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俺達は町の端にある火を使って良い場所として開放されている区画へ行った。

町のルールで屋外で火を使う場合は屋台以外では指定された場所のみとされている。


メリは以前に来たことがあるので先導を任せた。

区画の入り口では使用料として1小銅貨かかる。


その他に水を買ったり鍋を借りたり出来る。

俺達は調理の時間も考えて鉄板を借りることにした。


合計4小銅貨を払って俺達は入場した。

入る時に渡された木の札に書かれている番号の場所へ移動して火を点ける準備をしていく。


俺は棍棒を削って串と火種になる削りかすを作っている。

メリとラピアはドブヌートの解体を始めてた。


まず最初に内臓を取り出して捨ててきたようだ。

その後皮を剥いでいる。

俺は土魔法で土を盛り上げて簡易的なかまどを作る。


火を起こす準備をして後はひたすら木を削った。

メリとラピアは皮を剥ぎ終わって鉄板の上で肉を切り分けている。

俺は自分達で食べる分とは別にラコス達に上げる為に肉串を作った。


「こっちは準備できたぞ。」

「私達ももうすぐ終わるよ。」

「早く食べたいよー。」


二人の準備が終わるのを待つ。


「準備が出来たよ。それじゃあ行くよー?」

『ファイア。』


俺達3人は火魔法で一気に炙った。

肉の表面に少し火が通った時点で魔法を止める。


後は鉄板の上で焼きあがるのを待つ。

ドブヌートはダンジョン産なので普通の肉より火が通りにくい。


すぐ食べたいのも有って最初に時間短縮の為に魔法を使ったが中まで火が通るのを待たなければならない。

残った棍棒の破片を少しずつかどまに焚べる。


俺達は各自、黒パンを片手に肉が焼かれているのを見ている。

こんなに肉が食えるのは祭りの時以来だな。


俺とメリはラピアが肉を引っくり返したり位置を変えたりするのを眺めている。

下の火は棍棒を燃やした小さい物なので鉄板の真ん中にしか火が通ってなさそうだが、一気に焼いたら硬くなるのでわざと少しずつ焼くのだ。


ラコス達用の肉串は一番端の方に置かれて俺達が食べ終わる頃には火が通るだろう。

肉を見ていたラピアは頷くと懐から塩入れを取り出した。


塩入れの中から丁寧に岩塩を取り出すと肉の上に持っていってナイフで軽く削った。

淡い赤褐色の岩塩が削れてキラキラとした粉末になって肉に降り注ぐ。

俺もついつい前のめりになってしまった。


「ここらへんはいいよ。」

『いただきますー!』


俺とメリは飛びかかるように肉に群がった。

熱い、泥い、美味い。

泥臭さはあるが焼き立てなだけあって普段食べる肉串より美味いように感じる。


ラピアは落ち着いて黒パンと合わせて食べている。

俺は肉をハフハフいいながら食べた。


焼けた分の肉はあっという間に尽きてしまったのでラピアが再び肉を中央に移動させた。

俺はとりあえず人心地ついて黒パンを少し齧った。

そして買った来た玉ねぎの皮を剥いて根の部分を軽く切った。


そしてそのまま熱い鉄板の上に置いた。

メリとラピアはじゃがいもを切って鉄板に乗せている。


肉はもう少し時間がかかりそうなので俺は玉ねぎに集中した。

玉ねぎの下の方が若干火が通ってくると俺は玉ねぎの上を掴んでラピアの方へ持っていった。


「お願い。」

「はい。」


ラピアが岩塩を削って掛けてくれる。

俺はその玉ねぎにかぶりついた。


火が通った甘い部分と火の通りがいまいちな半生のシャキシャキとした部分の辛みが合わさって美味い。

俺はその部分を食べ終わるとまた玉ねぎを鉄板の上に戻した。


行儀が悪くて中々できない技だ。

チラッとラピアを見たが特に何も言われなかった。

俺は自由だ。


俺達はドブヌートの肉をしっかり堪能した。

岩塩は味もそうだが見た目も良いのですごく美味しい気がして安い塩が買えなくなるんじゃないかと思わせる一品だった。


ただゆっくり食べていたので結構な時間が経ってしまったようだ。

夕飯はなしかポリジかなと思いながら後片付けを始めた。


俺達は鉄板を返却して一旦部屋に帰ってラコス達用の肉串を置いた。

そして運動場へ移動した。


爺さんが居ないか冒険者学校の方を眺めたが今日も居なかった。

お腹が一杯なので俺達はいつもより軽めに訓練をして早めに部屋に帰った。


「お金がかかるから普段はできないけどたまにはいいな・・・・・・。」

「またやりたい!」

「うんうん。」


次はいつやれるかなと思いながら俺は寝入った。



俺達はまたドブヌートを持ち帰る事を目標にダンジョンに潜った。

最近では夜の鐘が鳴る前に目標金額に達するのでダンジョンの後に軽く訓練する時間がある。


あれ以来爺さんは見かけていないが他の講師でも参考になる部分は有るので良く見ている。

そんなある日、俺達がダンジョンに入ろうと受付に並んでいると珍しい人物がやってきた。


町長のネポスだ。

ネポスが来たことを確認するとダンジョン運営会の職員はみんな恭しく礼ををした。


俺達も一応礼をした。

ネポスが片手を上げて一声かけるとみんな普通に仕事を再開した。


ネポスは少数の兵士を連れてきたようだ。

お、その後ろにはその娘がいる。


娘の名前なんだっけ?

ビニーか。

その後ろにはセイとその奴隷がいる。


俺達は受付に並んでいたが道を空けてネポス達を通した。

中には状況が判断できずに突っ立っている者も居たが周りが彼らを移動させた。


「今日から娘がダンジョンに入る。よろしく頼む。」

『は!』


そう言うとネポスは少数の兵士を連れて去って行った。

その場にはお嬢様とセイと奴隷少女と兵士が1人残っている。

兵士は受付から袋を2袋受け取るとそれをセイに渡した。


「行くぞ。」


セイは袋持ちにされて一瞬ムッとした顔をしたがダンジョンに入れる喜びなのかその顔はすぐ笑顔に戻った。


お嬢様もついでにムッとしているようだったが兵士はそれに気が付かなかったようだ。

兵士はライトを使いお嬢様に一声かけると、先導してダンジョンへ入っていった。


俺はその光景を見て、面倒な事になったものだと思った。

だが状況によっては俺達に利益になるだろう。


ダンジョン攻略組合からの嫉妬をセイが増えた事でより拡散できる。

それにあの様子を見るとこれから何をやらかすかわからない。


一定の距離を取って遠巻きに観察しておこう。

その後、お嬢様一行は1週間に2日ダンジョンに来るようになった。


兵士とセイの間の確執はドンドン広がっているようだ。

もちろんお嬢様はセイ側のようだ。

俺はいつ爆発するかドキドキしながらその様子を眺めていた。


しかしその危うい均衡は爆発する事は無く、ギリギリなところで保っているようだ。

俺はそれはそれで一安心した。


セイも俺達の方をチラチラ見る事はあってもお互い手を上げる程度で兵士がいるので会話は難しいようだ。

これくらいの距離感が丁度いいな。


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