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受付で清算を済ませるとルネルがいるか尋ねた。

今日もルネルは居るようだ。


俺はダンジョン内で何者かに追われたことを報告して今潜っている人で浅瀬に潜っている人を教えて欲しいと言った。

ルネルは急いで受付に戻って現在潜っている人を調べてきてくれた。


「今潜っているのは出稼ぎ組3組、浅瀬を回っているダンジョン攻略組合8組、深い所で狩っているダンジョン組合6組、あと君の村の夫婦2人だね。もし二人が出てきたらこの部屋に来るように言っておいたよ。」


俺は立ち上がろうとしたが迷った。

ラコス達が入っているなら退避を呼びかけないといけない。


しかし二人は浅瀬で狩りをしているのでそんな目立つ場所で何かしようとするとすぐばれる。

そう考えると二人は大丈夫な可能性が高いが理屈を言っている場合じゃない。


情報はもっと必要だ。

立ち上がったメリを手で制して言った。


「出稼ぎ組の人数と浅瀬に潜っているダンジョン攻略組合の各々の人数を教えてください。あとそういうことをしそうなダンジョン攻略組合の構成を詳しく教えてください。」


「出稼ぎ組みは、5人、6人、5人よ。ダンジョン攻略組合は全部3人1組。悪巧みをしそうな人はある程度いるけど悪巧みを実行しようとする組合わせは1組、多くて2組だと思うわね。どちらかと言えば落ちこぼれ組みね。魔法はライトを使うので精一杯でしょう。」


「浅瀬を潜っているダンジョン攻略組合の人ですごく強い人っていますか?」


「私は鍛えてないから誰が強いとかいうのは見てもわからないよ。基本的に浅瀬の3人組は実力は普通の人が割り当てられるわね。強い人、光魔法適性がある人が奥に行くわ。」


「ありがとうございます。ちょっと二人を探してきます。」

「危ないかもしれないわよ?」


「まあ、なんとかなりますよ。ラピアは残る?」

「行く。」

「わかった。やばくなったらラコス達を見捨てても逃げるぞ。」


メリが探るような目で俺を見た。

俺だって本気で言っている訳ではないが俺が大事なのはメリとラピアだ。


ラピアは勇気を奮い起こして着いていこうと思ったのにどうしたらいいかわからなくなったという様子だ。


「そういう選択肢しか取れないのは俺達が弱いからだ。大人達だったら最初から堂々としていられた。」


メリからは俺に怒気が放たれた。

ラピアは心が決まったようでいざとなれば戦う覚悟を決めた目をした。


「ちょっと、仲間割れしてる場合じゃないわよ。」


ルネルが焦っている。

俺は一本取ったなと自分の立場を忘れて思った。


「ラコス達は助ける。敵が来たら戦う。」


メリの目はもう戦う気でいる。

俺の返答次第では1人でも飛び出しそうだ。


「弱い癖に調子にのるな。俺の言うことが聞けないならここで気絶させるぞ。」


メリが腰の剣に手をやろうとした。

俺は既に棍棒を握っている。


「私もラコス達を守りたい。」


ラピアは前に一歩踏み出して言った。

俺を強く一直線に見ている。


「わかった。けど完全に不利になったら逃げるぞ。無様でも生きて逃げ延びればそれでいい。」


メリはまだ探るような目をしているがラピアが頷くとそれにしぶしぶ従った。


「なんであんたは火に油を注ぐようなことをするのよー。」


ルネルも俺の対応に驚いているようだ。

俺は剣呑な雰囲気を消してにこやかに言った。


「覚悟がなかったら邪魔になりますからね。一応浅瀬を潜る人達はほとんど把握してますよ。ただどういう組み合わせで誰が潜っているかはわからないので、敵が3人か6人か9人になるかはわかりません。実力不足っていうのは本音ですよ。弱者は強者に踏み潰されるのが世界の理です。」


