの?」
「この前は慌ててたけどここらへんは見覚えがあるよ。」
「よし、もう少しがんばろう。」
それから少しして村が見えてきた。
村の周りには外敵からの進入を防ぐための木の柵がある。
しかし良く見ると継接ぎだらけで急ごしらえという事がすぐわかる。
木の柵は少し不恰好だがしっかり村全体を覆っているようで俺は少し安心した。
俺達が近づくと村の人が俺達を見つけたようで手を振ってきた。
メリに背負われているウカリスは嬉しそうに両手を振って声をかけた。
村人達は俺達が来たのをみんなに知らせるために嬉しそうに声を上げた。