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朝の鐘が鳴る前に俺とラピアは目を覚ました。

メリを起こしてポリジを食べに行く。


今日はエル村の人達にあげるドブヌートをダンジョンで得るのが目標だ。

駄目だったら黒パンを大量に買っていくしかない。


俺達は張り切ってダンジョンへと向かった。

その日は運がよく、早い段階でドブヌートの死体が出た。


「これを一回エル村の人のところに届けておくか。処理とか料理に時間がかかるからな。昼にも出たらそれも持っていけばいいよな。」


俺の提案にメリとラピアは頷いた。

俺達は昼の鐘が鳴る前にダンジョンを出て、初めてドブヌートを持ち帰った。


ドブヌートを持っていくと子供達からは歓声が上がった。

夕方にまた出たら持って来ると言って俺達は昼飯に向かった。


エル村の人達の昼飯は匂いからしてポリジだったので俺達も黒パンとポリジを食べた。


昼の部ではドブヌートの死体が中々出ずに時間切れかと思ったが最後の方でなんとかドブヌートの死体が出た。

俺達はすぐにダンジョンを出てエル村の人達が泊まる家へと向かった。


途中で夜の鐘が鳴った。

俺達が昨日連絡しておいたのでラコス達はもう着いていた。


俺は今度もみんなの歓声を浴びながらドブヌートを渡した。

その後、教会にいたミュッケ村の子供達を日雇い仕事に出ていた大人達が連れ来て宴が始まった。


宴と言ってもドブヌートと野菜スープと黒パンの質素な宴だが、ラコス達もドブヌートを1体持ってきたのでみんながある程度食べられる量が確保できた。


「よう、ロッシュ。ドブヌートありがとな。」

「おう、グロウ。まじめに働いてるか?」


「そりゃまじめに働いてるさ。ロッシュ達は随分稼いでるみたいじゃん。」

「それほどでもないぞ。なんだかんだでお金が飛んでいく。」


俺達が話し始めると一緒にいたメリとラピア、そしてグロウに付き添っていたルッタは女性陣で話し始めた。


「冒険者がつらくなったらいつでもエル村に来いよ!」

「さすが、グロウ次期村長だな。言うことが違う。その時はよろしく頼むよ。」


「お前達なら何やっても大丈夫だろうがな。」

「俺達も新しい生活に一杯一杯だぞ。怖い大人が回りにいっぱいいるからな。」


「これからは中々会えなくなるが今度村に遊びに来いよ。」

「もちろん、小さい子供達はまかせたぞ。」


「そうだな。俺も結婚かあ。まだ先だと思ってたんだけどなあ。」

「おまえがどうなるか心配だったからしっかりした娘みたいだし良かったじゃん。肩の荷が下りたよ。」


「まったく、何が起きるかわからないぜ。」

「早い話しだが5年後はしっかり逃げておけよ。どこから沸いたスタンピートだかはわからないが逃げるが勝ちさ。」


「そうだな。ゴブリンのスタンピートと聞いてゴブリンが居るダンジョンが近くにある可能性が出てきたから開拓村が新しくできるみたいだぞ。ミュッケ村跡地を使って町長のネポスが村を作るみたいだし、早めにスタンピートの出所が特定されるといいんだが・・・・・・。」


「村が持っていかれるのは悔しいがそれ込みの援助だろうからな。しっかりしゃぶり尽くせよ。」

「俺はロッシュ程図太くないから難しいぞ。」


「俺もグロウ位の図太さがあったら自由に楽しく生きていけたんだろうな。」

『はは。』


俺達は互いに笑い合った。

グロウも一皮向けたようだし大丈夫だろう。


大丈夫だよな?

俺達は俺達でがんばらなければ。


その日俺達は子供を教会に送ったあとエル村の人達と同じ家に泊まらせてもらった。

大人数がいるには狭い家だったがミュッケ村の孤児院を思い出して俺達は懐かしい気分になった。



鐘が鳴る前に俺達は目を覚ました。

グロウはまだ眠っているがさすがのエル村の女性陣は朝のポリジを作るために動き出している。


俺はそれを手伝おうとしたがエル村の大人に止められてゆっくり休んでいてくれと言われた。

俺は手持ち無沙汰になったのでとりあえずグロウを起こした。


眠たそうにしているグロウに色々と注意点を話したがなんだかわかってるのかわかっていないのか怪しい所だ。

ポリジが出来たのは朝の鐘がなる直前だった。


俺達はポリジを食べながら今日の予定を聞いた。

食べ終わり次第、持ち物を持って援助物資を受け取りに行く。


村長のカタロさんは町長に挨拶に行くようだ。

俺達は援助物資を受け取る方に着いて行く事にした。


荷車に食料や服などが積まれていく。

農機具もあって至れり尽くせりだ。


大人達は受け取った物を確認している。

グロウもその横でまじめな顔をして大人達に混じっている。


俺は満足気に頷いてその様子を眺めていた。

町長への挨拶が終わったカタロ村長が戻ってきたので一同は荷車を引いて西門へと向かった。


教会に居た子供たちも合流して西門にはエル村住民が勢ぞろいした。

俺がエル村に行く元ミュッケ村の子供達と話しているとカタロ村長が近づいてきた。


「みなさんには色々とお世話になりました。ありがとうございます。」


カタロ村長は俺達相手にも腰が低くてこっちが逆に恐縮してしまう。


「こちらこそエル村のみなさんにはお世話になっています。これからも子供達をよろしくお願いします。」


俺達はカタロ村長に深々と礼をした。


「いえいえ。こちらこそ。うちはいつでも皆さんを歓迎するのでまた来て下さい。」

『はい。』


カタロ村長はエル村の大人達の中に混じっていった。


「グロウ、がんばれよ。」

「ロッシュ、お前もな。」


俺達はエル村に向かう一行が見えなくなるまで手を振り続けた。

ラピアやウカリスの目には涙が滲んでいた。


「よし、俺達も頑張ろう。」

俺達の生活がまた始まった。

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