さっき俺が暗闇の中で二人を見つけた時に改めて自覚した。

俺は二人が大事だ。


ラコスやウカリスとは比べ物にならない。

二人が生き残る為なら嫌われても良い。


だからと言って、率先して嫌われるようなことはしないけどね。

二人が生き残るなら他はどうなってもいい。

だが今回は言いすぎだったと反省した。


「はー。もう行ってきなさい。」

「よし、行くぞ。先頭はメリにまかせる。他人には会わずにラコス達だけを探す。少し探して見つからなかったら一旦入り口に戻ってルネルさんに状況を聞く。いいな?」


ラピアは頷いた。

メリは俺が自分に先頭を譲るとは思っていなかったので少し面を喰らっている。


「メリ、その顔はよせ。さっさとラコス達を探すんだろ?」


メリは少し考えた後、いつもの顔に戻った。

けどまだ、しこりが残っているようだ。


俺はもう普段通りなのでメリを早く出発するように急かした。

メリは俺の態度の乱高下が良く分からなくなって若干混乱しているようだが一歩一歩進むごとにラコスを探すことに集中しはじめた。


俺は余裕を持って笑顔でルネルに手を振ってダンジョンの中に入った。

一本道が終わるまではライトを点けていたが分岐が多くなるとライトを消した。


出稼ぎの人達は基本的に入り口付近を回っている。

ダンジョン攻略組合の者は少し奥、俺達はいつもそれより奥で狩っている。


いつも通りならラコス達は入り口より少し進んだ辺りにいるだろう。

出稼ぎの人達と思わしき気配を何度か捕らえたが人数が多くて丸分かりなので回避は容易かった。


帰り道付近以外で3人組の気配を感じたら注意だ。

3人組のダンジョン攻略組合の冒険者ならいつもはもっと奥にいるはずだからな。


少し気配が感じられるようになっただけで今までとは全く感じ方が違う。

そして余裕を持って考えられるようになった。


メリが先頭で進んで行くが入り口から敵にも人にも会わない。

俺が口出ししなくても順調にラコス達が居ると思われる位置に近づいていると思いたい。


ちらほら1体の気配がするが、これは魔物だな。

ゴブリンは大きいからわかりやすいがドブヌートは小さいのでわかりづらい。


そして魔物の気配も少ない場所に来た。

気配が少ないということは人が通った後という可能性が高い。


俺は神経を集中して辺りを探った。

しばらく歩くと離れた所に荒れた気配を感じた。


メリが一瞬走り出そうとして踏みとどまった。

俺も走り出そうとしたが、荒れた気配は1つだけだった。


じっくりと気配を探るとその周りに荒い気配にかき消されるように小さい気配がした。

ふう、俺は一息ついた。


この分だと魔物と戦っている最中か魔物と戦い終わってすぐだろう。

俺達はそのままその気配へと向かった。


光漏れが見えて俺達は気付かれないようにさらに歩く速度を落して光源を見た。

そこには丁度ドブヌートと交戦中のラコス達がいた。


ラコスが1人でドブヌートと対面している。

俺達は戦いが終わるのを待ってゆっくり声をかけた。


「おーい。」


ラコス達は突然の声に驚いてこちらを向いて武器を構えた。

俺達は離れた所から動かずに手を振った。


ラコス達が警戒を解いて武器を下ろしたのを確認して言った。


「俺達がさっき狩りをしている時に執拗に誰かに追跡されたから一回外に逃げたんだ。ラコス達は大丈夫かなと思って見に来た。何か変わったことはなかった?」

「え、うん。いつも通りだよ。ねえ、ウカリス?」

「うん・・・・・・。」


二人は突然の事態に戸惑っているようだ。


「俺達を追跡してきた奴らがまだダンジョンにいるだろうから、俺達と一緒に一回ダンジョンの外に出ようぜ。」

「うん。」


二人は戸惑いながらも俺達の案に従ってくれた。

その後俺達はメリを先頭にダンジョンから出た。


途中に近づいてきた者も居たが出稼ぎの人達だった。

ダンジョンから出ると目立たない所に居たルネルが軽く手を振っている。


ラコス達の清算が終わると俺達は会議室へ向かった。

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